坐薬の使い方と注意点【斜めの切り方・2種類なら順番に注意・飲み薬とどちらが早い?】

坐薬の使い方と注意点【斜めの切り方・2種類なら順番に注意・飲み薬とどちらが早い?】

坐薬はおしりに入れるだけ。

一見簡単そうですけど、いざ我が子に使おうとすると結構勇気がいりますよね。

 

私は薬剤師なので、それまでに何度も坐薬の使い方を患者さんに説明していましたが、初めて自分が息子に坐薬を入れるときには上手に出来ませんでした。

 

簡単そうだけど意外と奥が深く、注意点も多い、坐薬の使い方をまとめていきます。

坐薬の基本的な使い方

坐薬の使い方【清潔なベビーオイルを使用すると入れやすいです】

①坐薬を入れようとする前に

坐薬は冷蔵庫に保管するものが多いですが、その冷たさが刺激となって腸が動いて便が出ることもあります。

小さい子の場合はほぼ無理ですが、可能であれば排便後に坐薬を入れるほうが理想的です。

便秘がちな子だと、硬い便が肛門の手前でと栓をしていることもあるのでその場合は便秘の解消が優先です。

 

②坐薬を入れる時

坐薬を入れる前に必ず綺麗に手を洗ってください。

体の左側が下に来るように横向きに寝かせて、膝を曲げるような姿勢にしてから坐薬の尖った方から肛門に入れてください。

 

乳幼児の場合は上向きでおむつ交換の体勢で入れても良いです。

坐薬が見えなくなるまで奥に入れて、少しの間出てこないように押さえてあげましょう。

入りにくい場合はオリーブオイルやベビーオイルをつけるとすっと入れやすくなります。

坐薬の切り方(2分の1と3分の2)と斜めに切る理由

坐薬を「2分の1使用してください」など指示されることがあります。

粉薬などは個人個人に適した量を測って調剤できますが、坐薬をそのように作るのは手間・衛生面・時間などの問題があり現実的ではありません。

 

そのため、どうしても既製品の坐薬を自宅で切ってもらうことになります。

早めに切っておくと衛生的ではありませんので、使用直前に自宅で清潔なハサミやカッターナイフで切るようにしてください。

 

切る目安は投薬時に指導されると思いますが、アセトアミノフェン坐剤「JG」の指導せんでは以下のように書かれています。

※坐薬の形次第で切り方も変わりますが、ほとんどの場合そこまで厳密ではなくても良いと思います。

坐薬の切り方(1/2と2/3)「JG」の指導せんより

 

画像のように斜めにカットする理由は「坐薬が割れにくいから」です。

また、容器から出すとすべって切りにくくなるので、指導せんのように容器ごと切ることを推奨します。

 

カットした後に、先が細くなっている側を使って、底側は次回に残さず捨ててください。

一度入れた坐薬が出てきたら入れ直しても良い?【形が変わったかどうかで判断】

坐薬がどのぐらい吸収されたのかを見た目で判断するのはほぼ無理です。

例えば、「半分ぐらい溶けてるから半分ぐらい効いたかな?」という考えは正しくありません。

坐薬の成分がどれだけ溶けだしているかが重要ですが、それは目で見てもわからないからです。

 

そのため、「坐薬が少しでも溶けているか」を判断基準にするのが一番確実です。

つまり、坐薬がそのままの形で出てきたら、入れなおしても良いでしょう。

 

ある程度坐薬の形が崩れていれば、どれくらい薬が吸収されたのか判断ができません。

使い過ぎにも注意が必要なので、すぐに新しい坐薬を入れるのではなく、少し様子を見たほうが良いでしょう。

 

ただし、坐薬の種類によっては判断が変わることもあります。

処方元の医師・調剤した薬剤師の指示に従ってください。

 

なお、多くの坐薬は10分程度で溶けると言われていますが、体調や体温などでも変化があると思いますので、目安程度に考えましょう。

坐薬を2種類入れるときには順番に注意

坐薬の種類は、坐薬の基剤(坐薬を固めているもの)によって、大きく以下の2つの分類に分けることができます。

  1. 水溶性基剤
  2. 油脂性基剤

 

