テオフィリン(テオドール)の飲み方の注意と副作用【子どもは特に気をつけて】

テオフィリン(テオドール)の飲み方の注意と副作用【子どもは特に気をつけて】

テオフィリン(テオドールなど)は、こどもにも使われることのあるぜんそく治療薬のひとつです。

以前に比べると使用頻度は下がってきていると感じますが、今でも使われることがあるので注意点を書いていきます。

 

テオフィリンは量の調節が難しく、日常生活での注意も必要な薬ですが、しっかりとコントロールできれば有効な薬です。

注意すべき点は忘れないようにしましょう!

テオフィリン(テオドール)はぜんそくなどに使われる薬です

テオフィリンには気管支拡張作用があり、ぜんそくなどの呼吸器疾患に使われる薬です。

 

テオフィリンの特徴として、薬の有効域がとても狭く、有効域と中毒域が隣接していることが挙げられます。

つまり、細かい量の調節が必要な薬です。

 

さらに、テオフィリンは他の薬や食べ物などの影響も受けやすく、注意すべき点も多い薬です。

多くの薬の有効域はテオフィリンほど狭くありませんし、有効域を超えたらすぐに中毒域ではないものが多いです。

 

テオフィリン製剤には、色々な商品名がありますのでご注意下さい。

代表的な商品名
テオフィリン、テオドール、テオロング、ユニフィル、ユニコン、スロービット、チルミン、テルバンス

これらはすべて徐放性製剤(長く効くように工夫されている薬)ですので、注意すべき飲み方があるので、後述します。

 

順番に説明していきます。

テオフィリンは有効域が狭いので過量に注意

テオフィリン使用時に注意すべきなのは、中毒域に行かないようにすることです。

しかし家ではテオフィリンの血中濃度をはかれませんし、こどもが自分で調子が悪いことを訴えるか、保護者が気づいてあげる必要があります。

 

病院でも血液検査をしなければテオフィリンの血中濃度はわからないはずです。
※通常の量を適切に飲めており、血中濃度に影響を与える因子がなければ、中毒域に届くことはまずないとされています。

 

テオフィリンの過量投与は色々な有害事象の原因となり得ます。

テオフィリン血中濃度が高値になると,血中濃度の上昇に伴い,消化器症状(特に悪心,嘔吐)や精神神経症状(頭痛,不眠,不安,興奮,痙攣,せん妄,意識障害,昏睡等),心・血管症状(頻脈,心室頻拍,心房細動,血圧低下等),低カリウム血症その他の電解質異常,呼吸促進,横紋筋融解症等の中毒症状が発現しやすくなる。なお,軽微な症状から順次発現することなしに重篤な症状が発現することがある。
引用:テオドールインタビューフォーム

 

過量投与で報告がある症状の一部は副作用でも報告があります。

総症例 6,135 例中,65 例(1.06%)に副作用が認められ,主な副作用は悪心・嘔気 25 件(0.41%),嘔吐 23 件(0.37%),食欲不振 8 件(0.13%)であった。(再審査終了時)
引用:テオドールインタビューフォーム

 

一度嘔吐があったから過量投与というわけではありませんし、安易な判断は出来ません。

そのため、テオフィリン製剤は過量にならないように普段から注意する必要があります。

子どもにテオフィリンを使うなら年齢やけいれん性疾患も考慮

テオフィリンが処方される場合、下記の内容などを確認された上で使用します。

  • 原則として、6か月未満の乳児には使いません
  • 2歳未満のけいれん性疾患(熱性けいれんやてんかんなど)のある子どもには原則として推奨されない
  • 乳幼児(5歳以下)は、他のぜんそく治療薬を優先する
  • テオフィリンに影響を与える薬を定期的に使用していないか

 

乳幼児を中心として、子どもはけいれんを起こしやすい上に、テオフィリンクリアランスが変動しやすいので特に注意が必要になります。

特に6か月未満の乳児はテオフィリンクリアランスが低いので、血中濃度が上昇することがあるとされています。

 

以前は添付文書に5歳以下の目安量も書かれていましたが、現在では記載されなくなっています。

「日本小児アレルギー学会:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017」で5歳以下の薬物療法プランからテオフィリンが削除されたことを受けての対応とのことです。

テオフィリンの血中濃度に影響を与える因子に注意

テオフィリンの血中濃度に影響を与える因子として、大きく分けて以下の3つの因子に注意してください。

  1. 発熱時の対応
  2. 飲み方への注意
  3. 併用薬の注意

順番に説明していきます。

発熱時は減量か中止

発熱はテオフィリンの血中濃度上昇させることがあります。

発熱単独でもけいれんを起こしやすい上に、テオフィリンによるけいれんリスクも増やします。

そのため、発熱時にはテオフィリンを中止もしくは量の調節をする必要があるとされています。

 

参考として、「テオフィリン徐放製剤を小児に処方される先生方へ」という資材に記載されている内容を引用します。

てんかん及び痙攣の既往歴のある小児
→発熱時には服用を中止し、解熱してから服用を再開する。乳幼児(5歳以下)
→発熱時には減量(1日の飲む量を減らす)を指導する。2歳未満の場合に は中止も考慮すること。
また、注意深く観察するよう指導し、副作用があらわれたとき、いつもと違うなと感じたときには、服用を中止するよう指示する。

