インフルエンザの治療薬といえば「タミフル」が最初に思いつく方も多いのではないでしょうか。
今やインフルエンザ治療薬の種類も増えており、それぞれ特徴を持っています・
インフルエンザの主な治療薬について比較・説明していきます。
インフルエンザ治療薬【飲み薬:タミフル、ゾフルーザ】
タミフル(オセルタミビル)
インフルエンザ治療薬の中で一番知名度があり、カプセルタイプと粉(ドライシロップ)タイプがあります。
現時点では、タミフルはインフルエンザの治療薬では唯一の粉薬です。
そのため、乳幼児に使えるのは、点滴薬のラピアクタ、ネブライザーを使うイナビル吸入懸濁用、タミフルドライシロップの3択です。
しかし、ラピアクタは針を刺す必要があるため積極的には選択されず、イナビル吸入懸濁用はまだ小児科学会からもデータ不十分で評価保留とされています。
日本小児科学会が推奨しているのは、タミフル(オセルタミビル)ドライシロップです。
2019/2020 シーズンのインフルエンザ治療指針(外部リンク)
一時期タミフルを飲むと異常行動が起こると大きな話題になり、ここ10年ほどは10代へは原則使用しないこととされていました。
しかし、タミフルを飲んでも飲まなくても異常行動を起こす可能性は変わらないというデータが十分に揃ってきたので現在では再開になっています。
参考:抗インフルエンザウイルス薬の安全対策について(厚生労働省)
お子さんがインフルエンザになった際には、薬を飲む飲まないに関わらず、異常行動に気をつけましょう。
治療は1日2回5日間薬を続けます。
自費になりますが、予防投与として1日1回10日間薬を続けるという使い方もあります。
予防投与は、原則的には重症化しやすい患者さんが対象になります。
ドライシロップには苦味があるので、ココアの粉末や練乳などに混ぜて飲みやすくしてあげることも検討しましょう。
2020年時点でインフルエンザ治療薬でジェネリックがあるのはタミフルのみです。
薬代も大きく変わるので、検討してみても良いでしょう。
タミフルについては、以下の記事でもう少し深く書いています。
タミフルと言えば、一時期子どもの異常行動につながると言われており、あまり印象が良くない方もいるかもしれません。しかし、インフルエンザ治療薬の使用の有無に関わらず異常行動が報告されており、インフルエンザであること自体が異常行動のリスク[…]
ゾフルーザ:新作用機序の新薬
2018年発売の新薬で錠剤と顆粒があります。
1回飲むだけで治療が終了するので簡単さでは圧倒的優位です。
現状では、顆粒は発売されておらず、20kg以上の人にしか使えません。
今までのインフルエンザ治療薬とは作用機序が違う上に、一回飲むだけで治療が完了する夢のようなインフルエンザ治療薬。と最初は考えていましたが、蓋を明けてみたらデータがほとんど集積されないままの発売でした。
日本小児科学会の「2019/2020 シーズンのインフルエンザ治療指針」 では、「12 歳未満の小児に対する同薬の積極的な投与を推奨しない。」と評価されています。
耐性化の懸念など、色々と話題になっている薬でもあります。
以下の記事で、ゾフルーザについてまとめています。
1回飲むだけでインフルエンザ治療が終わるという簡便さもあり、ゾフルーザは発売初年度から全国的にかなり使用されていました。しかし、「ゾフルーザはもっと慎重に使用すべきだ」という意見も多く、医療関係者の中でも意見は分かれています。[…]
インフルエンザ治療薬【吸入薬:リレンザ・イナビル】
【吸入薬】リレンザとイナビルに共通する特徴
- 気管支攣縮(呼吸をした際の空気の通り道である気管支がけいれんして細くなってしまう)の報告があるので、気管支ぜんそくなどの患者さんには推奨されていない。
- 乳製品アレルギーがある方は、アナフィラキシーの可能性があるので注意したほうが良い。
- 5歳ぐらいから使用は可能だが、5歳の子が上手く吸えるかどうかは正直疑問があります。
吸える能力があからといって、きちんと言うことを聞いてくれるとは限りません。
リレンザ
吸入の手技が少し複雑なので、使い方を理解するのに少々時間がかかります。
高齢の方に頑張って説明したけど、どうしても使えなかったという苦い経験もあります(吸える肺活量はありました)。
少し癖がある吸入器ですので、わかりにくければ動画などで確認した方が良いかもしれません。
YouTubeですが、参考動画としてはこちらなどがあります。→リレンザ吸入方法・子供用
治療は1日2回5日間薬を続けます。
1回2吸入する必要があるので、慣れるまでは5分ぐらいは時間がかかるかもしれませんね。
自費になりますが、予防投与として1日1回10日間薬を続けるという使い方もあります。
薬の使用回数はタミフルと同じです。
少し手間がかかるので、同じ吸入でもイナビルの方が楽ではあります。
ただし、リレンザはイナビルと比較して、二峰性の発熱(一度熱が下がってから、再発熱すること)の割合が少ないと言う報告があります。
参照:Comparison of the clinical effectiveness of zanamivir and laninamivir octanoate for children with influenza A(H3N2) and B in the 2011–2012 season
二峰性の発熱に関しては、特に差がないという報告もあります。
