メプチン吸入などの気管支を拡げる薬はぜんそく発作を抑えるには良い薬です。
しかし、ぜんそく発作時に症状をおさえる効果がわかりやすいため、本来優先されるべき他の治療よりも優先して使われてしまうことが多いように感じます。
一般的に、メプチンは吸入タイプと経口タイプ(飲み薬)で、使われ方や治療の意図が異なります。
少々ややこしいですが、しっかりと区別しておきましょう。
メプチンの吸入薬と飲み薬の違い
メプチン全般は、空気の通り道である「気管支」を一時的に拡げる薬です。
吸入タイプは即効性が高く、ぜんそく発作が起きている時に使用することで、発作を楽にすることが可能です。
対して飲み薬は、日本小児アレルギー学会による「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017」において、ぜんそくの短期追加治療に使われる薬という扱いです。
短期追加治療とは
長期管理中に風邪や季節性の変動などで一過性のコントロール悪化が認められた場合に、2週間以内で追加する治療
同じ「メプチン」ですが、飲み薬と吸入薬では意味合いが異なる点は理解しにくいところですのでご注意ください。
また、メプチンはあくまで一時的に使われる薬であり、ぜんそくの根本的な治療にはなりません。
痛み止めを飲むと一時的に痛みが紛れますが、根本的な解決になってないのと同じようなイメージで考えてください。
それどころか、「メプチンを使っていれば咳が出ないから」と基本の治療をおろそかにしてしまうことがあります。
結果として、気管支の炎症が放置されたままになり、ぜんそくを悪化させてしまう可能性すらあります。
根本的な治療をするためには「吸入ステロイド」や「ロイコトリエン受容体拮抗剤」などの定期使用など大切です。
こちらは即効性がなく、効果の実感が薄いため継続をやめてしまう例がありますが、予防のために大切な治療です。
メプチン吸入液・エアー・スイングヘラーの特徴と比較
吸入タイプのメプチンはぜんそく発作を抑えるために使う薬で以下の種類があります。
- メプチン吸入液
- メプチンエアー/メプチンキッドエアー
- メプチンスイングヘラー
それぞれの特徴はこちらです。
個別に説明していきます。
メプチン吸入液は低年齢から使えるがネブライザーが必要【パルミコートと混ぜることも】
メプチンの吸入薬の中で最も低年齢から使えるのが、「メプチン吸入液」です。
一方で、使うには少し手間がかかります。
- 吸入にはネブライザーという医療機器が必要
- 吸入時間が5分程度かかる
- 他の吸入液などと混ぜて使う必要がある
メプチン吸入液は一般的なネブライザーであればほぼ使えます。
※ネブライザーと吸入器はしっかり区別してくださいね。
しかし、メプチン吸入液を使うということは、「ぜんそく」の診断をされているはずです。
ぜんそく治療の予防薬として「ブデソニド(パルミコート)」を使うこともありますが、こちらは適したネブライザーの種類が限られます。
コンプレッサー式ネブライザー(ジェット式ネブライザー)を用意しておけば、ネブライザーが1種類で済むかもしれません。
ネブライザーで吸入する場合、吸入時間は5分程度かかる点も手間に感じると思います。
また、メプチン吸入液は低浸透圧の為、希釈しないで使用するとぜんそく発作を誘発する可能性があります。
そのため、等張液の生理食塩水や、インタール吸入液、ブデソニド(パルミコート)吸入液などと混ぜて使うように指示されると思います。
何に混ぜて吸入するのかは、医師の指示に従ってください。
ちなみに水道水で希釈するのはおすすめできません。
補足
メプチン吸入液をパルミコートと混ぜることに関しては、あまり推奨しないという意見もあります。
しかし、医師の指示に従って、混ぜてすぐ使うのであれば、特に問題ないと考えています。
パルミコート吸入液は、「他剤との配合使用については、有効性・安全性が確認されていないことから、配合せず個別に吸入させることが望ましい。」とされているので、単剤使用が基本になります。
しかし、メプチン吸入液と混合して3時間後の、混合液の外観、再懸濁性、pH、ブデソニド(パルミコート)の含量残存率及びブデソニドの質量平均粒子径は、特に変化もありません。
参考:パルミコート吸入液インタビューフォーム「パルミコート吸入液と主要喘息吸入液との配合変化試験
メプチンエアーはスペーサー利用で低年齢でも使える
メプチンエアーはエアゾールタイプ(pMDI)の吸入で、ネブライザーを使わずに吸入出来ます。
5歳ぐらいから使えているお子さんもいます。
ただし、以下の点には注意しましょう。
- わずかにアルコールを含むので過敏症の方には控える
- 「押す」と「吸う」の同調が必要で小さい子には難易度が高い
アルコールの量が多いわけではないので、酔う心配はないと思います。
しかし、アルコール過敏症の方は使用できません。
また、独特の匂いもあるので、抵抗感を感じるケースもあります。