別途医師に指示されていれば、その通りに対応しましょう。

飲み方の注意【基本的に噛んだり混ぜたりせずそのまま飲んで下さい】

テオフィリン製剤は基本的に徐放性製剤(長く効くように工夫されている薬)なので、徐放性が失われないようにする必要があります。

 

徐放性が失われると、急激に血中濃度が上がって中毒域に達する可能性や、効果持続時間が短くなる可能性があるので、必ず注意して下さい。

液剤(シロップ)の場合

他のシロップ剤や水などと混ぜることで、徐放性が失われる可能性があります。

また、5℃以下で固化して徐放性が失われる可能性があるので、冷蔵庫では保管しないほうが良いかもしれません。

粉薬(細粒やドライシロップ)の場合

噛まないようにしましょう。

噛むと徐放性が失われる可能性があります。

水で飲めないようなら、アイスクリームやプリンなどと混ぜても、「すぐに全量」食べるなら問題ないとされています。

 

時間がかかると徐放性に影響が出る可能性があるとされています。

テオドール顆粒などの一部の製剤は、便に白い粒が残ることがあります。

錠剤の場合

割ったり潰したりすると徐放性が失われるので、錠剤のまま飲んで下さい。

テオドール錠を粉砕してけいれんが起きた例もあります。
注:会員専用サイトですので、全文の閲覧は出来ません。

これまで粉薬しか飲んだことがないこどもに錠剤が処方され、保護者が粉砕したため起こった例です。

 

粉砕してはいけないということを伝えなかった医療者側にも問題があると感じますが、そこまで考えが及ばなかったのかもしれません。

併用薬に注意【マクロライド系抗生物質などは特に注意】

テオフィリンに影響を与える薬はとても多いです。

テオドールのインタビューフォームを参考に、併用注意とされている薬を抜き出しました。
とても多いので折りたたんでいます。

テオフィリンと併用注意とされる薬(クリックで開きます)
他のキサンチン系薬剤(アミノフィリン,コリンテオフィリン,ジプロフィリン,カフェイン等)
中枢神経興奮薬(塩酸エフェドリン,マオウ等)
交感神経刺激剤(β刺激剤)(塩酸イソプレナリン,塩酸クレンブテロール,塩酸ツロブテロール,硫酸テルブタリン,塩酸プロカテロール等)
ハロタン
塩酸ケタミン
シメチジン
塩酸メキシレチン
塩酸プロパフェノン
塩酸アミオダロン
エノキサシン
ピペミド酸三水和物
塩酸シプロフロキサシン
ノルフロキサシン
トシル酸トスフロキサシン
メシル酸パズフロキサシン
プルリフロキサシン
エリスロマイシン
クラリスロマイシン
ロキシスロマイシン
チアベンダゾール
塩酸チクロピジン
塩酸ベラパミル
塩酸ジルチアゼム
マレイン酸フルボキサミン
フルコナゾール
ジスルフィラム
アシクロビル
塩酸バラシクロビル
インターフェロン
イプリフラボン
シクロスポリン
アロプリノール
ザフィルルカスト
リファンピシン
フェノバルビタール
ランソプラゾール
リトナビル
フェニトイン
カルバマゼピン
ジピリダモール
ラマトロバン
リルゾール
タバコ
セイヨウオトギリソウ(St.John’s Wort, セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
※テオドールインタビューフォームから引用、薬品名のみ抜粋

こどもへ処方される頻度が高そうな薬としては、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質、アシクロビルなどのみずぼうそうやヘルペスなどに使う抗ウイルス薬、麻黄を含む漢方薬、抗てんかん薬の一部などが挙げられます。

 

また、薬以外にも、タバコやセントジョーンズワート(健康食品などで使われることがあります)などの影響も受けます。

影響の大きさも薬によって異なりますし、場合によっては併用することもありえます。

 

病院や薬局に行くときには、必ず医師・薬剤師に、服用中の薬を伝えて下さい。

薬の名前を忘れることを防ぐためにも、出来るだけお薬手帳を持参しましょう。

テオフィリンは注意点の多い薬ですが、うまく使えば良い薬でもあります。

以下は、急性ぜんそく増悪のために入院したこどもに低用量テオフィリンが効果的だったという報告です。

参考:Anti-inflammatory dosing of theophylline in the treatment of status asthmaticus in children.

標準治療に加えて低用量のテオフィリン(5〜7 mg / kg /日)を投与された患者を、現在の標準治療のみで治療された患者と比較したところ、低用量のテオフィリンが急性喘息患者にプラスの効果をもたらす可能性が示唆されています。

 

テオフィリンは子どもに使う場合には特に注意点の多い薬です。

代替治療薬で対応出来ればそれに越したことはないでしょう。

個人的には、外来治療中であれば、代替治療薬で対応できることが多いと考えます。

 

しかし、上の報告であったように、しっかり管理された状況で適切に使えれば効果的でしょう。

注意点を忘れないようにしつつ、テオフィリンを適切に使っていただければと思います。