実際に子どもに使う頻度の高い薬を分けるとこのようになります。

①水溶性基剤
ナウゼリンダイアップエスクレ など
②油脂性基剤
アンヒバ、アルピニー、アセトアミノフェン、ワコビタール、テレミンソフト など

 

必ず注意してもらいたいのは、①と②の両方の坐薬が出ている場合です。

①と②を両方使う場合、必ず「先に①の坐薬」を使って、「30分ほど空けてから②の坐薬」を使ってください。

順番を逆にすると、①の坐薬の主成分が②の坐薬の基剤に溶けてしまって、十分な効果が出なくなってしまいます。

 

ちなみに良く見かけるのは、①ナウゼリンやダイアップ坐剤+②解熱の坐剤(アンヒバなど)の組み合わせです。

繰り返しになりますが、必ず①を先に使って、30分程度空けてから②を使ってください。

 

また、水溶性基剤か油脂性基剤かで大まかな保管方法も変わります。

 

①水溶性基剤
温度で溶けるのではなく、腸内の水分と反応して溶ける
保管は室温(30℃以下)ならで問題なく持ち歩きも容易
②油脂性基剤
人の体温以下の温度でも溶けるので、保管には温度管理が重要(冷所保存)。

夏場の室温や、それ以外の時期でも直射日光が当たる場所では容易に溶ける。
一度溶けた坐薬は期待した効果が出ない可能性があるので、使ってはいけない。

坐薬が飲み薬よりも早く吸収されるとは限らない

基本的に飲み薬は、口から飲んだ後に腸まで移動してから吸収されて血中に入ります。

対して坐薬の場合は、直腸から直接吸収されてすぐ血中に入ります。

そのため色々と過程を飛ばせる坐薬のほうが基本的に早く効くはずですが、一部例外もあります。

坐薬より飲み薬のほうが効果が早い例

①ナウゼリン(ドンペリドン)

例えば、吐き気止めとして使われる”ナウゼリン”(成分名:ドンペリドン)の場合は飲み薬の効果は約30分、坐薬だと60分以上かかると言われています。

例外的に腸に着く前に効果が出てくるのがその理由です。

 

吐き気止めとして考えた場合、吐き気がある時に飲み薬を飲むのは辛いので、効果が遅かったとしても坐薬のほうが使いやすいかもしれません。

※なお、ナウゼリンは副作用の懸念から子どもへの使用頻度が減っている印象があります。

②アセトアミノフェン

解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン坐薬(アンヒバなど)も飲み薬のほうが早く効果が早く出るというデータがあり、もっとも血中濃度が上がる時間で比較すると約1時間の差があります。

坐薬と飲み薬は結局使い分けが重要

ほんの少しでも早く効果を出したいなら、上記の2例の場合は飲み薬にしたほうが良いでしょう。

ただし、【わずかに早く効く】だけで、最終的な効果としてはほぼ差がないと思います。

 

そのため、気持ち悪いなら坐薬、下痢が続いているなら飲み薬、など使いやすい方を優先すれば良いと思います。

坐薬なら起こさずに使えるのも大きなメリットです。

その坐薬、本当に使って大丈夫ですか?

最後になりますが、坐薬にはたくさんの種類があります。

「兄弟の坐薬を間違って入れてしまった」、「解熱の坐薬と間違えて吐き気止めの坐薬を入れてしまった」という相談を受けることがあります。

大人の坐薬を子どもに間違えて使ってしまったということが実際に起きています。

必ず使用前に「誰に使う何の坐薬なのか」を再度確認してください。

 

間違えて上のお子さんの坐薬を使って、いつもの2倍の量になってしまうようなケースも見かけます。

数年前にもらった坐薬だと、今の体重に適していない量かもしれません。

ずっと昔にもらった坐薬を使ってしまい、使用期限が切れていることもあります。

いつどこで調剤してもらったものかがわかるようにはしておきましょう。

 

「どんな目的の坐薬か、適切な量か、古くなっていないか、誰に処方された薬なのか」しっかり確認してから使うようにしてくださいね。

 

子どもの薬の使い方全般についてはこちらの記事でまとめています。

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