日本では解熱鎮痛剤として「ロキソニン」が圧倒的に有名です。
「他はジェネリックでも良いけど、ロキソニンだけは先発品で」という方もおられるほどです。
※実感できるような差が出ることは稀でしょう。
そのため、「子どもにもロキソニンを使って良いのか?」という質問を受けることも多々あります。
結論としては子どもにロキソニンは推奨出来ません。
ロキソニンだけでなく、類似の成分のほとんどは、子どもへの使用に注意が必要です。
その理由を説明していきたいと思います。
解熱鎮痛剤の種類について【NSAIDsかどうか】
まずは、いわゆる「解熱鎮痛剤」と呼ばれる成分についてです。
解熱鎮痛剤のほとんどは「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」に分類されます。
身近なところだと、「ロキソニン(ロキソプロフェン)」、「イブA(イブプロフェン)」、「バファリンA(アスピリン:アセチルサリチル酸)」などは市販薬として購入することも出来ます。
イブプロフェンは市販の総合風邪薬に入っていることも多い成分です。
その他にも、「ボルタレン(ジクロフェナク)」、「セレコックス(セレコキシブ)」、「モーラス(ケトプロフェン)」なども有名で、ボルタレンとモーラスの外用薬は市販薬にもあります。
NSAIDsの中でもいろいろな分類がありますが、ここでは省きます。
NSAIDsに分類されない解熱鎮痛剤として「アセトアミノフェン」があります。
アセトアミノフェンも市販薬のタイレノール・総合風邪薬・子ども用の解熱坐薬などに入っています。
子どもの解熱・鎮痛に使われているのは、主にこのアセトアミノフェンです。
小さい子が熱を出した時に処方される解熱剤は、ほとんどがアセトアミノフェンでしょう。
NSAIDsが子どもに使われることはあまり多くありません。
一部のNSAIDsは子どもにリスクが高いからです。
ロキソニンを含めたNSAIDsが子どもに使われない理由
昔はNSAIDsは子どもに使われていました。
使われる頻度が下がった理由として、「アスピリンが子どものライ症候群リスクを高める」と報告されたことです。
ライ症候群とは
インフルエンザや水ぼうそうなどの一部のウイルス感染後に稀に起こります。
急性脳症などが起こり、死亡率も高いです。
ほとんどが18歳未満です。
特別な治療薬はなく、対処療法を行います。
その後、子どもに対してアスピリンの使用が減り、ライ症候群の報告数も減少しています。
参考:National patterns of aspirin use and Reye syndrome reporting, United States, 1980 to 1985.
アスピリンの使用で必ずライ症候群になるわけではありません。
しかし、他の選択肢がある場合、あえてアスピリンを使用する理由もありません。
川崎病の治療などの限られた条件の場合子どもにアスピリンが使われることがあります。
結果として、NSAIDs全般もライ症候群を誘発する恐れがあるとされ、基本的には子どもへの使用が避けられています。
※明確にリスクが証明された成分は多くないです。
冬以外にもインフルエンザになることはありますし、あえてアセトアミノフェン以外を選ぶ理由はほとんどありません。
NSAIDsはインフルエンザ脳症との関連についても指摘されています。
子どもにも使えるNSAIDsは?
子どもにNSAIDsを避ける理由の一つにライ症候群があります。
ライ症候群のリスクが低いことが確認されているNSAIDsとして、イブプロフェンがあります。
日本においては子どもへの使用頻度は高くありませんが、使用頻度が高い国もあります。
イブプロフェン以外ののNSAIDsで、添付文書に小児量が書かれている成分としてポンタールがあります。
しかしポンタールはインフルエンザ脳症のリスクを上げるという報告もあるので、使用されることは稀でしょう。
その他にも添付文書上では、ナプロキセン(ナイキサン)やチアラミド(ソランタール)も条件付きではありますが、小児に使えると言えそうです。
ほとんどの場合、アセトアミノフェンで事足りるので、こちらも使用されることは稀でしょう。
そもそも子どもへの使用経験が無い(少ない)成分も多くあり、ロキソニン(ロキソプロフェン)もその一つです。
なお、ロキソニンは日本では有名ですが、海外での使用はかなり限られています。
子どもに使用した際のデータが十分でないので、使用されることはまずありません。
なお、ロキソニンの外用薬は子どもにも使われることもありますが、意見は分かれると思います。
子どもへのNSAIDsの使用は医療関係者同士でも議論になることがあります。
個人的には、より安全に使える代替薬(アセトアミノフェン)がある以上、イブプロフェンを除くNSAIDsを子どもに使う理由はほぼ無いと考えています。
自己判断で子どもにNSAIDsを使用しないでください
ここまでの内容をまとめます。
今回のポイント
NSAIDsの中でも子どもに使いやすいのはイブプロフェン
特別な事情がなければ、ほとんどアセトアミノフェンで対応可能
子どもの解熱・鎮痛はアセトアミノフェンで対応出来る場合がほとんどです。
急に発熱があった場合なども、ドラッグストアで子どもに使えるアセトアミノフェン製剤が手に入るはずです。
たまたま家にあった家族の薬を子どもに使うことは、たとえ量を減らしたとしても危険です。
絶対に自己判断で大人の薬を子どもに飲ませないようにお願いします。