ぜんそくの予防薬として子どもにも使われることのあるフルタイドについて説明します。
フルタイドはデバイス(吸入する装置)の種類も多く、デバイスごとに特徴があります。
いつもフルタイドエアゾール+吸入補助具で使用されているお子さんに、他院でフルタイドディスカスが処方され、全然吸えなくなったという例もあります。
適切なデバイスであることは吸入薬の使用において重要なポイントです。
うまく吸入できているのかも一度考えてもらえたらと思います。
フルタイドの効果と副作用【うがいが出来ないならどうする?】
フルタイドは吸入ステロイド剤で、気管支ぜんそくの予防に使用されます。
あくまで予防であり、発作時に使用しても劇的な効果は見られません。
しかし、定期的に使用することで、ぜんそく発作自体を起こしにくくすることが出来ます。
吸入ステロイドは患部に直接成分が届く上、飲み薬のステロイドよりかなり少ない量で効果を発揮し、全身に届く量はさらに少ないため全身性の副作用頻度が少なく済みます。
吸入後に口の中に残ったステロイドは、口腔カンジダの原因になることがあるので、吸入後にうがいをすることが好ましいです。
低年齢の子ども等のうがいが困難な患者に使用する場合は、口の中をすすいだり、水分を取って飲み込んでしまったほうが良いでしょう。
飲み込んだ分は全身に作用しますが、フルタイドは経口バイオアベイラビリティが低く、そもそもの量も少ないです。
全身性の副作用よりも、口腔カンジダなどのリスクを減らすほうが現実的ではないかと考えます。
なお、子どもの市販後調査における副作用は1525例中14例(0.9%)で、血中コルチゾール減少が2例、口腔カンジダ、副鼻腔炎、むせ、嗄声などが1例でした。
また、子ども特有の副作用として、成長抑制の可能性もあります。
しかし、ぜんそくの治療と天秤にかけるようなものでありません。
自己判断での中止のほうがリスクは高いでしょう。
詳しくは以下の記事をごらんください。
同一成分の点鼻薬としてフルナーゼ点鼻がありますが、使用部位と用途を守ってご利用ください。
フルタイドのデバイス毎の特徴と比較【子どもにはエアゾールが無難】
フルタイドはディスカス、ロタディスク、エアゾールの3種類のデバイスがあります。
吸入ステロイドは長期間毎日使用するので、より使いやすいデバイスを選択できると、毎日の負担が減ります。
使用量はどのデバイスでも変わらず、通常はフルチカゾンプロピオン酸エステルとして1回50μg(成人は100μg)を1 日2回吸入投与します。
症状により増減することはありますが1日の最大量は小児で200μg、成人で800μgです。
それぞれのデバイスの特徴は以下の画像の通り。
デバイス毎にもう少し詳しく説明します。
フルタイドディスカスの特徴【簡易だが吸う力が必要】
ドライパウダータイプ(DPI)のフルタイドディスカスには以下の種類があります。
- フルタイド50ディスカス
- フルタイド100ディスカス
- フルタイド200ディスカス
ドライパウダー製剤を確実に吸入するには、十分な吸う力が必要なので、小さい子の使用は難しいとされます。
目安としては、4歳以下には向いていないと考えられます。
吸入の動作はシンプルです。
外側のカバーを開けて、レバーをしっかり奥に押して、吸入します。
水平に保ちながら動作を行うことや、通気口を塞がないように吸入するのもポイントです。
※実際に吸入する場合は、添付の指導せんをしっかり読みながらにしましょう。
フルタイドロタディスクの特徴【吸入動作が難しい】
フルタイドロタディスクもドライパウダー製剤で、以下の種類があります。
- フルタイド50ロタディスク
- フルタイド100ロタディスク
- フルタイド200ロタディスク
ドライパウダー製剤を確実に吸入するには、十分な吸う力が必要なので、小さい子の使用は難しいとされます。
ディスカス同様にロタディスクも吸う力が必要なので、4歳以下が使用するのは困難でしょう。
また、ロタディスクの吸入動作はディスカスよりもかなり多く、文字だけで説明するのは難しいので割愛します。
事前に吸入指導されていたとしても、慣れるまでは指導せんに目を通しながら吸入することをおすすめします。
子どもが1人で適切に吸入するのは難しいと思います。
ちなみに、インフルエンザ治療薬のリレンザと同じ吸入方法です。
フルタイドエアゾールの特徴【吸入補助具を活用すれば低年齢から使える】
フルタイドエアゾールには以下の種類があります。
- フルタイド50μgエアゾール120吸入用
- フルタイド100μgエアゾール60吸入用
エアゾール製剤は、「押すと吸う」の同調が肝です。
「押すと吸う」の同調を小さいお子さんがするのは簡単ではありません。
しかし、吸入補助具を使用すれば、大人の手が無くても吸入出来るようになります。
フルタイドのデバイスの中で、最も小さい子にも使えるデバイスと言えます。
吸入補助具なしで5歳ぐらいで使えているお子さんもいますし、吸入補助具と親のサポートがあれば2歳で使えているお子さんもいます。
※目安としては1歳から安全に使えるとされています。
また、フルタイドエアゾールはよく振ってから使用してください。
フルタイドエアゾールはアルコールを含まないので、アルコールアレルギーの方にも使用出来ます。
子どもにも使える吸入ステロイドのエアゾール製剤としては、「オルベスコ」もありますが、こちらはアルコールを含みます。
アルコール臭が苦手なお子さんには、オルベスコよりもフルタイドのほうが使いやすいでしょう。
対してオルベスコには肺内の到達率が高い、吸入前に振らなくて良いなどの特徴があります。
※オルベスコの記事で吸入補助具についても触れています。
アダプターを週に一度は洗うことや、ボンベの処理などの手間もありますが、小さい子にフルタイドを使用する場合には、エアゾールが最も向いているでしょう。
さらに小さい子には、パルミコート一択だと思います。
吸入にはネブライザーが必要になるため、コストは掛かってしまいますが、治療のためにはきちんと吸えることが最優先です。
フルタイドのよくある質問【どれぐらいで効く?|使用期限は?】
ですが、誤解があるようですね。
フルタイドがどれぐらいで効き始めるかを聞かれることは少なくありません。
添付文書上の最高血中濃度到達時間は30分~1時間となっているので、それが一応の回答ではありますが、質問に誤解が含まれている印象です。
フルタイドを含めた吸入ステロイドはあくまでぜんそく予防の薬であり、今起きている発作を抑える薬ではありません。
毎日続けることで発作自体を減らすことを目的に使用されています。
このように質問をしてもらえると、誤解を修正するきっかけになります。
適切に薬を治療するために、わからないことはどんどん質問してもらいたいと思います。
しかし、長期で保管することはまずありません。
吸入薬全般は、使用期限を聞かれることもあります。
吸入薬の種類やデバイスによって使用期限の記載があるかどうかはバラバラです。
ロタディスクの裏側には期限が書いてありますが、開封後のディスカスとエアゾールには期限が付いていません。
基本的には使用期限まで使えますが、吸入ステロイドは毎日続ける薬ですので、何か月も使わずに保管することはあまりないでしょう。
期限が書いていなければ、処方してもらった薬局に製品のLOT番号を伝えればわかるかもしれません。
しかし、開封後1年以上も経っているようなものだとすれば、処分したほうが良いのではないかと思います。
ぜんそく治療について誤解がある方も多いです。
一回の診察や投薬でまとめて説明する時間がないのが現実だと思います。
ぜんそく治療の基本について知っていただけると助かります。
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