「てんかん」は小さい子どもにも起こることがあり、発作を目の当たりにすると不安を感じてしまうことも多いと思います。
また、治療薬の使用に当たっても注意点が少なくないため、治療を続ける不安を口にする方も多いです。
子どものてんかんについて、簡易的に説明します。
てんかんとは【原因や頻度】
てんかんとは、てんかん発作を起こす持続的要因がある脳の障害です。
てんかんが起こる原因によって、特発性てんかんと症候性てんかん2つに分けられています。
特発性てんかんは検査によっては異常が見つからず、原因がはっきりとしないてんかんです。
その多くは遺伝が原因ではないとも言われています。
症候性てんかんは、脳の障害などが原因です。
低酸素や脳炎、脳出血などなどが原因となることがあります。
てんかん発作が起きている時に脳波の測定をすることは、てんかんの診断にとても重要です。
てんかんは100人から200人に1人程度は見られる疾患で、赤ちゃんから高齢の方まで起こることがあります。
特に生後1年未満で高く、それから3歳ぐらいまで、そして高齢者でも多いとされます。
てんかんの原因や発作の種類によって、てんかん治療を続ける期間も異なります。
あくまで一例ですが、以下のようなことが多いです。
- 思春期頃には発作がなくなることもあります。
- 発作と脳波検査異常が数年無い場合などに、ゆっくり薬を減量し問題なければ薬の中止が考慮されます。
- 発作が再発することもありますが、中止から3年以内が多いとされており、定期的な検査も大切になります。
てんかん発作の種類
てんかん発作にはいくつもタイプがあり、一概にまとめることは出来ませんが、てんかん患者さん毎にほぼ一定の発作が繰り返し起こります。
例えば、以下のようなタイプがあります。
- 間代発作:手足がピクピク動く
- 強直発作:手足がつっぱり全身に力が入った状態
- 強直間代発作:意識を失い強直発作後に間代発作が起こる
- 欠神発作:短時間の意識消失が起こる
- ミオクロニー発作:前進や手足が一瞬ピクッとする
- 複雑部分発作:色々な症状が同時に起こる
てんかんの原因は脳にありますが、興奮系が強くなる、もしくは抑制系が弱くなるのどちらかにより、脳の過剰興奮状態になります。
それによって使用する薬も変わります。
てんかん=けいれんではない
てんかんとけいれんを混合されていることがありますが、けいれんが起きたらてんかんというわけではありません。
子どもに多いけいれんとしては「熱性けいれん」がありますが、熱性けいれんとてんかんは原因が異なり、治療も同じではありません。
「熱性けいれん」という疾患はご存知ですか?日本での有病率は10%程度とそこまで低いわけではありませんが、知らない保護者の方もおられます。 また、熱性けいれんについての知識があったとしても、実際に目の当たりに[…]
熱性けいれんだと思っていたらてんかんだったことや、逆のケースもあるかもしれません。
速やかに確定診断をすることは困難な場合もありますが、発作時の状況を伝えることは診断の助けになるでしょう。
熱性けいれん以外にも、顔の筋肉がピクピクするチックなどのけいれんや、手足が動く羽ばたき振戦、下痢に伴うけいれん、睡眠時のびくつきなども間違われやすいとされます。
てんかん発作時にしておきたい心構えと救急車の判断
発作が起きたら、衣服を緩めて気道が詰まらないようにしたり、近くにある危険なものを避けましょう。
嘔吐することもあるので、窒息予防のために横向きにしてあげましょう。
発作時の状態を記録することは診断にも役立ちます。
気が動転してしまうと、正確に覚えておくことや伝えることが難しいかもしれません。
スマホで動画を撮影すれば、発作時間や経過などが正確に確認できます(外では周りからの視線が気になるかもしれませんが、大切なことです)。
メモをする場合は、以下の内容を中心にしましょう。
- 発作が始まったタイミングに何をしていたのか、体調はどうだったか
- どのような発作だったか(発作の始まりや、発作中と発作後の様子)
また、これまでの怪我や熱性けいれん歴などについても確認されることもあるので、母子手帳も持っていると便利です。
発作の状態や、状況により救急車を呼んだほうが良いこともあります。
以下の場合は、救急車を呼びましょう。
- 発作が5分以上続く
- 発作が繰り返し起こる
- 顔色が悪い・呼吸が不規則な状態
- 周りがどうしたら良いのかわからなくなってしまった場合
てんかん治療薬について
てんかん治療薬は、脳の興奮系が強くなっているのか、抑制系が弱まっているのか、どのような発作が起きているかなどで薬の種類が変わってきます。
てんかん発作時にどのような発作かを確認することが重要な理由はそのためです。
子どものてんかん治療に使われる薬としては以下のようなものがあります。
- バルプロ酸ナトリウム(デパケン、セレニカR)
- カルバマゼピン(テグレトール)
- ガバペンチン(ガバペン)
- トピラマート(トピナ)
- ラモトリギン(ラミクタール)
- レベチラセタム(イーケプラ)
- フィコンパ(ペランパネル)
それぞれの薬についてリンク先で個別に説明しています。
てんかん治療薬は、基本的に眠気やふらつきなどの副作用が出やすいです。
また、薬の種類ごとに注意すべきこと(副作用の種類や併用薬の注意)も異なります。
医師・薬剤師の指示に従って、適切な治療をお願いします。
また、てんかん治療薬は苦味があるものが多く、上記のリンク先には味や飲み方についても少し書いています。
当然、飲み薬は飲めなければ効果はありません。
薬を渡して終わりではなく、きちんと薬を飲んでもらうためのアドバイスが必要になることも多々あります。
特に小さい子どもは「薬を飲む理由」を理解できないため、「不味ければ飲まない」というシンプルな行動をします。
薬の味の情報が足りていないため、現場の薬剤師などが味見をしたりしながら「嫌がらず飲める工夫」を模索しています。
薬の影響が出ないように配慮はしていますが、自分にとって不要な薬を飲みたいと思っているわけではありません。
製薬メーカーさんは開発の段階で味見も繰り返していると思いますし、もっと多くの情報を提供してもらいたいと思います。
てんかん治療についての私見
てんかんは患者さんやその家族にとって、「いつてんかんが起こるのか不安」などの問題から強く精神的負担感を感じることがあります。
また、治療薬による副作用を不安に感じてしまい、てんかん発作よりも治療薬の不安のほうが大きくなってしまう方もおられます。
薬での治療をする場合、病院でも定期的な診察や検査などで、リスクを最小限にするように努めていますし、薬剤師もその前兆がないか聞き取れるよう努めています。
副作用を恐れることにより、自己判断での減量や中止により発作が起こらないように、適切に治療をしてもらいたいと思います。
特に子どものてんかんは、個々の差はありますが、成長により自然と治っていくことが多い病気でもあります。
適切な治療により、発作を起こさない生活を目指しましょう。