吸入ステロイドによる子どもの成長抑制について【種類やデバイスによる違いもあり】

吸入ステロイドによる子どもの成長抑制について【種類やデバイスによる違いもあり】

頻度の限りなく低いものまで含めると、薬の副作用の種類は少なくありません。

そのため、医師や薬剤師は、軽度だが可能性がそれなりにあるか、重大な副作用のみを説明する傾向が高い印象があります。

つまり、副作用の説明は個人の判断に依存しやすく、過不足が生じやすいです。

 

【吸入ステロイドによる成長抑制の可能性】は、説明されていなかった保護者がどこかで耳にしたときに、思わす中止を考えてしまうような副作用の一つです。

実際に吸入ステロイドを(一時的でしたが)、自己判断で中止させてしまった保護者の方もいます。

医療者側が最終的な身長への影響は大きくないと考えていても、説明を欠くべきではないと考えています。

 

吸入ステロイドによる成長抑制についてまとめますが、ひとつお願いがあります。

ぜんそくで吸入ステロイドを使っているのであれば、絶対に自己判断で中止しないで下さい。

吸入ステロイドによる治療はぜんそく死の減少につながる

ぜんそくが原因による死亡者数は今でも年間1000人以上います。

そのほとんどは高齢者ですが、2016年は、0~4歳で4人、5~9歳で1人がぜんそくで死亡しています。

1995年の子どもの死亡者数は、0~4歳で37人、5~9歳で15人です。
参考:e-Stat

 

ぜんそく治療に吸入ステロイドが広く使われるようになったのは割と最近です。

ぜんそくによる死者数が減った要因の一つとして、吸入ステロイドを使うようになったことがあります。

 

小児気管支喘息治療・管理ガイドラインなどでも、成長抑制があったとしても、ぜんぞく治療に吸入ステロイドが重要であるとコメントしています。

高用量のICSによる副作用は成長抑制を含めて以前から報告されており、使用に際しては十分な注意が必要です。JPGL2012ではICSの適応基準を患児のBenefit/Riskの観点から決定しています。成長抑制は重大なRiskのひとつであり、BenefitがRiskを上回ることがなければ、Riskをおこす可能性のある量を可能性のある期間使用すべきではありません。しかしながら、適切に使用される場合、ICSは乳幼児を含めて多くの喘息患児にRiskを上回るBenefitをもたらします。Benefitとしては ①臨床的に症状の改善に伴うQOLの向上 ②生理学的に肺機能、気道過敏性の改善 ③病理組織学的に気道炎症の改善があげられます。また、ICSの適切な使用が、近年の重症患児の減少、発作による入院数の減少、喘息死の減少をもたらした原動力のひとつになっていることは多くの臨床研究から間違いのない事実であると考えられます。
参考:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017

吸入ステロイドによる子どもの成長抑制についての報告

吸入ステロイドの長期使用は成長抑制と関連するという報告はいくつもあります。

先程の小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017にも、成長抑制の可能性についての記載があります。

 

根拠となるデータとしては以下の報告があります。
参考:Inhaled corticosteroids in children with persistent asthma: effects on growth

気になるところだけ抜粋しました。

  • 低~中程度の吸入ステロイドにより、身長抑制にの可能性がある。
  • 成長抑制は始めの1年での影響が一番大きく、それ以降の治療では影響は少ない可能性がある。
  • 吸入ステロイドの種類によって成長への影響は異なる可能性があるが、まだデータが十分ではない。
  • 成人まで追跡調査したデータでは、思春期前の年齢でブデソニド400μg/ 日で平均4.3年間治療すると、平均身長が1.20 cm低かった。

吸入ステロイドの種類やデバイスによる違い

吸入ステロイドの種類や、吸入用のデバイスの違いによっても差が出る可能性が指摘されています。

※デバイス:吸入に使う装置のこと。
同じ成分でデバイスが複数あることも。

 

こちらも気になるところだか抜粋しました。

  • 吸入ステロイドの種類やデバイスが、ぜんそくの子どもの成長に影響を与える可能性がある
  • 同等程度の量の場合、フルチカゾンはベクロメタゾン・ブデソニドよりも成長を抑制する可能性がある
  • ブデソニドのイージーヘラー(デバイスの一種)は、タービュヘイラー(デバイスの一種)よりも成長への悪影響が少ないと考えられる