また、適切に吸入するには、「押す」と「吸う」の同調が必要です。
小さい子が吸入するのは少々難易度が高いです。
しかし、エアロチャンバーなどのスペーサー(吸入補助具)を使用すれば同調できなくても使えるので、子どもでも使いやすくなります。
スペーサーは条件次第では、病院で用意してもらえることもあります。
必要であれば、一度医師に相談してみましょう。
なお、メプチンキッドエアー(5μg)は、1回の噴霧量がメプチンエアー(10μg)の半分になっています。
通常、成人には1回20μg、子どもには1回10μgを吸入するので、子どもにメプチンエアーが処方されることもあります。
メプチンスイングヘラーは吸う力が必要で子ども向きではない
メプチンスイングヘラーはドライパウダータイプ(DPI)なので、自力で吸う力が必要です。
そのため、吸う力が弱い子どもや高齢者には、適していないことがあります。
その他にも、以下の注意点があります。
- 操作方法に注意点多数(斜めに持って操作するだけでも正しく使えない)
- 湿度に弱い(高温多湿を避ける、毎回キャップを閉じる)
メプチンエアーと異なり、「押す」と「吸う」の同調が不要というメリットもあります。
一方で、それまでの吸入動作に注意すべき点がたくさんあります。
最も注意すべきなのは、【カウンターのある面を上にしてボタンを押す】ことです。
斜めに持つ、縦に持つ、表裏間違える、のどの状態でボタンを押しても正しく薬がセット出来ません。
操作方法に注意点が多いため、メプチンスイングヘラーは「子ども向きの薬ではない」と考えています。
メプチン吸入液か、メプチンエアー+スペーサーのほうが、子どもには使いやすいでしょう。
メプチンの飲み薬の特徴【錠・顆粒・シロップ・ドライシロップ】
メプチンの飲み薬は比較的飲みやすいものが多く、「きちんと吸えているか?」という心配もありません。
吸入薬を嫌がるお子さんもいるので、吸入の代わりに飲み薬を使いたくなることもあるかもしれません。
しかし、吸入薬のように発作を速やかに抑えることは出来ませんので、しっかりと使い分けてください。
メプチンの飲み薬には以下の種類があります。
- メプチン錠50μg
- メプチンミニ錠25μg
- メプチン顆粒0.01%
- メプチンドライシロップ0.005%
- メプチンシロップ5μg/mL
6歳以上は以下の表に記載の量を、1日2回朝及び就寝前服用します。
6歳未満はプロカテロール塩酸塩水和物として1回1.25μg/kgを1日2回朝及び就寝前ないし、1日3回朝・昼・就寝前に表の量服用します。
※表に記載の量はあくまで目安であり、年齢や症状により量が変わることがあります。
メプチン錠、メプチンミニ錠はどちらも小型の錠剤です。
メプチンミニ錠は原則6歳から使用出来ます。
メプチン顆粒・メプチンドライシロップはどちらも白色の粉薬で、飲みにくさは感じません。
メプチンシロップは無色でオレンジ風味のシロップ剤です。
甘味がたっぷりのスポーツドリンクのような印象です。
どれも「まずくて飲めない」ということは少ないと思います。
メプチンの副作用は動悸、手のふるえ、頻脈など
当然ですがメプチンにも副作用はあります。
調査症例6,655例中101例(1.52%)に臨床検査値の異常を含む副作用が認められている[吸入剤:メプチンエアー・キッドエアー・吸入液(ユニットを除く)の承認時及び再審査終了時]。
引用:メプチン吸入液添付文書
0.1%以上の報告があるのは、動悸、頻脈、振戦、頭痛・頭重感、嘔気・嘔吐等と記載されています。
比較的起きやすい印象のある副作用としては、「動悸、手のふるえ、頻脈」などが挙げれられます。
滅多にある副作用ではありませんが、比較的重たい副作用としては、心臓に負担をかけることによって不整脈などを引き起こすこともあります。
血清カリウム値低下の報告もありますが、普通に食事が出来ており、使用量が適切であれば大きな問題になることはほとんどないでしょう。
ぜんそく治療に使用するステロイドや稀に使用されるテオフィリンなどのキサンチン誘導体との併用でカリウム値の低下が増強されることがあります。
この点でも、長期間ダラダラと使う薬ではないと考えます。
どんな薬でも同じことですが、適切な使い方をすることが大切です。
メプチンを使用する場合で考えれば、繰り返しになりますが、「吸入ステロイド」や「ロイコトリエン受容体拮抗剤」などの定期使用が大切になります。
メプチンの基本と注意点のまとめ
- メプチンはぜんそく発作に対して即効性があるが、根本的な解決をする薬ではありません
- 吸入薬と飲み薬で使い方や意図が異なるのも重要なポイントです
- 吸入薬はそれぞれ特徴がありますが、発作時の使用が基本です
- 飲み薬は2週間以内の使用が基本です
- 副作用にも注意が必要ですので、指示された使い方を守ってください
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