カルボシステイン(商品名:ムコダインなど)は、子どもから大人まで幅広く使われるお薬です。
かぜを引いた時、咳が続く時、ちくのう症や中耳炎の治療など幅広く使われます。
市販のかぜ薬や咳止めにも入っている場合もあります。
よほど薬を避けてきている場合を除けば、ほとんどの人が飲んだことがある成分です。
そんなカルボシステインですが「眠くなることはありますか?」と聞かれることがあります。
結論から言うと、カルボシステインで眠気が出た場合は、併用薬による副作用や、病気による体力消耗などの影響の可能性のほうが高そうです。
眠気に関する情報以外にも、カルボシステイン(ムコダイン)の副作用や飲み合わせなどについて書いていきます。
カルボシステイン(ムコダイン)で眠気は出る?
カルボシステイン(ムコダイン)を飲んでいる患者さんからの問い合わせで多い内容は、「眠くなるか?」です。
ムコダインの副作用情報を見てみましょう。
副作用の概要
総症例 11,066 例中、101 例(0.91%)に副作用が認められ、主な副作用は食欲不振 27 例(0.24%)、下痢19 例(0.17%)、腹痛 15 例(0.14%)、発疹 11 例(0.10%)であった。
参考:ムコダイン各種インタビューフォーム
メーカーのデータによると、以下のように考えて良さそうです。
- 副作用全体の発現率が1%未満
- 主な副作用は、食欲不振・下痢・腹痛・発疹
- 副作用で眠気の報告はない
10000例以上に使用しても、カルボシステイン(ムコダイン)単独では眠気の副作用が報告されていません。
他の薬の副作用情報を見ると、眠気の記載がない薬はほとんどないので、かなり珍しいことでもあります。
カルボシステインが眠気の直接の原因になる可能性はかなり低いでしょう。
眠気が出た場合は、併用薬による副作用や、病気による体力消耗などの影響の可能性のほうが高そうです。
カルボシステインと一緒に処方されることの多い、咳止めの薬(アスベリン、アストミン、メジコンなど)は低頻度ですが副作用で眠気が出る可能性があります。
また、鼻水を抑える目的などで併用されることの多いアレルギーの薬の多くは眠気が出やすいです。
市販の薬についても、カルボシステイン以外の成分(咳止めや鼻水を抑える成分)による眠気の可能性のほうが高いと考えます。
なお、カルボシステインに関するコクランレビューにも、2歳以上への安全性は高いとされています。
2歳未満については、もちろん危険というわけではなく、データが少ないために、はっきりとした結論が出せていないという印象です。
そのため、海外では2歳未満へのカルボシステインの使用を制限している国もあります。
また、2歳未満の風邪に対してカルボシステインを使用することの必要性はそこまで高くはないと考えます。
カルボシステイン(ムコダイン)の副作用【発疹】について
カルボシステインは眠気の直接の原因となることは考えにくいですが、発疹の原因になることはありそうです。
発疹はかなり多くの薬の副作用として報告例がありまして、その多くはアレルギー反応です。
カルボシステインによる発疹の副作用頻度は0.10%と報告されています。
カルボシステインの薬疹は夜飲むと起こりやすい(DI オンライン)
会員登録しないと読めない内容なので詳細は控えますが、カルボシステインを夜間に服用することで薬疹が起こりやすい可能性が指摘されています。
注意が不要というわけではありませんが、カルボシステインにより発疹が起こる可能性は低いです。
自己判断での服用中止は治療に影響を与えることも考えられます。
不安が強ければ夕食後速やかに薬を飲めばリスクは減らせそうです。
カルボシステイン(ムコダイン)の飲みあわせや相性
カルボスステインは他の薬の効き目を落としたり上げたりするリスクはほぼ無い薬ですが、一緒に飲む薬の「飲みやすさ」には影響を与えやすいと言えます。
それは、カルボシステインはpHが低いため、抗生物質を中心とする一部の薬の「苦味をごまかすためのコーティング」を剥がすことがあるからです。
