インフルエンザ治癒証明書は必要か?【ほとんどメリットなく、手間とコスト・感染のリスク】

インフルエンザ治癒証明書は必要か?【ほとんどメリットなく、手間とコスト・感染のリスク】

インフルエンザの治癒証明書は、必要ないという意見を多く目にします。

しかし、実際に保育園や学校から、治癒証明書の提出を求められる現状もあります。

 

園や学校のルールを守ることはもちろん大切なことです。

ただし、そのルール自体を変えていったほうが良いケースもあると思います。

 

日本のインフルエンザ対応について色々と疑問はありますが、少なくとも「インフルエンザの治癒証明書」に関しては、ほとんどメリットが無いと考えています。

 

園・学校・職場の立場では、治癒証明書があったほうが助かるという気持ちも理解は出来ます。

しかし、求めること事態があまり意味のないことなのは読み進めてもらえばわかると思います。

多くの人の意見が変わっていくことで、園や学校関係者に考えてもらうきっかけに繋がると考えます。

インフルエンザの治癒証明書は必要か

インフルエンザの治癒証明書は、園や学校などから保護者に提出を求められることがあります。

自施設での感染拡大防止や、出席日数などの観点からも、インフルエンザが治癒しているのかの証明を求めたくなる気持ちは理解できます。

 

ただし、治癒証明書が必要かどうかという点では、厚生労働省から「一律に求める必要はない」とされています。
参考:厚生労働省 令和元年度インフルエンザQ&A,Q19

 

そもそも「インフルエンザの治癒証明書があったとしても、絶対にインフルエンザを周りに感染させない」とまでは言えません。

 

そして、インフルエンザになった場合、学校保健法では、「発症後5日」「解熱後2日(幼児の場合は3日)」の両方を満たせば登校を再開できるとしています。

この時点で医師による診断が必要ないことは明らかであり、保護者が口頭で説明することで十分と言えます。

 

「保護者が嘘をついた場合にどうするのか?」という意見もありそうですが、医師に治癒証明書をもらったとしても、解熱したタイミングについては自己申告であることに変わりはありません。
嘘を付く相手が教師か医師かという違いだけです。

 

では、病院に受診すれば、それ以上のメリットがあると言えるのでしょうか。

「インフルエンザが完全に治って、絶対に誰にも感染させない状態」ではないことを証明出来るのであれば安心出来るのかもしれませんが、それはとても難しいです。

インフルエンザ迅速検査の精度がそもそも低い

通常、インフルエンザの検査は「迅速検査」と呼ばれる簡易的な検査を行います。

 

インフルエンザの迅速検査の精度は高いとは言えず、インフルエンザに感染している人が迅速検査で陽性になる割合(感度と言います)は62%程度です。

反対に、感染していない人が陰性になる割合(特異度と言います)は98%ほどです。
参考:Accuracy of rapid influenza diagnostic tests: a meta-analysis.

 

インフルエンザに感染している人の4割程度は陰性の結果が出るわけです。

迅速検査は鼻の奥を綿棒でグリグリされるし痛いですよね。

そんな痛い思いをしても、確実に診断出来るわけではありません。。

 

また、発熱直後にインフルエンザの検査をしても、精度が高くないことは知られています。

発熱後12時間もしくは24時間以上経過している場合に検査されることが多いのは、無駄な検査をせずに、検査の精度を上げるためです。

 

そして、迅速検査の精度が高くないため、検査では陰性だったとしてもインフルエンザと診断されることも珍しくありません。

インフルエンザ治療薬が処方されることもあります。

 

一般的に、治癒証明書作成にあたりインフルエンザの迅速検査はしませんが、仮に行ったところで確実とは言えません。

 

また、「発症後5日」「解熱後2日(幼児の場合は3日)」の両方を満たすことは、100%感染させないと言い切れるものではありません。

感染力が少なくなっているとは考えられますが、わずかにインフルエンザウイルスを排出していることは十分に考えられます。

 

一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。
引用:厚生労働省 令和元年度インフルエンザQ&A.Q17

 

発症前日からインフルエンザウイルスは排出されているとはいえ、その時に検査をしても陰性になることが多いでしょう。

発熱後12時間以下での迅速検査の精度ですら、そこまで高くありません。

つまり、仮に発症後5日に迅速検査をして陰性になったとしても、感染力がゼロとは言えません。

これは、医師が診察をしても同様です。

治癒証明書のその他の問題点【手間・コスト・感染】

そのように不確実な治癒証明書ですが、病院に受診する必要があるため、以下のような問題もあります。

  • 実費負担で数千円(病院により異なる)かかる
  • 共働き家庭の場合、仕事を休んだりする必要がある
  • 下に小さいお子さんがいる場合、一緒に病院に連れて行かざるを得ないことがある
  • 病院で違う型のインフルエンザや他の病気をもらう可能性がある

費用も時間も問題ですが、せっかく治ったところで感染症あふれる病院に行く必要まであります。

 

治癒証明書を貰いに来た結果、他の病気にかかるなどの事態も想定されます。

その結果、学校内での感染が広まったとして、それは問題ないと言えるのでしょうか。

 

インフルエンザの治癒証明書の存在意義は、「条件を満たしていないが、感染の可能性が少ないので出席可とする」ではないかと思います。

やはり、一律にインフルエンザの治癒証明書を求める必要はないでしょう。

 

だからと言って、園や学校からの依頼を無視していいというわけではありません。

しかし、ほとんど意味のないものであることを伝えることで、いずれ改善につながるのではないかと考えます。

 

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