インフルエンザ疑いで受診は必須なのか【咳と熱があれば8割陽性の可能性】

インフルエンザ疑いで受診は必須なのか【咳と熱があれば8割陽性の可能性】

子どもがインフルエンザの疑いがあれば受診すべきかどうか、薬が必要なのかどうか、色々と意見があります。

5歳未満の子どもを含むハイリスク患者さんについては別ですが、インフルエンザ関連の受診は少々過剰ではないかと感じることも多いです。

 

「過剰だからいけない」というつもりはありませんが、中には「受診しなくても大丈夫そうなのに」と感じることもあります。

インフルエンザ受診について考えてみたいと思います。

インフルエンザ合併症ハイリスク患者さんは受診しましょう

個人的にはインフルエンザの疑いがあったとしても、絶対に受診する必要があるとは思っていません。

多くの場合、自然に治癒する病気だからです。

 

しかし、以下のインフルエンザ合併症のリスクが高い「ハイリスク患者」に該当する方は、受診をおすすめします。

  • 5歳未満の子供(特に2歳未満)
  • 65歳以上
  • 慢性疾患のある方(呼吸器、心血管など)
  • 免疫抑制のある人
  • 妊娠中または産後の女性(出産後2週間以内)
  • 長期アスピリン療法を受けている18歳以下の人
  • アメリカインディアン/アラスカ先住民
  • BMI40以上
  • 特別養護老人ホームやその他の慢性ケア施設の居住者

参考:Antiviral agents for the treatment and chemoprophylaxis of influenza — recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP).

例えば、川崎病の患者さんの中には長期アスピリン療法中の方もおられると思います。

 

もちろんハイリスク患者ではなくとも、受診しても問題ありません。

ただし、インフルエンザに関する以下のことは知っておきましょう。

  • インフルエンザはほとんどの場合、自然に治癒する
  • インフルエンザの検査は精度が高くない
  • インフルエンザを8割の確率で見分ける方法がある
  • インフルエンザ治療薬は発熱を1日早める程度の効果
  • インフルエンザでは使わないほうが良い薬がある
  • インフルエンザの発症予防や重症化予防はまずワクチンから

これらの内容を順に説明します。

インフルエンザ疑いでの受診は必須なのか

インフルエンザは自然に治癒する

まず前提として、インフルエンザはほとんどの場合自然に治癒します。

そのため、ハイリスク患者さんや合併症が疑われるような方を除き、インフルエンザには検査も治療も必要ないというのがインフルエンザの世界標準とも言われます。

 

つまり、「インフルエンザは一部の方を除いて風邪と同様の対応で良い」とされています。

 

だからと言って、熱が下がった翌日に外出するのはインフルエンザを拡げる要因になります。

基本的には風邪でもインフルエンザでも発熱後数日間は感染を拡げないように努めたほうが良いと考えています。

 

とはいえ、インフルエンザかどうかで休ませる日数も少し変わるかもしれません。

ただし、インフルエンザの迅速検査の精度は高いとは言えません。

インフルエンザの検査は精度が高くない

インフルエンザに感染していたとしても、4割程度は迅速検査で陰性になります。

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そのため、陰性だとしても、インフルエンザとの診断になることもあります。

 

インフルエンザと診断してもらうためには受診が必須です。

学校を欠席扱いにしたくない、インフルエンザでないと休めない、などの場合は受診するしかありません(※これがそもそもの問題ですが)。

 

しかし、診断がなくともインフルエンザ疑いとしてしっかり休息出来るのであれば、絶対に受診する必要があるとは言えません。

参考程度に考えてほしいとことですが、受診をしなくてもインフルエンザを高確率で見分ける方法もあります。

8割の確率で誰でもインフルエンザを見分ける方法

インフルエンザの流行期に37.8℃以上の熱があれば、インフルエンザである確率は77%ほど、37.8℃で咳もあれば、79%はインフルエンザだったという報告があります。
参考:Clinical signs and symptoms predicting influenza infection.

 

直接比較されているわけないので参考程度ですが、インフルエンザ迅速検査の精度(6~7割)よりも、「37.8℃以上+咳」のほうが精度が高いという結果です。

 

この条件に当てはまるからと言って「インフルエンザと診断された」とはもちろんなりませんし、37.7℃だからインフルエンザではないとも言えません。

あくまで目安の一つだと考えてください。

 

ただし、インフルエンザ流行期に熱があればインフルエンザだと考え、それなりの対応を取ることは悪いことだとは思いません。

でも医師の診断がないと、インフルエンザ治療薬はもらえないですよね?
しか
それは事実ですが、治療薬が必須とも言えません。

インフルエンザ治療薬の必要性

インフルエンザ治療薬を使用することで解熱が1日早くなることは期待できますが、重症化予防効果やインフルエンザ脳症を防ぐ効果などは証明されていません。

 

そして、薬によっては嘔吐や下痢などの副作用頻度も少なくありません。

熱を早く下げたいと思うのは当然の気持ちでもありますが、高熱で苦しむ中、受診して治療薬を使うべきかどうかは考える価値はあります。

 

なお、インフルエンザ時の異常行動については、治療薬の有無に関わらず発現しており、明確な因果関係があるとは言えません。

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解熱剤や痛み止めは市販薬(小さい子の場合坐薬もあり)にもありますので、インフルエンザ治療薬使用の有無は関係なく使用出来ます。