例えば、苦い抗生物質の代表格とも言える「クラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)」や、「アジスロマイシン(ジスロマック)」などは、カルボシステインのシロップやドライシロップと混ぜると明らかに苦くなります。
混ぜても苦味が増えない抗生物質もたくさんあり、ワイドシリンなどと混ぜても特に苦くはなりません。
デメリットばかりでなく、カルボシステインと混ぜることで苦味をごまかせる薬もあります。
例えば、インフルエンザの治療薬であるオセルタミビル(タミフル)ドライシロップの苦味は、カルボシステインと混ぜるとかなり軽減されます。
ぜんそく治療などで長く続けることのある、プランルカストやモンテルカストとの味の相性も良いです。
紹介したのは一部の例ですが、カルボシステイン(ムコダイン)は、他の薬の飲みやすさに大きく影響を及ぼす薬です。
以下の記事では、カルボシステインやその他の子ども用の薬について、味や飲み物などとの相性をまとめています。
薬の飲み方などの参考にどうぞ。
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カルボシステイン(ムコダイン)の基本情報
カルボシステイン(ムコダイン)の薬効・薬理
作用部位
気道、鼻腔、副鼻腔及び中耳の上皮粘膜、粘液腺などに作用作用機序
気道、鼻腔、副鼻腔及び中耳の上皮粘膜は、線毛細胞で覆われており、その粘液線毛システムは、異物や粘液の排泄に重要な働きを担っている。カルボシステインは、粘液の構成成分のバランスを改善し、障害された粘膜上皮を正常化することにより粘液線毛輸送能を改善し、喀痰の喀出、慢性副鼻腔炎の鼻汁の排泄、滲出性中耳炎の中耳貯留液の排泄を促進する。カルボシステイン(ムコダイン)の臨床成績
急性気管支炎、気管支喘息、滲出性中耳炎を対象とした二重盲検比較試験において本剤の有用性が認められている。
有効以上 やや有効以上 疾患名 有効率(%) 有効率(%) 上気道炎 76.2(48/63) 82.5(52/63) 急性気管支炎 67(59/88) 88.6(78/88) 気管支喘息 64.1(93/145) 83.4(121/145) 慢性副鼻腔炎 56.8(63/111) 90.1(100/111) 滲出性中耳炎 52.4(89/170) 74.1(126/170) ※小児データ
参考:ムコダイン各種インタビューフォーム
全体的に有用性は高いですね。
子どもにも頻用されている理由がわかります。
カルボシステインの剤形一覧 錠、シロップ、ドライシロップなど
- カルボシステイン錠250㎎
- カルボシステイン錠500㎎
- カルボシステインシロップ(小児用)5%
- カルボシステインシロップ10%
- カルボシステインドライシロップ(DS)50%
以前は、カルボシステインドライシロップの33.3%や、カルボシステイン細粒50%などの規格がありましたが、現在ではほとんど使われていません。
カルボシステインDS33.3%「トーワ」が2019年3月末に経過措置(使えなくなる)になって、33.3%製剤はなくなりますし、細粒の50%はC-チステン細粒50%しかありません。
カルボシステイン(ムコダイン)は、有用性もあり、副作用の発生率の低い、使いやすい薬だと考えています。
だからこそ過度な心配をせず指示通り使っていただければと考えています。
お子さんにカルボシステインが出されているのであれば、夜間の後鼻漏(鼻水が喉に落ち込む)による咳に困っていることもあると思います。
そのような場合は鼻水を出来るだけ外に出してあげることが大切です。
鼻水をかむ習慣をつけましょう。
鼻をかめない小さいお子さんの場合、電動の鼻水吸引器が便利です。
子どもが夜中に咳き込んで痰を吐くことがありませんか?その時に鼻水も多く出ているようであれば、鼻水が喉の方に落ちていって(後鼻漏)、その鼻水によって咳や嘔吐につながっているかもしれません。 我が家には口で吸う[…]