フェノバルビタールは昔から子どもの鎮静・催眠・けいれんなどに使われています。
しかし、フェノバルビタールはとても苦いだけでなく、そもそも興奮状態の子どもに飲ませるのは大変でしょう。
そのため、経口投与と同程度の血中濃度が得られるワコビタール坐剤が有用なケースがあります。
ワコビタール坐剤の使い方や併用注意薬、副作用などについてまとめます。
ワコビタール坐剤の使い方と保管方法【冷所】
ワコビタール坐剤は、子どもが経口困難かつ、以下の場合に使用されます。
- 催眠
- 不安・緊張状態の鎮静
- 熱性けいれん及びてんかんのけいれん発作の改善
通常はフェノバルビタールナトリウムとして、1日4~7mg/kg程度を使用します。
※胃腸炎関連けいれんには10mg/kgを単回投与することがあります。
半減期が長いので、単回での投与が多い印象がある。
ワコビタール坐剤には4規格ありますが、使用量は体重や症状などで異なります。
1回4~7mg/kgとして考えると、坐薬の規格と体重の関係は以下の表のとおり。
とはいえ、実際に使用される場合は、この量の通りになることは少ないかもしれません。
というのも、臨床試験では使用目的により必要なフェノバルビタールの血中濃度が異なっています。
- 鎮静・催眠効果:3.5~4.3μg/mL
- 抗けいれん効果:13.97±6.22μg/mLで有効率83.3%
そのため、鎮静・催眠目的か抗けいれん目的かで使用量を変えることがあります。
※抗けいれん目的では通常量より多めに使用されることがある印象があります。
抗けいれん効果を示す血中濃度の2~3倍程度で中毒域(40~45μg/mL以上)に達する点にも注意が必要です。
インタビューフォームの過量投与の項目には以下のように記載があります。
症状:中枢神経系及び心血管系抑制。血中濃度40~45μg/mL以上で眠気、眼振、運動失調が起こり、重症の中毒では昏睡状態となる。呼吸は早期より抑制され、脈拍は弱く、皮膚には冷汗があり、体温は下降する。肺の合併症や腎障害の危険性もある。
そのため、仮に効果が見られなかったとしても医師の指示を超えた使用は絶対に控えて下さい。
特に生後5日までの新生児は吸収が悪いが半減期が極めて長いという報告があるので、適切な管理が重要とされます。
なお、異なる2種類の坐薬を併用する場合、順番によっては片方の坐薬の効果を弱めてしまう可能性があります。
具体的な例としては、ワコビタール坐剤の場合、ダイアップやナウゼリンの坐剤などとの併用に注意が必要になります。
詳しくは以下の記事にまとめています。
坐薬はおしりに入れるだけ。一見簡単そうですけど、いざ我が子に使おうとすると結構勇気がいりますよね。 私は薬剤師なので、それまでに何度も坐薬の使い方を患者さんに説明していましたが、初めて自分が息子に坐薬を入れ[…]
なお、ワコビタール坐剤は33.5~37℃程度で溶け始めるので、冷所保存とされています。
室温(~30℃)ならギリギリ大丈夫かもしれませんが、夏場の薬局から持ち帰りなどは、何かしらの対策をしたほうが良いでしょう。
また、ワコビタール坐剤は劇薬かつ向精神薬に指定されています。
ワコビタール坐剤の副作用と併用に注意すべき薬
ワコビタール坐剤の報告されている副作用発現率は1.1%程度で、多いのは眠気・ふらつき・下痢などです。
重大な副作用としてTEN・Stevens-Johnson症候群・呼吸抑制などの重大な副作用の報告もありますが、頻度は低いです。
発疹(猩紅熱様・麻疹様・中毒疹様)が出た場合には中止が必要なので、発疹には注意をしておきましょう。
発疹でも問題なく継続することが多いと思いますが、それを自己判断するのは困難ではないかと思います。
また、ヒトヘルペスウイルス 6等のウイルスの再活性化を伴うことが多く、発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃したり長引くこともあり得ます。
連用中に急に量を減らすなどすると離脱症状が現れることがあるので、自己判断での急な中止も控えたほうが良いです。
ワコビタール坐剤は CYP3A等の薬物代謝酵素を誘導するため、併用禁忌・注意の薬が多いのも特徴です。
併用禁忌とされている薬は以下の通り。
ボリコナゾール、タダラフィル(肺高血圧症を適応とする場合)、アスナプレビル、ダクラタスビル、マシテンタン、エルバスビル、グラゾプレビル、チカグレロル、アルテメテル・ルメファントリン、ダクラタスビル・アスナプレビル・ベクラブビル、ダルナビル・コビシスタット、リルピビリン、リルピビリン・テノホビル ジソプロキシル・エムトリシタビン、リルピビリン・テノホビル アラフェナミド・エムトリシタビン、ビクテグラビル・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド、エルビテグラビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド、エルビテグラビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシル、ソホスブビル・ベルパタスビル、ドルテグラビル・リルピビリン
引用:ワコビタール坐剤添付文書
併用禁忌だけで大量にありますが、基礎疾患がない子どもの風邪などで頻回に処方されるような薬はありません。
併用注意とされている薬も多くありますが、その中でも特に併用するケースが多そうな薬だけピックアップします。
これらの薬と併用するケースはありますが、併用していることは必ず伝えておきしょう。
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