インフルエンザ治療薬の中で、パウダータイプの吸入薬の「リレンザ」は何歳から使えるのかはっきりしていません。何歳ぐらいから使えるのか、メーカーからの情報などから考えてみたいと思います。 私としては、10歳未満[…]
イナビル
一度に4回吸入するだけで終わる薬なので、時間に余裕があれば、薬をもらったその場で吸って終わりにすることも可能。
吸入の手技はリレンザよりも単純だが、1回失敗することによる薬の吸入量のロスが大きいので注意が必要です。
薬局で説明を受けながら吸えれば、うまく吸えてるかどうかを見てもらえるので安心ですね。
予防の場合は、1回もしくは2回に分けて吸うといった使い方になります。
お子さんや高齢の方が使う場合は、練習用の吸入器で音がなるのを確認してから使った方が良いと考えます。
かなり吸い残しが多い印象があります。
インフルエンザ治療薬の「イナビル」は幅広く使われており、子どもにも使われることがあります。添付文書上は特に何歳から使えるのかは書いてありませんが、吸入する力が弱いと上手く吸えないかもしれません。 何歳ぐらい[…]
2019年にイナビル吸入懸濁用という製品も発売になっています。
こちらは小さいお子さんでも吸え、病院内で使用できるというメリットもあります。
イナビル吸入懸濁用160mgセットにの既存のイナビル吸入粉末剤との違いや、多剤と比較した時のメリット・デメリットについて考えています。まだ実際に使用されている例が少ないため、推測しか出来ていない内容もあることはご了承ください。[…]
インフルエンザ治療薬【点滴:ラピアクタ】
ラピアクタ
インフルエンザ治療薬の中で、唯一の点滴薬です。
確実性は高いですが、コストが高く、点滴なので痛みもあります。
多くの方にとって、積極的に使うものではないように感じています。
他の治療薬よりも早くウイルスを退治するという報告もありますが、熱が早く下がると言うわけではなさそうです。
参照:Clinical and virologic effects of four neuraminidase inhibitors in influenza A virus-infected children (aged 4-12 years): an open-label, randomized study in Japan.
2019年時点で、唯一の点滴用インフルエンザ治療薬ラピアクタについての紹介です。薬局で扱うことはない薬ですが、既存のその他の治療薬と比較した際のメリットや、副作用などの注意点についてまとめていきます。[adcode]ラピアク[…]
インフルエンザ治療薬簡易一覧表
タミフル | ゾフルーザ | リレンザ | イナビル | ラピアクタ | |
成分名 | オセルタミビル | バロキサビル | ザナミビル | ラニナミビル | ペラミビル |
投与方法 | 飲み薬 | 飲み薬 | 吸入薬 | 吸入薬 | 点滴薬 |
用法用量 | 1日2回 5日間 | 1回 | 1日2回 5日間 | 1回(4吸入) | 1回 |
薬価 (成人) | 2720円 GE:1360円 | 4789円 80kg以上:9578円 | 2942円 | 4279.8円 | 6216円 |
80kg以上の成人の場合、タミフルのジェネリックの【オセルタミビルカプセル75mg「サワイ」】とゾフルーザの薬価は7倍以上違います。
インフルエンザ治療薬【番外編:麻黄湯】
麻黄湯については別で記事にしてますので、こちらをご覧ください。
インフルエンザの治療に漢方薬が使われることがあります。その中でも、麻黄湯が最も使われている漢方薬という印象です。麻黄湯などの漢方薬が処方されると「本当に効くんですか?」と聞かれることも多いですが、私は麻黄湯はインフルエンザに効果[…]
飲みにくいことを除けば、個人的には良い選択肢だと考えています。
自分が選ぶならオセルタミビルか麻黄湯
ここまで紹介した薬の中で、自分や家族(子どもも含む)がインフルエンザになった時に使いたいと考える薬はタミフルもしくは麻黄湯です。
自分が仕事を気兼ねなく休めるなら、麻黄湯を使うか【薬を飲まないで寝ている】という選択肢を選びたいです。
小さい子どもはハイリスク群でもあるので、自分の子どもがインフルエンザになった場合は、(様々な条件が満たされれば)タミフルドライシロップの使用を希望すると思います。
オセルタミビルはインフルエンザ様症状での回復を1日早めるという報告もありますし、インフルエンザ治療薬の中では医療費を最小限に抑えることが出来ます。
ドライシロップの場合苦み対策は必要になるかもしれませんが、インフルエンザ治療薬の中では最も妥当な選択だと考えています。
皆さんはタミフルドライシロップをお子さんに飲ませたことはありますか?自分で飲んだことがある方には理解していただけると思いますが、美味しいと言えるような味ではないのは確かです。インフルエンザの治療薬は劇的に効果が出るわけではな[…]
自分や家族の病歴なども加味しての判断であり、病歴などによってはどの治療薬も選択肢に入ると思います。
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インフルエンザ全般については、以下の記事をご覧ください。
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