熱性けいれんの予防薬として、ダイアップ坐剤が処方されることがあります。
「熱性けいれん」に不安を強く感じてしまうこともあり、ダイアップの使用に関しても色々と質問されることが多いです。
熱性けいれんへの不安から自己判断でダイアップを追加してしまうケースも見かけますが、正しい使用方法を理解し、過剰な使用にならないように注意してください。
ダイアップの使い方や注意点、よく聞かれる質問などに回答します。
※ダイアップはてんかんのけいれんにも使われますが、熱性けいれんについての内容です。
ダイアップの使い方や持続時間【2回目は8時間後、3回目は基本なし】
ダイアップは半透明の坐薬で、通常は1回0.4~0.5mg/kg(上限は1mg/kg)使用します。
ダイアップの規格と目安体重は以下の表の通りです。
目安体重 | |
ダイアップ坐剤4 | 8~10kg |
ダイアップ坐剤6 | 12~15kg |
ダイアップ坐剤10 | 20~25kg |
ダイアップ坐剤を予防的に使用する場合は、37.5℃を目安に1回目を使用して、熱が続いているようなら8時間後にもう一度使うように推奨されています。
この2回の投与によって24時間以上有効血中濃度が保たれます(36~48時間という報告もあり)。
また、熱性けいれんは発熱後24時間以内に起こることが多いです。
そのため、基本的に発熱があったとしても1回~2回の使用で十分と言えます。
3回目の投与をすることもあるようですが、自己判断では行わないほうが良いでしょう。
ダイアップは副作用なども考慮して使用されるので、一度熱性けいれんがあったとしても必ず使うわけではありません。
処方の基準は以下のとおり。
以下の適応基準1)または2)を満たす場合に使用する
1)遷延性発作(持続時間が15分以上)
2) 次のⅰ)~ⅵ)のうち2つ以上を満たした熱性痙攣が2回以上反復した場合
ⅰ)焦点性発作(部分発作)または24時間以内の反復
ⅱ)熱性痙攣出現前より存在する神経学的異常、発達遅滞
ⅲ)熱性痙攣またはてんかんの家族歴
ⅳ)生後12か月未満
ⅴ)発熱後1時間未満での発作
ⅵ)38℃未満での発作
引用:熱性けいれん診療ガイドライン2015
ダイアップは有効血中濃度に達するまで15分~30分程度かかるとされます。
熱性けいれんは多くの場合5分以内に治まるので、けいれんが起きてからダイアップを使用する意味はかなり限られます。
ダイアップはあくまでも予防のための薬であるということは理解しておきましょう。
また、けいれんが起きた直後に使用すると、眠気などの副作用が出てくることで、他のより緊急性の高い病気との鑑別が難しくなることがあります。
ダイアップ使用前にけいれんが起きた場合は、けいれんが終わって意識がはっきりしてから使用したほうが良いと思います。
なお、最高血中濃度に達するのは約1時間半後です。
ダイアップに関わる質問【いつまで続ける?保管方法は?使用期限は?】
もしくは4~5歳までが一つの基準です。
医師と相談の上決めましょう。
車の中の保管などはおすすめ出来ません。
体重により量も変わるので、あまり古いものには注意しましょう。
※私は期限がわかるようにして渡しています。
もちろん必要なら使っても問題ありませんが、順番には注意しましょう。
入れ直したほうが良い?
過剰使用にも注意が必要です。
ダイアップと解熱の坐薬(アンヒバなど)は順番に注意
ダイアップは熱が出ている時に使用するため、解熱の坐薬と使用タイミングが重なることも珍しくありません。
しかし、この2種類の坐薬は使う順番を間違えると十分な効果が出ないことがあります。
ダイアップを先に使用してから、30分程度時間をあけて解熱の坐剤を使用してください。
順番を逆にしてしまうと、ダイアップの効果が出るのに時間がかかってしまったり、効果が弱まってしまう可能性があります。
これは性質の違う2種類の坐薬の組み合わせで起こる問題です。
飲み薬の解熱剤+ダイアップ坐剤の組み合わせなら、同じタイミングで使用しても問題ありません。
間違いを防ぐためには、解熱剤は飲み薬にしてもらうと良いかもしれません。
このように、坐薬を併用する場合には、順番に気をつけた方が良いことがあります。
他の坐薬との組み合わせなどについては、以下の記事にまとめています。
ダイアップの眠気やふらつきなどの副作用
ダイアップの副作用について、添付文書には以下のように記載があります。
総症例 4,560 例中、副作用が報告されたのは 403 例(8.84%)527 件であった。そのうち、主なものはふらつき 229 件(5.02%)、眠気 206 件(4.52%)、興奮 16 件(0.35%)であった。[再審査終了時]
参考:ダイアップ坐剤添付文書
ダイアップの成分を考えると、眠気やふらつきが出るのは当然とも言えます。
眠気が出た場合に、けいれんに関連した症状か、副作用なのかの判別が困難になることがあります。
また、過量投与にも注意が必要です。
1回目と2回目の投与時間を8時間空ける理由も、血中濃度を上げすぎないようにするためです。
なお、8時間間隔で投与を続けると、5回目の投与で血中濃度が上がりすぎて中毒域まで到達する可能性があるとインタビューフォームにも記載があります。
熱性けいれんを避けたいとしても、指示を上回った使用は厳禁です。
ダイアップの併用禁忌・注意薬
ダイアップと併用禁忌・併用注意とされている薬は以下通りです。
リトナビル
中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等)
アルコール(飲酒)
モノアミン酸化酵素阻害剤
シメチジン、オメプラゾール
シプロフロキサシン
フルボキサミンマレイン酸塩
マプロチリン塩酸塩
ダントロレンナトリウム水和物
持病のないお子さんに使用されることは少なそうです。
胃腸関連けいれんなどで、フルボキサミン(商品名:デプロメール・ルボックス他)が単発で使用されることなどはあるかもしれません。
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もちろん、併用してよいかどうかは、処方前に判断されているはずです。
万が一の見逃しを防ぐために大切なことは病院・薬局で併用薬をしっかり伝えることです。
ダイアップやエピペンなどの「何かあったら使う薬」も含めて伝えなければ十分とは言えません。
もちろんお薬手帳を正しく使えていれば、問題になることはまずないでしょう。
熱性けいれんについては以下の記事をご覧ください。
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