フルティフォームの使い方・注意点・副作用など【5歳以上の子どもにも使用可能に】

フルティフォームの使い方・注意点・副作用など【5歳以上の子どもにも使用可能に】

子どものぜんそくの治療薬にはいくつもありますが、比較的重症度の高い方に使用されることが多い「SFC」という分類の薬は今までアドエアしかありませんでした。

しかし、2020年6月に5歳以上の子どもにフルティフォームが使えるようになりました(※これまでもイギリスなどでは5歳から使えていました)。

フルティフォームについてまとめます。

なお、主に子どもへの使用についてまとめていますが、大人の使用でもある程度参考になると考えています。

フルティフォームの基本的な使い方と注意点

フルティフォームには以下の2種の製剤がありますが、子どもに使えるようになったのは「フルティフォーム50エアゾール」のみです。

  • フルティフォーム50エアゾール
  • フルティフォーム125エアゾール

大人の場合も基本は50エアゾールで、症状次第で125エアゾールに増量になります。

 

50エアゾールと125エアゾールの違いは、吸入ステロイドの量の違いです。

50エアゾールはフルチカゾンプロピオン酸エステル50μg含有、125エアゾールは同じ成分を125μg含有しています。

LABAと呼ばれるβ刺激薬のホルモテロールフマル酸塩水和物はどちらも同量の5μg含有しています。

 

使い方は1日2回で1回2吸入が基本となりますが、特別な指示がある場合は医師の指示に従ってください。

毎日使用してぜんそくを予防する薬

フルティフォームは吸入ステロイドと長時間作動型β刺激薬の合剤です。

小児気管支喘息治療管理ガイドライン(6歳以上)では、治療ステップ3以降の基本治療に使わます。

今起きているぜんそく発作を速やかに改善させる薬ではなく、将来のぜんそく発作を予防するための薬です。

 

ぜんそく発作時にはメプチン吸入などで症状を抑えることは有効ですが、将来のぜんそくを減らしたりすることは出来ません。

フルティフォームなど定期的に使用する薬は効果の実感がしにくいかもしれませんが、とても重要な治療であることは忘れてはなりません。

 

原則としてステロイドは感染症には逆効果になると考えられているため感染症による咳には使いません(ぜんそく治療中に感染症にかかった場合は原則続けます)。

そのため、短期間(数日など)使用することは原則としてありません。

 

また、1日2回で7日間投与を続けた場合、単回投与に比べて2種の成分とも血中濃度(正確にはCmaxやAUC)が2~3倍になります。

つまり、1回だけ吸入しても十分な効果を得られず、正しく継続することで十分な効果を得られるようになっています。

 

フルティフォームは「短期間咳を抑える薬」ではなく「ぜんそくの治療薬」です。

吸入したら速やかに改善することはありませんが、急に中止した場合は悪化の原因になることもありえます。

医師の指示通り継続して吸入し、自己判断での中止・減量はしないようにしましょう。

注意点:正しい吸入と管理を【吸入前に必ず振る】

フルティフォームを振らずに吸入すると十分量の薬が噴霧されないため、吸入前に強く振ることはとても重要です。

振らなくても吸入自体は出来るため「適切に吸えている感はあるけど、実際には薬液が吸入出来ていない状態」になります。

結果として症状が改善されなかったり症状が悪化する原因となります。

 

フルティフォームを使うような年齢のお子さんになると、完全に子どもに吸入を任せてしまうこともあると思いますが、病気や治療について軽く考えてしまうこともあると思います。

適切な吸入動作が出来ているのか、そもそも毎日2回吸っているのか、自宅で保護者の方にも定期的に確認してもらいたいと思います。

 

なお、新しい容器を使用する場合と、(基本的にはないと思いますが)3日以上使用しなかった場合は、4回ほど空気中に空噴霧をした後に吸入をするようにしてください。

 