十分なデータ量がある報告とは言えないため、より母数が多い研究結果が待たれますが、現時点では一つの参考になると考えます。

イージーヘラー(気体を吸う)のほうがタービュヘイラー(粉末を吸う)よりも、肺活量を必要とせず、子どもでも吸いやすいと考えます。
結果としてイージーヘラーを使用している子どものほうがぜんそく治療がうまく出来ており、吸入ステロイドや内服のステロイドの量が減って、成長抑制への影響が少ない可能性もあるのではないかと考えています。

 

レビューに記載のある吸入ステロイドを日本の製品に当てはめると以下のようになります。

・フルチカゾンフルタイド(ディスカス・エアゾール・ロタディスク)
※配合剤としてアドエア(ディスカス・エアゾール)、フルティフォーム(エアゾール)・ブデソニドパルミコート(吸入液・タービュヘイラー)
※配合剤として、シムビコート(タービュヘイラー)・ベクロメタゾン:キュバール(エアゾール)

その他にもシクレソニド:オルベスコ(インヘラー)などがあります。

 

また、フルタイド(フルチカゾンプロピオン酸エステル)に類似の成分として、アニュイティ(フルチカゾンフランカルボン酸エステル)もあります。

アニュイティはアメリカの添付文書では半量(50μg)が5歳から使用可となっていますが、日本では現在のところ100μg~の成人向けの製品となっています。

フルチカゾンフランカルボン酸エステルは点鼻ステロイドのアラミストと同じ成分です。

ブデソニドのデバイスによる違いについて

先程の報告によると、ブデソニドはイージーヘラーのほうがタービュヘイラーよりも成長への影響が少ない可能性が指摘されています。

ブテソニドの単剤は日本ではパルミコートの吸入液とタービュヘイラーがあり、イージーヘラーはありません。

パルミコート吸入液の粒子径などは、タービュヘイラーよりはイージーヘラーに近いと考えますが、吸入液とイージーヘラーを同一と考えることも出来ません。

 

仮にパルミコート吸入液のほうが影響が少ないとしても、パルミコート吸入液の使用にはネブライザーという機器を購入する必要がありますし、吸入時間もかかります。

デバイスの選択には多角的な視点が必要です。

吸入ステロイドの種類について

ブデソニドやベクロメタゾンよりもフルチカゾンのほうが成長に影響を与える可能性も指摘されています。

ステロイド単剤であれば、フルチカゾンを選択しないという選択肢を取ることは可能です。

 

ぜんそくの症状次第では、β刺激薬との合剤を使用する可能性もあります。

β刺激薬との合剤で子どもへの適応があるのはフルチカゾンを使用しているアドエアだけです。
※アメリカの添付文書ではシムビコートは6歳から使えることになっており、日本でも使われることもあります。

小さいお子さんに使う場合、エアゾールの剤形があるアドエアのほうが吸いやすいという点でも、アドエアを使用している方が多いと思います。

 

吸入ステロイドの種類だけでなく、配合剤の有無や小児適応、そしてデバイスも考慮に入れて考える必要があるでしょう。

私は薬剤師なので、直接薬の選択に関わることはありませんが、相談された時には色々な視点で答えれるようにありたいと思います。

【吸入ステロイドによる成長抑制について】まとめ

吸入ステロイドを使用することによって成長が抑制される傾向はあります。

しかしその影響は限定的で、4.3年で1.2cmほどです。

個人的には、身長への影響はそこまで大きくないようにも感じます。

 

一方で、ぜんそく自体が成長の遅れに繋がっているという報告もあります。
参考:Maturational delay and temporal growth retardation in asthmatic boys.

 

また、吸入ステロイドは、ぜんそくによる死亡数減少の要因の一つになっていることも忘れてはいけません。

しか
自己判断での中止は危険です。

ぜんそく治療において大切なことは、ぜんそくを悪化させないことです。

薬での治療に心配があるならば、なおさら、専門の医師のもとで吸入ステロイドを含めた薬物治療を適切にすることが大切だと考えます。

未治療でぜんそくが悪化していくと、結果的により多くの治療が必要になる可能性があることは忘れないでください。

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