ホスホマイシン(ホスミシン)の味と飲み方【細菌性胃腸炎とHUSについて】

ホスホマイシン(ホスミシン)の味と飲み方【細菌性胃腸炎とHUSについて】

ホスミシン(成分名:ホスホマイシン)は、細菌性胃腸炎や膀胱炎などで使われることのある抗生物質です。

子どもにも使用されますが、抗生物質の中ではかなり飲みやすい薬です。

「抗生物質は苦い」と経験的に思い込んでしまいがちですが、飲みやすさは問題にならないでしょう。

ホスホマイシンの味と飲み方

ホスホマイシンの粉薬の代表格は「ホスミシンドライシロップ400」です。

ヨーグルト風味で、抗生物質の中ではかなり美味しく飲みやすいです。

 

飲ませるのにそこまで苦労はないと思いますが、嫌がるようなら飲ませる直前に、ジュースなどに混ぜてもOK問題ありません。

ホスホマイシン耐性菌も問題になることがあるので、飲み始めたら最後まで飲み切るようにしてください。

ホスホマイシン(ホスミシン)の副作用

ホスホマイシンで副作用が問題になることは多くありませんが、他の抗生物質と同じように下痢などの消化器症状は出やすいと言えます。

その他に、頻度は低いですが、重篤な大腸炎が起こることがあります。

副作用
市販後使用成績調査の結果、全国 664 施設から総症例 7,243 例の臨床例が報告された。副作用発現症例数は 176 例 (2.43%) であり、副作用発現件数は 183 件であった。(再審査終了時)
主な副作用は、消化管障害(下痢、腹痛、嘔気、嘔吐等)152 例、皮膚・皮膚付属器障害(発疹、蕁麻疹等)14 例、肝臓・胆管系障害(血清トランスアミナーゼ上昇等)10 例であった。
引用:ホスミシン添付文書

 

細菌性胃腸炎に使用された場合、そもそも腹痛・頻回の下痢・血便、の症状が起こりうるので、副作用との判断が難しく感じます。

胃腸炎以外に使用する場合なら、「血便を伴う下痢があればすぐに相談してください。」と指導することが多いです。

【補足】ホスホマイシンと細菌性胃腸炎、HUS

ホスホマイシンは、細菌性胃腸炎に使われことの多い抗生物質です。

抗生物質はウイルスには効果がないので、例えばノロウイルスが原因のウイルス性胃腸炎などでは使われません。

その他にも、膀胱炎などの尿路感染症や、眼科・耳鼻科、皮膚科領域などで使われます。

※アメリカの細菌性膀胱炎のガイドラインでは、ホスホマイシンメタロールが推奨の一つに挙げられていますが、日本のホスミシンはホスホマイシンカルシウム、ホスミシンSはホスホマイシンナトリウムという違う化合物なので、同じものとしては扱えません。

 

実際には、子どもの胃腸炎のほとんどがウイルス性であり、抗生物質を必要としません。

また、軽度の細菌性胃腸炎で補液などの対処療法で軽快する場合も、抗菌薬は必要とは限りません。

そのため、「胃腸炎だから」、「細菌性胃腸炎だから」、必須とは言えません。

 

細菌性胃腸炎を疑う症例として、高熱、強い腹痛、下痢、血便などがあり、カンピロバクター属、非チフス性サルモネラ属の順に多いとされます。

腸管出血性大腸菌(O-157など)も原因になります。

 

まず、カンピロバクター属による細菌性胃腸炎の場合、抗生物質が必須とは言えず、プラセボと比較して、抗生物質を使用した場合の胃腸炎の症状の短縮期間は1.3日程度とされています。
参考:A meta-analysis on the effects of antibiotic treatment on duration of symptoms caused by infection with Campylobacter species.
そのため、細菌性胃腸炎で最も多いカンピロバクターに抗生物質を使用する場合は、重篤な症状やハイリスクな患者への処方が中心だと考えます。

 

細菌性胃腸炎の原因として2番目に多いとされる非チフス性サルモネラ腸炎も自然治癒するので抗生物質が必須とは言えません。

サルモネラ属に抗生物質を使用することで、便からの排出期間が伸びる可能性なども示唆されており、やはり処方は限定的だと考えます。
参考:Antimicrobials for treating symptomatic non-typhoidal Salmonella infection.

 

気になる点の一つとして、これはホスミシンに関しての報告ではありませんが、抗生物質により溶血性尿毒症症候群(HUS)発症リスクが増加する可能性があるため、腸管出血性大腸菌感染者への抗生物質の使用を推奨していません。
参考:Shiga Toxin-Producing Escherichia coli Infection, Antibiotics, and Risk of Developing Hemolytic Uremic Syndrome: A Meta-analysis.

 

一方で、志賀毒素産生性大腸菌感染にホスホマイシンを早期に使用することで、HUSの発症が減少する可能性があります。
参考:A role for fosfomycin treatment in children for prevention of haemolytic-uraemic syndrome accompanying Shiga toxin-producing Escherichia coli infection.

 

つまり、腸管出血性大腸菌腸炎に抗生物質を使用のは推奨されないながらも、ホスホマイシンはHUSを減少させる可能性がある(ただしエビデンスの質は低め)と言えます。

「JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015―腸管感染症―」では、腸管出血性大腸菌に抗生物質を使用する場合、ホスホマイシンが第一選択とされています。

 

カンピロバクターやサルモネラでは血便は起こりにくいですが、腸管出血性大腸菌では起こりやすいとされます。

もちろん、「便に出血が混じっている=腸管出血性大腸菌ではありません」し、「便に出血が混じっている=ホスミシンでもありません」が、便に出血が混じっているケースでホスホマイシンの処方を多く見かける気がします。