日常の管理方法としては、週に一度程度吸入口周辺を乾いた布などで拭いて、通常の医薬品同様、室温で保管すれば問題ありません。

アルミ容器を外したりぬらしたりするのもよくありません。

 

中には無意識的に、正しい方法で吸入出来ていないケースがあります。

例えば、息止めが不十分、容器の通気孔を手でふさぐ、吸入器を反対向きで使用する、などです。

 

吸入器の指導せんに書いてあるやり方は、意味があってそのように記載されています。

吸入器を上下反対向きで使うだけでも、十分量の薬が出てこないことも考えられます。

定期的に指導せん通りに吸入出来ているのかを確認することは重要ですし、書いてないことは基本的にしてはいけないことだと捉えておきましょう。

フルティフォームの相互作用・副作用・過量投与

他薬との相互作用

フルティフォームと併用禁忌扱いの薬はデスモプレシン酢酸塩水和物(男性における夜間頻尿)のみです。

ただし、同成分であっても子どもの夜尿症に使用している場合は併用禁忌には該当しません。

これは、成人男性用製剤を使用するのは高齢男性が多く、低ナトリウム血症のリスクが高いことが理由として挙げられます。

その他併用注意の薬は下記の通りですが、極端な影響が出るケースは限られるでしょう。

  • CYP3A4を阻害する薬剤(数多くあります)
  • リトナビル
  • カテコールアミン製剤(エピネフリン、イソプロテレノール)
  • キサンチン系薬剤(テオフィリン、アミノフィリン製剤)
  • 副腎皮質ホルモン剤(プレドニゾロン、ベタメタゾン
  • 利尿剤(フロセミド)
  • β−遮断剤(アテノロール)
  • QTを延長する薬剤(抗不整脈剤、三環系抗うつ剤)

副作用:口内の症状はうがいで対策

フルティフォームで報告の多い副作用は、薬が直接触れる「口からのどにかけての症状」です。

主なものとしては、嗄声(声がれ)、口内やのどの感染症、不快感、痛みなどです。

 

吸入薬は「成分を肺に届かせる」ことが目的で、口の中に残ったりや胃に届かせることが目的ではありません。

そして口内に薬が残っていることが先程の副作用の原因になります。

これらを防ぐためにも、吸入後に口に残る薬剤はうがいをして吐き出してしまいましょう。

 

どうしてもうがいが出来ない場合には、何かを飲んだりすることで口の中から胃に流してしまうほうが副作用の軽減に繋がります。

最低限、口の中には薬が残らないようにすることが重要です。

 

また、吸入ステロイドを長期間子どもに使用すると成長遅延につながるとの報告もあります。

数値で見ると大きくはありませんが、その身長差をどう考えるかは人により差が大きいでしょう。

 

しかし、成長遅延を気にしてぜんそくの治療をおろそかにすることは、絶対に推奨出来ません。

深夜にぜんそく発作が起こると、夜間に何度も目が覚め十分な睡眠が取れなくなり、それ自体が成長遅延につながる可能性も否定できません。

適切なぜんそく治療をしつつ、発作を最小限にすることが、患児のQOL(生活の質)を最大限に上げると考えています。

過量投与

フルティフォームには2種類の成分が含まれていますが、過量投与により注意が必要なのはβ刺激薬のホルモテロールフマル酸塩水和物です。

通常量でも動悸や手の震えなどが出やすいですので、過量投与でも当然同じような症状に注意が必要になります。

極端な過剰投与だと心臓への負担が大きくなる可能性も否定できません。

 

一方、ステロイドは飲み薬と比較すると量も微々たるものですので、短期間の過量投与は極端にならない限りまず問題にはなりません。

長期間の投与になることも多いので気にしなくても良いというわけではありませんが、過量投与時はβ刺激薬の副作用のほうが目立つのではないかと思います。

 

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フルティフォームと類似の吸入薬としては、アドエアシリーズも子どもに使用可能です。

 

小児ぜんそくと治療薬については以下の記事でまとめています。

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