患者さんと話していると、【副鼻腔炎には必ず抗生物質を使う】と思われていることがあります。
しかし副鼻腔炎の治療ガイドラインを読む限り、必ずしもそうとは言えません。
副鼻腔炎には大きく分けて急性副鼻腔炎か慢性副鼻腔炎の2種類があります。
急性副鼻腔炎では症状に応じてアモキシシリンなどの抗生物質を使うことがあります。
慢性副鼻腔炎の場合マクロライド系抗菌薬を炎症を抑える目的で長期間使うこともあります。
どちらにせよ、必ず抗生物質が必要と言うわけではありません。
急性副鼻腔炎は軽症なら経過観察になることも
急性副鼻腔炎は、初期はウイルス感染が原因になることが多いため、抗生物質は不要とされています。
しかし、症状によっては抗生物質を使用することもあります。
急性副鼻腔炎に抗生物質が推奨されているのは、以下の場合です。
- 成人では中等~重症
- 小児では、遅延性または重症
アメリカ小児学会の遷延性又は重症の判断基準は以下の3点で、それ以外は経過観察です。
- 10 日間以上続く鼻汁・後鼻漏や日中の咳を認めるもの。
- 39℃以上の発熱と膿性鼻汁が少なくとも3日以上続き重症感のあるもの。
- 風邪に引き続き、1週間後に再度の発熱や日中の鼻汁・咳の増悪が見られるもの。
なお、抗生物質を使用する場合、成人、小児ともアモキシシリンが基本です。
成人は5~7日、小児は7~10日程度服用します。
急性副鼻腔炎に関しては、抗生物質投与の有無に関わらず、1週間後には約半数が、2週間後には約7割の患者が治癒することが報告されています。
抗生物質を使用することで、100人中5人程度が早く治癒できる可能性がありますが、嘔吐や下痢などの副作用が出る可能性は2倍程度になります。
参考:Antibiotics for clinically diagnosed acute rhinosinusitis in adults.
少なくとも、軽症の急性副鼻腔炎には、抗生物質が必須とは言えません。
欧米では急性副鼻腔炎にステロイドの点鼻薬を使うこともあるようですが、日本においては適応がないためあまり使われることはなさそうです。
慢性副鼻腔炎にはマクロライド系が使われることも
マクロライド系抗生物質は、抗炎症作用や気道上皮に対する作用などを期待して、慢性副鼻腔炎に少量長期投与されることがあります。
イギリスの副鼻腔炎のガイドラインでも、慢性副鼻腔炎に対してマクロライド系抗生物質の約12週間投与が推奨されています。
参考:ACI guidelines for the management of rhinosinusitis and nasal polyposis.
クラリスロマイシンは苦味が強いので、子どもが飲み続けるのが少し大変かもしれませんが、飲んだり飲まなかったりすることは、耐性菌の増加につながる可能性も否定できません。
飲みにくいようなら、以下の記事も参考に、しっかりと苦味対策をするようにしましょう。
イギリスの副鼻腔炎のガイドラインにはマクロライド系抗生物質以外にも、以下の内容がgradeAとして推奨されています。
- 点鼻ステロイドの使用
- 追加治療としての生理食塩水による鼻洗浄
- アレルギー患者への経口ヒスタミン薬の追加
点鼻ステロイドは、フルチカゾン、モメタゾン、ブデソニド(日本未発売)は子どもの長期的な成長に対する研究でも安全性が高いデータがあるとされています。
こちらも適応がないので、あまり使われることがないと思います。
慢性副鼻腔炎にはマクロライド系抗生物質が使われることが多いですが、絶対に必要というわけではありません。
副鼻腔炎の治療に抗生物質は必須?【自宅で鼻水吸引は出来る】
結論としては、【抗生物質を使うこともあるし使わないこともある】という曖昧なものです。
当たり前な結論ではありますが、抗生物質が必須とは言えないということは知っていただきたいと思います。
抗生物質を飲んでも早く治らないのであれば、むしろ無いほうが良いですよね。
薬がないと不安になることもあるかもしれませんが、それだけ症状が軽いと考えていただければと思います。
また、副鼻腔炎の治療においては、適切な鼻処置も大切とされています。
耳鼻科への受診が理想的ですが、家庭で鼻水の吸引を行う場合は、電動鼻水吸引器の使用を検討しても良いかもしれません。
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