ただし、インフルエンザの際には使用を避けたほうが良い成分もあります。

インフルエンザでは使わないほうが良い薬がある

インフルエンザの時に使用すると、ライ症候群やインフルエンザ脳症などのリスクを上げる薬があります。

それは一部の解熱鎮痛剤や風邪薬などに含まれる成分です。

 

ドラッグストアで購入できる薬の中にも含まれていることがありますし、定期的に服用している痛み止めや、少し前に処方された風邪薬などにも注意が必要です。

詳しくは以下の記事を読んでもらえればと思いますが、インフルエンザの時に、家にたまたまあった薬を飲むことはやめたほうが良いでしょう。

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インフルエンザの発症予防や重症化予防はまずワクチンから

インフルエンザが流行りだしてから話題になることが多いですが、インフルエンザの感染予防や重症化予防にはワクチンの接種が一番です。

「ワクチンを打ったのにインフルエンザになったから意味がない」と言われることもあります。

たしかに、発症リスクは60%程度しか減らせませんが、重症化予防などの効果もあります。

 

インフルエンザ治療薬に重症化予防効果は認められていませんので、インフルエンザになってから出来ることは限られます。

結果的に無意味になることはあるかもしれませんが、来シーズンからでも念のために接種しておくことをオススメします。

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予防のため、インフルエンザ流行期には時間をかけてしっかり手洗いをしましょう。

 

うがいやマスクの感染予防効果はあったとしてもかなり限定的ですので、何より手洗い!

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仕事場や部屋においては加湿も大切です。

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インフルエンザ受診において最も大切なこと

これらの理由から、「インフルエンザ疑いなら受診」という考えには、どちらかと言うと否定的な立場です。
少なくとも、自分は積極的に受診したいとは思っていません。

 

ただし、インフルエンザで受診をすること自体を否定するつもりは全くありません。

 

インフルエンザだと思っていたら、もっと緊急性の高い病気だったという可能性もあるからです。

 

インフルエンザだと確定するでことが困難であることと同様に、インフルエンザではないと確定することも困難と言えます。

緊急性の高い病気を見逃す可能性を減らすために受診をすることはとても大切です。

くれぐれも受診自体を軽視しないようにお願いします。

陽性だと都合が良いケース【皆勤賞・内申点】もあるが…

※この項目は個人の意見を述べているだけです。

インフルエンザかどうかで変わることの一つとして、「出席日数」があります。

皆勤賞に関わる、内申点に影響する、など出席日数は学校の成績の指標の一つになります。

 

そしてインフルエンザなどの一部の感染症の場合、出席停止となるので、欠席ではなく出席扱いになります。

夏風邪で休んだら欠席扱いで、インフルエンザなら出席扱いという意味のわからない扱いです。

とは言え、強制的に休ませるので欠席扱いにしないというのは理解出来ます。
(熱があったら公休ぐらいで良い気もします。)

 

私には内申点のうち出席率の影響はどれほどのものかはわかりません。

月曜に発熱してインフルエンザ陽性で月~金の5日間欠席したとしても、学校の出席日は約200日から考えれば欠席日数は全体の2.5%程度です。

受験の際に試験の点数もすべて同じで内申点で合否が分かれるケースもごくまれにあるのかもしれませんが、その万が一の可能性のために病院への受診するべきかは考えても良いと思います。

 

出席扱いにしたくて/欠席したくなくて受診した結果、ただの風邪との診断で、病院でインフルエンザをもらう可能性すらあります。

 

また、社会人の場合も、「風邪では休めないアナタ」もインフルエンザ陽性なら休めることがあると思います。

「調子が悪いときはしっかり休もう」という世の中であればと願いますが、なかなかそうはいかないことも多いようです。

現状のインフルエンザ対応で良いのか

日本のインフルエンザの対応について気になる点はありますが、「インフルエンザ陽性のほうが都合が良いケース」がある限り変わらない気がします。

 

個人的には、「インフルエンザ流行期にインフルエンザを疑わせる症状が出たら5日はインフルエンザと同様の扱いにする」などで良いような気がしています。

休みたくないから熱があることを黙っている/休みたいから熱があると申告する、などの可能性もあり、このままでは問題があるということも理解しています。

ただ、「何を優先すべきか」という点はみんなで再度考えても良いのではないのでしょうか。

もちろん、その結果として、今の制度が選ばれる可能性もあると思います。

 

そして、インフルエンザによる受診の問題店点の一つとして、流行期の病院はインフルエンザ患者さんで溢れかえることです。

慢性疾患で定期的に受診している方など、インフルエンザ以外で受診する患者さんも当然多く、病院や薬局こそがインフルエンザの感染ポイントになっている可能性すらあります。

定期的に受診している人の中にはハイリスク患者さんも少なくありません。

 

軽度だからといって受診してはいけないわけではありませんが、大丈夫そうなら安静にしているという選択肢は、もう少し増えても良いのではないかと感じます。
※その「大丈夫かどうかの判断」が一番難しく、均一に出来ないところでもあります。

 

日本においてインフルエンザが特別視されているように感じますが、実際のところ風邪が軽視されていると考えています。

風邪だって、5日ぐらい寝てるほうが本人の体調や、周囲の感染予防の点ではより良いです。

家での対応も風邪とインフルエンザで大きく異なるとも言えません。

熱があるならインフルエンザのつもりで考え、その上で受診なども検討していきましょう。