抗生物質の種類や注意点【風邪に効果がある?|飲めなかったらどうする?】

抗生物質の種類や注意点など【風邪に効果があるのか?|飲めなかったらどうするか?】

「風邪に抗生物質は効果がない」ことは理解が広まってきている気はします。

しかし、子どもの病気を心配する親の立場としては、何か特別な薬を求めてしまう気持ちも理解できます。

 

  • 風邪に抗生物質を使う意味はあるのか?
  • 抗生物質はどういう病気に使うのか?
  • 抗生物質にはどのような種類があるのか?
  • 抗生物質に関するよくある疑問

このような内容についてまとめていきます。

 

厳密には、抗生物質(抗生剤)は「微生物が産生する他の微生物などの発育を阻害するもの」を指す言葉で、抗菌薬は「微生物が産生していないものも含めての総称」です。

【抗菌薬】と表現したほうが適切な場面が多いですが、薬局で患者さんと話す際には抗生物質(抗生剤)の方が伝わりやすい印象があります。

そのため当ブログでは、少々誤解混じりながらも、基本的に「抗生物質」としています。

風邪などで抗生物質を使用するベネフィットとリスク

抗生物質が必要とされる病気は多くありません。

使われるのは細菌が原因による病気の一部のみですし、もちろんウイルスには効きません。

風邪のほとんどはウイルスによるものなので、風邪にもほとんど不要と言えます。

 

感染症の原因を大まかに分類すると以下のようになりますが、例外もあります。

細菌による病気

溶連菌性咽頭炎、細菌性肺炎、細菌性腸炎、急性中耳炎、急性副鼻腔炎(蓄膿症)、とびひ など

 

ウィルスによる病気

かぜ症候群、インフルエンザ、ウィルス性胃腸炎、突発性発疹、風疹、おたふくかぜ、水ぼうそう、手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱 など

 

 

そのような場合に抗生物質を使用すると、ベネフィット(恩恵)はなく、リスク(副作用など)のみがあると言えます。

しかし、実際にはベネフィット(恩恵)が全くないとも言えません。

抗生物質予防投与のベネフィット(恩恵)は?

風邪などの本来抗生物質が不要な病気に、抗生物質を使用するベネフィットはあるのか?というと、全くないとは言えません。

以下の報告によると、抗生物質が不要とされる気道感染症(中耳炎、のどの痛み、上気道炎、気管支炎)に抗生物質を使用することで、重症化を予防できるという結果が出ています。
参考:Protective effect of antibiotics against serious complications of common respiratory tract infections: retrospective cohort study with the UK General Practice Research Database.
※重症化は、中耳炎は乳様突起炎、のどの痛みは扁桃腺炎、上気道炎と気管支炎の場合は肺炎と設定。

 

たしかに重症化は予防できていますが、抗生物質を飲まなくても良いと診断された人4000人以上に抗生物質を飲んでもらうことで、やっと一人だけ重症化が防げています。

この結果をどのように感じられるかは人によって異なると思いますが、個人的には賛同しかねます。

この報告の結論としても、重症化予防での使用は正当性がないとされています。

 

病気の種類ごとに見てみると、気管支炎に使用した場合は1人の重症化を予防するために必要な人数は100人ほど、さらに65歳以上に限れば39人という結論です。

高齢者の死亡原因として肺炎の頻度は高いので、65歳以上の気管支炎前例に抗生物質を使うことは、また違った意味合いになると思います。

 

どれぐらいの割合で重症化を防げれば使用が妥当なのかの判断は難しいです。

しかし、「高リスク群に抗生物質を予防投与すること」を意味がないと断じることも違うと感じます。

抗生物質予防投与のリスク(副作用などの有害事象)は?

薬を使う以上、副作用などの有害事象が起こる可能性は増えます。

抗生物質の種類によって、起こりやすい副作用は異なりますが、嘔吐・下痢・皮疹を合わせれば10%程度で起きてもおかしくないです。

成人に抗生物質を使用すると、嘔吐・下痢・皮疹などの副作用が、プラセボと比較して2.62倍になるという報告もあります。
参考:Antibiotics for the common cold and acute purulent rhinitis.

 

報告数は少ないですが、アナフィラキシー(全身のアレルギー反応)の可能性もあります。

耐性菌が増えることや、ピボキシル基を含む抗生物質を使う場合は低血糖のリスクも考えなければなりません

また、過去3年間の一般的な感染症(上気道・下気道感染症、尿路感染症、中耳・外耳炎など)に対する抗生物質の処方回数と、別の感染症で入院するリスクを比較した報告があります。

こちらによると、抗生物質の処方回数が多いほど、入院リスクが高い傾向があったと報告されています。

参考:The effectiveness of frequent antibiotic use in reducing the risk of infection-related hospital admissions: results from two large population-based cohorts.

抗生物質が不要な病気の重症化予防に使う意味は?

