こどもに抗生物質が処方される場合、ワイドシリンやセフェム系、マクロライド系の使用が多いです。
しかし、症状によっては、トスフロキサシン(オゼックス)という抗生物質が使われることがあります。
※正確に言うと、トスフロキサシンは抗生物質ではなく抗菌薬ですが、わかりやすくするために抗生物質で統一しています。
トスフロキサシンは、基本的に軽症例で使うことは少ない薬です。
小さい子どもにとっては、耐性菌を増やさないためにも積極的に選択される抗生物質ではありませんが、他に選択肢がない場合などに処方されることもあります。
耐性菌を生み出さないような注意が必要な薬なので、より十分な効果を出すために注意すべきこともあります。
トスフロキサシンの味や飲みあわせ、副作用などについて紹介します。
トスフロキサシン(オゼックス)について【味は良い】
トスフロキサシンは、ニューキノロン系に分類される抗生物質(正しくは抗菌薬)です。
いくつかのニューキノロン系は関節障害の可能性があるとされ、基本的に子どもへはあまり使用されません。
しかし、トスフロキサシンや小児用バクシダールなどの一部のニューキノロン系は関節障害の影響が少ないとされ、小児用製剤も開発されています。
使用例は限られますが、これまでトスフロキサシンで大きな問題も起きていません。
15%細粒剤の小児肺炎試験及び小児中耳炎試験では、関節痛が0.85%(2/235例)に認められた。しかし、いずれも症状は軽度であり、翌日には消失している。そのうちの1例は発現当日にMRI検査を行ったが、異常所見は認められず、動物実験で認められたような関節障害は発現していなかったものと考えられる。また、小児マイコプラズマ肺炎試験においては関節に関連する副作用は認められなかった。
引用:オゼックスインタビューフォーム
トスフロキサシンの飲み薬は以下の4種類に分けられます。
- トスフロキサシン細粒小児用15%150mg各種
- トスフロキサシン錠75各種
- トスフロキサシン錠150各種
- オゼックス錠小児用60mg
オゼックス錠小児用60mgのみ、先発品1種類しかありません。
オゼックス錠小児用60mgは錠剤のサイズが小さく飲みやすい薬ではありますが、1回で何錠か飲まなければいけない場合もあります。
トスフロキサシン細粒は先発品もジェネリックも飲みやすい味の薬で、苦味はまったく感じません。
私の覚えている範囲では、飲めなかったお子さんは一人もいません。
極端に飲みにくい味になるわけではありませんが、ジュースとは混ぜないほうが飲みやすいです。
※別々に飲んだほうがそれぞれ美味しいという印象
なお、同成分の目薬としてオゼックス/トスフロ点眼液もありますが、目薬は含有成分量も少ないので、適切に使えていれば影響はほとんどないでしょう。
とはいえ、一部の目薬で全身性の影響が出ているものもありますので、適切に使うことはとても大切です。
併用注意薬とカルシウムや鉄分との飲み合わせ
トスフロキサシンのインタビューフォームには、以下の薬は併用注意とされています。
テオフィリン アミノフィリン製剤 | テオフィリンなどの血中濃度を上げる可能性あり |
フェニル酢酸系及びプロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤 | けいれんがあらわれることがある |
アルミニウム、マグネシウムを含有する制酸剤、鉄剤、カルシウム含有製剤 | トスフロキサシンの効果が減弱するおそれがある |
テオフィリンは有効域が狭いため注意が必要です。
フェニル酢酸系及びプロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤の中で、子どもに最も多く使われそうなのはイブプロフェンだと思います。
子どもの解熱鎮痛剤は、アセトアミノフェン(カロナールなど)が広く使われている印象ですが、アセトアミノフェンは大丈夫とされています。
トスフロキサシン単独でも、けいれんの報告があるので、過去に経験のある方は特に注意しましょう。
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マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、鉄などの金属を含む医薬品とは服用時間をずらしたほうが良いと考えます。
一般に、トスフロキサシンなどのニューキノロン系を飲んでから2時間以上空けて金属を含む医薬品を飲むか、金属を含む医薬品を服用後3~6時間空けてからニューキノロン系を飲めば問題ないとされます。
子どもにも使われる金属を含む医薬品としては、インクレミンシロップなどの鉄剤、酸化マグネシウムなどの便秘薬などが多い印象です。
併用しなければならない場合、トスフロキサシンは食前でも食後でも良いので、先にトスフロキサシンを飲む方が現実的だと思います。
カルシウムや鉄分などを多く含む飲食物との相互作用については、どれほどの影響があるのかははっきりしていません。
トスフロキサシンのインタビューフォームには牛乳や乳製品に関する記載はありませんが、同じニューキノロン系のシプロフロキサシンという薬と比較すると、カルシウムによる影響はトスフロキサシンのほうが大きいとされています。
そしてシプロフロキサシンは、牛乳、ヨーグルトと服用した時のAUC(薬の量の指標)が36%、47%低下の報告があります。(参考:シプロキサン錠インタビューフォーム)
耐性菌を増やさないためには、トスフロキサシンの効果をしっかりと持続させる必要があります。
そのため、牛乳や乳製品・ミネラルウォーターとはしっかりと時間を空けるべきだと考えています。
食事でもカルシウムなどは摂取しているので、ゼロにすることは出来ません。
だからこそ、飲み物ぐらいは気をつけたほうが良いと考えています。
ちなみに、海産物の乾物(干しエビ、海苔など)や、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)などは多いとされています。
併用注意には記載がありませんが、オゼックス小児用細粒をムコダインシロップ(液体)と混ぜると、3日後にはトスフロキサシンの残存率が7割程度になっていたとインタビューフォームに記載があります。
飲む直前に混ぜる場合は影響がないようです。
ムコダインドライシロップ(粉薬)も影響がないと記載されています。
副作用は下痢や嘔吐が多そうです
15%細粒剤の製造販売後の使用成績調査において、総症例数759例中、21例(2.77%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。その主なものは、下痢10例(1.32%)、嘔吐8例(1.05%)等であった(再審査終了時)。
引用:トスフロキサシンインタビューフォーム
他の多くの抗生物質と同様に下痢や嘔吐などの消化器系の副作用が比較的多く報告されています。
個人的には、インタビューフォームの数値よりも下痢の頻度は高い印象があります。
便秘や眠気、発疹などの副作用の報告もあります。
前述のように、関節障害やけいれんなどにも注意が必要です。
トスフロキサシンは使用頻度が高くありませんが、小児マイコプラズマ肺炎でマクロライド無効に場合などに使われることはあります。
せめて耐性菌を増やさないように、カルシウムや鉄分などとの同時接種は控えるべきだと考えています。