保護者の方からこのように質問されることがありますが、粉薬のほうが味が良く保存がしやすいものが多いため、粉薬をおすすめすることが多いです。
とはいえ、子どもの好み次第ではあるので、個人差は大きいです。
粉薬とシロップ剤の特徴を比較します。
シロップ剤の特徴
【味】苦味を消すことは困難
子ども用の液剤の多くは、甘みがたっぷりついたシロップ剤です。
そのため、甘くて飲みやすいという印象を持たれている方が多いです。
たしかにとても甘いですが、甘いから飲みやすいとは限りません。
原薬が苦ければいくら甘みをつけても、苦味がなくなるわけではないからです。
ピーマンが嫌いな子どもに、生のピーマンに砂糖をたっぷりかけて食べさせようととする人はいないはず。
それよりもピーマンに火を通したり、小さく刻んだり、何かに混ぜて食べやすくしますよね?
薬においては「原薬」を変えようがないので、苦い原薬を液体に溶かせば当然苦い液体になります。
この苦い液体に出来ることといえば、甘みをつけることだけ。
ピーマン味の液体に大量に砂糖を溶かしたようなものをイメージしてもらえれば、子どもが飲みにくいのは明らかですよね。
このように、シロップの味はどうしても原薬の味に依存するため、苦いシロップもたくさんあります。
苦味の強い抗生物質などは、シロップ剤を作っても飲める味にならないと思います。
「苦味がないもの」を選びたいのであれば、シロップよりも粉薬のほうが良いと思います。
なお、シロップ剤は安定性に注意したほうが良いものもあるので、何かに混ぜる場合は事前に確認したほうが良いでしょう。
保管・持ち運び
一般的に液体は痛みやすいので、基本的に長期間の保管には向きません。
必然的にシロップ剤には保存料や酸化防止剤などが添加されています。
それでも、保管方法次第では腐敗することもありえます。
自宅で管理する場合、出来るだけ雑菌などが入らないように以下の点に注意しましょう。
- 開封時間は最小限
- 容器から出した液は戻さない
- スポイトを直接容器に入れる場合は、スポイトを清潔に保つ
遮光したほうが良いか、冷蔵庫に入れたほうが良いか、などは個々の薬により異なります。
外出先にシロップ剤のボトルごと持ち運んでその場で量って飲むのは、手間でもあり、衛生面の懸念もあります。
シロップ剤は持ち運びにも向いていないものが多いでしょう。
粉薬の特徴
【味】ある程度マスキングが可能
子ども用の粉薬は原薬の表面にコーティングをすることで、原薬が苦くても表面的には苦味が出ないように工夫されています。
そのため、同成分のシロップ剤よりも苦味を感じにくいことが多いです。
一方で、コーティングを剥がさないようにするために、薬ごとに異なる注意をする必要があります。
まず大切なのは、液体に溶かすなら、溶かしてすぐに飲むこと。
溶かして時間が経つほど苦味が目立ってくる粉薬は少なくありません。
飲みやすくするためのコーティングをわざわざ剥がして、飲みにくくしてから飲むことになってしまいます。
また、pHが低いものと混ぜることで表面のコーティングが剥がれる粉薬(主に抗生物質)があります。
その場合、100%ジュースやスポートドリンク、ヨーグルトなどに混ぜると飲みにくくなることがあります。
小さな粒に簡単には溶けないようなコーティングをして、苦味を閉じ込めてしまう製剤もあります。
このようなコーティングの場合、コップに入れると、底に粒が残って全量飲むのが難しいです。
また、噛むことで苦味が出てくるため、つい噛んでしまうような食べ物に混ぜることもおすすめ出来ません。
粉薬を直接口の中に入れて飲み込むのがベストと言えるが、小さい子どもには難しいかもしれません。
このように、粉薬は飲みやすくするための工夫がされていますが、その工夫を無駄にしないためにも、薬ごとの注意点を守りましょう。
粉のまま口に入れて水で流し込むように飲めるようになれば、ほとんど注意すべきことはありません。
なお、コーティングの技術も製薬会社毎に違いがあり、先発品よりもジェネリックのほうが飲みやすいことも多いです。
粉薬が口内に残ると、ざらつきが続いたり苦味が残ったりと、飲みにくさにつながることもあります。
その場合、しっかり溶かしてから飲むか、服薬後に再度水を飲んで口内をすっきりさせると良いでしょう。
保管・持ち運び
粉薬はシロップ剤ほど痛みやすいわけではなく、比較的保管は容易なものが多いです。
もちろん、一般的な薬と同様、湿気・温度・光などには注意が必要です。
また、日本では1回分毎に小分けに調剤されることが多いため、持ち運びも容易なことが多いです。
シロップは時に子どもが数日分を誤飲(一気飲み)してしまうことがありますが、分包された粉薬では起こりにくいでしょう。
また、粉薬は飲むたびにスポイトや計量カップで量りとる必要もないため、量を間違えることもあまりありません。
※ただし、粉薬を1回分ずつ分包するのは大変手間でもあり、海外では一般的でない。
粉薬とシロップ剤の特徴比較
ここまでで紹介した、粉薬とシロップ剤の特徴をまとめます。
単純な比較は難しいので上記からは外しましたが、保存料などの添加物の量もシロップ剤のほうが多いと考えます。
また、一般的にシロップのほうが飲む量も多くなります。
例えば子どもに使われることの多いカルボシステインの場合、「ドライシロップ1g=シロップ10mL」です。
カルボシステインドライシロップ1gは1mL程度の水で溶かすことが可能です。
粉薬を溶かす手間はあっても、少量で済んで飲みやすいことが多いです。
粉薬とシロップ剤の両方が存在する薬はそもそも多くありませんし、希望を聞いてもらえることも少ないかもしれません。
しかし、もし選択できるのであれば、味・保管・量の面などから、粉薬のほうが使いやすいことが多いと感じます。
2歳頃からは好き嫌いの主張が増え、薬を飲むことを拒絶することも。
最終的に薬を飲ませることが必要だとしても、無理強いしてしまうと、今後さらに薬を飲むことを拒絶する原因になってしまうこともあります。
そうなると、子どもはもちろん保護者の負担も増えていきます。
とはいえ、最終的には子どもの「好み」次第。
試してみないとわからないことではありますが、「シロップ剤は苦味が隠しきれないことがある」ことは知っておくと良いかもしれません。
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