  • 抗生物質の予防投与で4000人中1人重症化は防げる可能性
  • 嘔吐や下痢などの副作用が出るのは4000人中400人ぐらいの可能性

 

コクランのシステマティックレビューにも以下のように書かれています。

  • 風邪や急性化膿性鼻炎に抗生物質を使っても、早く治るわけではない。
  • 成人の一般的な風邪と、すべての年齢の化膿性鼻炎に対して抗生剤を使うことで悪影響が起こる可能性がある。
  • そのため、風邪や急性化膿性鼻炎に抗生物質を使うことは推奨できない。

 

重症化リスクが高い人には本来不要とされる病気に抗生物質を使用する意味もあるのかもしれません。

しかし、重症化リスクが低い人に対して抗生物質の予防投与をしても、効果がないだけでなく、副作用リスクを増やすだけだという印象です。

抗生物質が二次感染予防になる可能性もわずかにはあるとは思いますが、あくまで感染後に対応するのが基本です。

 

必要性があると考えられて処方された抗生物質を自己判断で中止することが一番リスクが高いということも忘れずに。

抗生物質の種類と副作用

抗生物質にも色々な種類があり、年齢や病気ごとに適切なものは変わってきます。

子どもに使われることが多いのは、ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系の印象です。

細胞壁
合成阻害
ペニシリン系サワシリン・ワイドシリン、クラバモックス
セフェム系第一世代ケフラール、ケフレックス
第二世代オラセフ、セフメタゾン
第三世代フロモックス、メイアクト、セフゾン
第四世代マキシピーム、ファーストシン
カルバペネム系オラペネム、メロペン
ペネム系ファロム
ホスホマイシンホスミシン
グリコペプチド系塩酸バンコマイシン
蛋白
合成阻害
アミノグリコシド系カナマイシン、ゲンタマイシン
マクロライド系14員環エリスロシン、クラリス、ルリッド
15員環ジスロマック
16員環ジョサマイシン
リンコマイシン系ダラシン、リンコシン
テトラサイクリン系ミノマイシン、ビブラマイシン
クロラムフェニコール系クロロマイセチン
オキサゾリジノン系ザイボックス
DNA・RNA
合成阻害
キノロン系薬オゼックス、クラビット
ST合剤バクタ

※スマホで見る場合は、右へスクロールすると全体が見れます。
※表には一部の薬のみ記載しています。

 

抗生物質には先程の表にあるようにたくさんの種類があるので、注意すべき副作用も一つ一つ異なります。

一方で、多くの抗生物質に共通の副作用として挙げられるのが下痢です。

抗生物質は腸内の善玉菌にも影響を与えてしまうので、腸内細菌のバランスが崩れて下痢になります。

 

抗生物質による下痢は、薬を飲み終わったら自然と戻っていきますが、耐性乳酸菌などの整腸剤を併用することもあります。

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抗生物質Q&A【最後まで飲みきる|飲み忘れたら?|飲めなかったら?】

抗生物質は最後まで飲みきるのが基本

抗生物質は基本的には最後まで飲みきるようにしてください。

例外として、副作用が大きな問題になった場合や、効果不十分な場合などが挙げられますが、どちらも自己判断は避けましょう。

「治ってきたから自己判断で途中で中止」も推奨できません。

 

さらに良くないのは、抗生物質を自己判断で保管しておいて次の病気のときにとりあえず飲む事です。

病気のサインを中途半端に消してしまうので正しい診断ができず、病気をこじらせてしまうことがあります。

抗生物質を飲み忘れたらどうしたら良い?

抗生物質は時間通りに飲むことが大切です。

抗生物質を適切に飲むことで菌を減らすことが出来ますが、次に飲むまでに時間が空きすぎると菌がまた活発になりかねません。

結果として、菌がなかなか減らずに症状が長引くことが考えられますし、薬剤耐性菌(その抗生剤が効きにくくなる細菌)を産み出す原因にもなり得ます。

大腸菌などの常在菌が耐性化した場合などは、体内に長く定着する可能性もあるので注意が必要です。

 

飲み忘れに気が付いたらすぐ飲むのが基本ですが、次に飲むまでに時間があまり空いていなければ1回分飛ばして飲みましょう。

基本的に、1度に2回分飲むことはおすすめ出来ません。

子どもが抗生物質を飲めなかったらどうする?

どうしても抗生物質を飲めないんです

保護者の方から、抗生物質を飲めなかったという相談を受けることがあります。

処方された抗生物質は基本的に飲み切ることが重要です。

必須ではないケースもあるのかもしれませんが、あまり多くはないでしょう。

 

そのため、飲み方の工夫をすることが重要です。

薬の種類によって、相性の良い飲み物なども変わります。

ジュースやヨーグルトと混ぜることで、そのまま飲むよりも格段に苦くなる薬もあります。

 

基本的には薬局で飲み方のアドバイスをもらえると思いますが、以下の記事でまとめていますので参考にしてください。

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