お子さんのぜんそく治療薬について説明をしていると、基本となる薬が継続出来ていないケースに思った以上に遭遇します。
中には基本となる薬をほとんど使っていないこともあります。
大人の生活習慣病の薬と同じで、毎日使っていると忘れることもあることは理解できます。
しかし、ぜんそく発作を起こさないようにするためには基本の治療が大切です。
小児ぜんそくの基本と治療薬についてまとめます。
小児ぜんそくの基本と発作の原因
ぜんそくは、空気の通り道である気管支に炎症が起こり呼吸がしにくくなる病気です。
発作が起きている時は、いつも以上に空気の通り道が縮んでいて少しの刺激でも咳が続きます。
適切な治療をしていないと、炎症が続いて治りにくくなっていきます。
早めに治療を始めるようにしましょう。
喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)がある、朝方を中心に咳が出るなどが続く場合には、気管支ぜんそくの可能性あります。
ぜんそくは自己判断出来ません、疑いがある場合は必ず受診するようにしましょう。
原因①アレルギー
ダニ、犬や猫の毛、ハウスダスト、カビ、花粉などがアレルギーの原因になります。
徹底的な掃除でぜんそくが改善する可能性があります。
また、アトピーだとぜんそくの可能性が上がるという報告もあります。
参考:Prevalence of asthma in patients with atopic dermatitis: a systematic review and meta-analysis.
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原因②鼻炎
鼻炎が酷いと後鼻漏(鼻から喉のほうに鼻水が垂れていくこと)によって痰が増えて、ぜんそく悪化の原因になることがあります。
蓄膿などを治療することによって、ぜんそくが改善する可能性があります。
当然アレルギーが原因の鼻炎もあります。
夜間の後鼻漏が酷い場合は、寝る前に鼻水を吸引してみても良いかもしれません。
「ママ鼻水トッテ」ではしっかり吸えないようなら、電動鼻水吸引器も検討してはどうでしょう?
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原因③副流煙
副流煙もぜんそくの原因になるので、ご家族の禁煙がきっかけで改善につながる可能性があります。
副流煙の量が少なくてもぜんそくが悪化するデータもあるので、「少しだから良いや」とは考えないようにしましょう。
このデータは、ニコチンの代謝物【コチニン】の量とぜんそく悪化についての内容です。
電子タバコであろうと、ニコチンが入っているのであればぜんそく悪化の原因となりえます。
屋外で喫煙したとしても副流煙は服にもついていますし、肺の中に主流煙が残っています。
お子さんがぜんそく治療をされているなら、是非禁煙にチャレンジしていただきたいと思います。
禁煙は無理だとしても、副流煙をできるだけ部屋に持ち込まないなど、できることがあると思います。
その他の原因
- 季節の変わり目(春や秋に多い)
- 天気や気圧の変化が多いとき
- かぜや感染症にかかったとき
これらもぜんそく発作の原因として挙げられます。
小児ぜんそくの治療薬【予防薬が大切!】
小児ぜんそくの治療は、ぜんそくのコントロールを行うことで、最終的に症状が治まっている状態や治癒を目指します。
小児のぜんそくは、半数以上が成人になるまでに治まります。
成人ぜんそくは、症状が治まる割合は10~20%と少ないですが、治療薬の進歩によりコントロールしやすくなっています。
基本の治療をせずに発作の時だけ薬を使っていると、より少しの刺激で発作を起こすようになってきます。
そしてそれをくり返すという悪循環に陥ります。
だからこそ、発作を起こさないようにすることが大切です。
基本治療:予防薬【吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬】
ぜんそく治療の基本は発作自体を起こさない、もしくは頻度を減らすことです。
すぐに発作が治まるような治療ではないために保護者の方から軽視されることもありますが、今後のことを考えると最も大切な治療です。
ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト・プランルカスト)やクロモグリク酸ナトリウム、吸入ステロイドを使います。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
モンテルカストとプランルカスとの2種類の薬があります。
モンテルカストは1日1回の服用、プランルカストは1日2回の服用です。
クロモグリク酸ナトリウム
こちらはどちらかと言えば補助的に使用されることが多い印象です。
吸入ステロイド単剤
ぜんそく治療には吸入ステロイドが重要です。
フルタイド・オルベスコ・キュバールなどの特別な機器がなくても吸入出来る製剤や、ネブライザーを用いて吸入するブデソニドなどがあります。
吸入ステロイド+β刺激薬の合剤
吸入ステロイド単剤で効果不十分な場合などに、β刺激薬との合剤の吸入薬が使用されます。
子どもに適応がある製剤には、アドエアやフルティフォームがあります。
なお、単剤合剤に限らず吸入ステロイドの使用により、わずかに身長抑制の原因になるケースも報告されています。
しかし、ぜんそくは子どもの死亡原因にもなりうる病気です。
適切な治療をしないことで悪化すると、治療が長期化することも考えられます。
適切に治療をして、治療をしなくても良くなったり、最低限の治療で済む状態になることを目指しましょう。
追加治療【テオフィリンや経口ステロイドなど】
基本治療に追加して1ヶ月以上を目安に追加治療をすることもあります。
基本治療で使われる薬を1種類追加したり、長時間作用性β2刺激薬やテオフィリン徐放製剤、経口ステロイドなどを追加することもあります。
テオフィリン
テオフィリン徐放製剤を子どもには使う場合には、以下の注意が必要です。
- 2歳未満の熱性痙攣やてんかんなどのけいれん性疾患のある子どもには推奨されない
- 発熱時には血中濃度の上昇やけいれん等の症状があらわれることがあるので、一時減量あるいは中止などの対応を取る必要があること
結果として、他の治療薬よりも子どもに使う頻度は少ない印象があります。
経口ステロイド
経口ステロイドを飲むことを心配される方も多いですが、ぜんそくの追加治療では短期間の使用が基本です。
短期間であればそこまで心配する必要はないでしょう。
そして、必要性が高いので処方されていることも忘れずに。
また、一般的にステロイドは苦みが強いので、粉薬を飲む場合は対策が必要です。
短期追加治療【ホクナリンやスピロペント】
長期管理中に、風邪や季節性の変動で一時的に症状が悪化している時に2週間以内の短期間追加して治療をします。
貼り薬または飲み薬のβ2刺激薬(ツロブテロール(ホクナリン)・スピロペント・プロカテロールなど)を使います。
発作治療【メプチン吸入など】
発作時の追加治療で、短時間発作を軽減させます。
短時間作用性吸入β2刺激薬(メプチンの吸入薬など)を使います。
メプチンの飲み薬は短期追加治療、吸入薬は発作治療で使われます。
メプチン吸入は単独で使用するとぜんそく悪化の可能性もあるので、生理食塩水やインタールなどを混ぜて吸入することが大切です。
ぜんそくの治療には時間がかかります。
薬を続けることで症状はなくなっていくと思いますが、自己判断で薬を中止しないようにしましょう。