インフルエンザ治療薬の中で、パウダータイプの吸入薬の「リレンザ」は何歳から使えるのかはっきりしていません。
何歳ぐらいから使えるのか、メーカーからの情報などから考えてみたいと思います。
私としては、10歳未満のお子さんは上手く吸えない可能性があると考えています。
また、リレンザは使い方が少し難しく、服薬指導に時間がかかる薬でもあります。
吸入方法については動画を参考にすることをおすすめしますが、簡単に触れておきます。
リレンザは何歳から使える?
リレンザの添付文書には、5歳からの使用を前提としています(4歳未満の安全性は確立していない)。
しかし、私にはすべての5歳児がリレンザを適切に使えるとは思えません。
5歳から使えると書いてあっても、適切に吸入出来なければ使えていないのと同じです。
リレンザは適切に吸入することで効果を発揮します。
吸入する力が十分でなければ、粉のほとんどは気道まで届かず、口の中に残ってしまうでしょう。
吸入薬は飲んでいるわけではなく、吸うことで効果を発揮します。
吸うことでインフルエンザの主な増殖部位の気道粘膜に直接届き、その結果として効果が出ます。
リレンザの中身を飲み込んでも、期待した効果は出ません。
吸入薬について
吸入するデバイスや意図は異なりますが、吸入ステロイドのパウダータイプは5歳ぐらいから使えると書かれていることもあります。
パウダータイプの吸入は、吸入タイミングを合わせる必要がないので、扱うのは簡単なものが多いですが、吸気速度が不十分だときちんと吸えず効果が不十分になる可能性があります。
対して、エアータイプの吸入は吸気速度がパウダータイプより低くても吸えますし、吸入補助具もあります。
ただし、「押す」と「吸う」のタイミングを合わせるのが小さいお子さんには少々困難と言えます。
リレンザを吸入できるかどうかは、インチェックという医療機器で確認が可能ですが、あまり使われていない印象があります。
また、ディスクへラー用のアダプターで吸気速度が30L/min以上あれば、リレンザが吸入できるようです。
なお、リレンザではなくイナビルという違うインフルエンザ吸入薬の情報ですが、5歳程度では適切に吸えないのではないかと思わせる情報もあります。
イナビルを吸入の練習をせずに使った場合、10歳未満は63.6%、10歳以上も10%以上が適切に吸入できない可能性が指摘されています。
参考:ラニナミビルを投与前に行う吸入力確認及び吸入練習の有効性について
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横から見ているとしっかり吸えているようでも、実際にきちんと吸入出来ているかの判断は難しいです。
「練習では出来たのに、いざやってみると吸えなかった」という例もあります。
以前は小学生ぐらいから吸えるかなと考えていましたが、今では10歳ぐらいまでは上手く吸えない可能性が高いと考えるようになりました。
リレンザの吸入の使い方【予防投与もあり】
リレンザをインフルエンザ治療に用いる場合、1回2ブリスター(1ブリスター毎に吸入)を、1日2回5日間吸入します。
子どもと大人は使用量に違いがありません。
なお、リレンザは下記の条件付きで予防投与も認められています。
本剤を予防に用いる場合には、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする。
(1)高齢者(65歳以上)
(2)慢性心疾患患者
(3)代謝性疾患患者(糖尿病等)
(4)腎機能障害患者
引用:リレンザ添付文書
予防の場合は、1回2ブリスターを1日1回10日間吸入です。
気管支ぜんそくなどの呼吸器疾患がある方には、気管支のけいれんリスクがあるため推奨されていません。
また、呼吸器疾患用の吸入薬がある方は、リレンザ使用前に呼吸器疾患用の吸入をするようにして下さい。
吸入するだけなので簡単そうに感じてしまいますが、実際には吸入器の操作が少し複雑です。
リレンザの使い方については、文字だけでの説明は難しいので、指導せんを見ながら使うことをおすすめします。
2点だけリレンザのブリスターに穴を空けた後について注意させてください。
- 容器を傾けると粉が落ちるので、十分量吸えません。
- 吸入口に息を吹きかけると粉が飛び散ってしまいます。
この2つをしてしまうと、1吸入分は取り返しがつかなくなるので、必ず注意をお願いします。
リレンザの副作用【下痢や嘔吐がわずかにある】
リレンザは全身移行性も低く、インフルエンザ治療薬の中では比較的副作用頻度が低い印象があります。
<成人>
国内臨床試験において、総症例 291 例(40mg/日 111 例、吸入・鼻腔内噴霧 40 例を含む)中、50 例(17.2%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告された(承認時)。
使用成績調査及び特定使用成績調査 5393 例中、68 例(1.3%)に副作用が報告された。その主なものは下痢 13 例(0.24%)、発疹 7 例(0.13%)、悪心・嘔吐 7 例(0.13%)、嗅覚障害 6 例(0.11%)であった(再審査終了時)。
<小児>
国内臨床試験において、総症例 145 例中、3 例(2.1%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告された(承認時)。
特定使用成績調査 784 例中、13 例(1.7%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告された(再審査終了時)。
インフルエンザ治療薬は子どもの異常行動についての心配されることが多いですが、インフルエンザ治療薬の使用の有無に関わらず起こりうることがわかっています。
薬の使用の有無に関わらず、発熱後2日程度は子どもを一人にさせないことが大切だと考えています。
乳製品アレルギーの人は念のため注意
リレンザには乳糖が含まれているので、乳製品アレルギーのある人には注意が必要です。
ごく微量の乳製品でもアレルギーが出る方は、使用を控えたほうが良いでしょう。
実際に、リレンザによってアナフィラキシーの疑いが出た患者さんもおられるようです。
代替薬が無難でしょう。
私が知っている範囲では、軽度の乳製品アレルギーの方でリレンザを問題なく使えた方はたくさんおられます。
しかし、乳成分を使っていないタミフルDSなどを使用するほうが無難でしょう。
タミフルは先発とジェネリックで、乳糖の有無が変わります。
吸入ほど気にする必要はないとされますが、重度のアレルギーの方は気にしたほうが良いかもしれません。
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リレンザについて【まとめ】
リレンザはエビデンスのあるインフルエンザ治療薬ですが、正しく吸入出来なければ意味がありません。
10歳未満は6割以上が上手く吸入できない可能性もあるので、個人的には10歳ごろから使える吸入薬だと考えています。
「吸えなくても自然と治るから大丈夫」という意見もあります。
確かにハイリスク患者を除けば、インフルエンザ治療薬の必要性は低いでしょう。
しかし、そのスタンスなら、わざわざ医療費を使って薬を処方しなくても良いと考えます。
「苦くて飲めない」などの問題は、薬剤師の服薬指導でかなりの範囲フォロー出来ると考えていますが、吸入する力が足りていないのはフォロー出来ません。
副作用頻度が低いのは安心ですが、10歳未満は基本的にオセルタミビルの粉薬の使用が理想的だと考えています。
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