ポリフル・コロネルの注意点と過敏性腸症候群【海外では子どもに使える市販薬あり】

ポリフル・コロネルの注意点と過敏性腸症候群【海外では子どもに使える市販薬あり】

ポリフル・コロネルはポリカルボフィルカルシウムを主成分とする過敏性腸症候群の治療薬です。

ポリフルとコロネルは販売会社と名称は違いますが同一成分の薬であり、どちらかがジェネリックというわけでもありません。

 

添付文書上は原則成人のみに使う薬となっていますが、子どもにも使われることもあります。

なお、海外では同成分の市販薬が、子どもにも使えるなど日本とは違う状況もあります。

ポリフル・コロネルについて説明します。

ポリフル・コロネルと過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)とは
便通異常(下痢・便秘)と腹部症状(腹痛・腹部膨満感など)の症状が続くが、大腸に炎症や腫瘍などがない(原因が特定できない)病気。
便秘型・下痢型・混合型・分類不能の4タイプに分けられる。

 

ポリフル・コロネルの主成分のポリカルボフィルカルシウムは、高い吸水性と保水性があるため、下痢・便秘状態の両方に効果を発揮します。

ポリカルボフィルカルシウムは, 酸性条件下でカルシウムを脱離することから, 胃内でカルシウムが脱離してポリカルボフィルになり, ポリカルボフィルは, 小腸や大腸のような中性条件下で高い吸水性と保水性を示し, 吸水に伴い膨潤・ゲル化する.
したがって, 下痢時には, ポリカルボフィルが増加した水分を吸水してゲル化することにより, 亢進した消化管内容物の通過時間を遅延させて排便回数を減少する. また,通過時間の遅延は便中水分の吸収を促し便性状を改善する. 一方, 便秘時にはポリカルボフィルが消化管内で水分を吸水して膨潤し, 内容物を軟化もしくは容量を増加させることで遅延した消化管内容物の通過時間を短縮させて排便回数を増加する. また,吸水した水分を保持することにより, 便中水分の減少が抑制されて便性状を改善する.
このように, ポリカルボフィルカルシウムは, 生体に吸収されずに消化管の内腔において内容物の性状を正常化させることにより下痢と便秘を改善すると考えられる.
引用:コロネルインタビューフォーム

また、マウスやラットにおける試験では、下痢モデルに使っても便秘が誘発されず、便秘モデルに使っても下痢は誘発されていないと報告されています。

 

ポリフル・コロネルは、過敏性腸症候群を根本的に治療する薬ではなく、関連する便通異常・腹部症状を改善する薬で、以下の種類があります。

  • ポリフル錠500㎎
  • コロネル錠500㎎
  • ポリフル細粒83.3%
  • コロネル細粒83.3%
  • ポリカルボフィルCa細粒83.3%「日医工」:ジェネリック

※細粒のみジェネリックがあります。

 

細粒剤がありますが、原則として成人に使用する薬で、添付文書には「小児等に対する安全性は確立していない (使用経験が少ない)」と記載があります。

一方、小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインにも記載があるように、ポリフル・コロネルが過敏性腸症候群関連の小児便秘に使われることがあります。

また、後半で紹介しますが、海外では2歳から使える製品もあります。

 

日本においては以下の使い方が原則です。

成人の過敏性腸症候群における便通異常(下痢,便秘)及び消化器症状に1日1.5~3gを3回に分けて食後に水とともに飲む。

なお、下痢の場合は1日1.5gで効果が得られるので、1.5gから始めます。

2週間程度で症状の改善がない場合などに漫然と使用しないことが原則です。

ポリフル・コロネルの注意点

飲み方:詰まらないように多めの水で飲む

ポリカルボフィルカルシウムは弱酸性下で最大約13倍、胃酸でポリカルボフィルになった後の中性下では35倍以上の水を吸収して膨潤・ゲル化します。

そのため、喉や食道に引っかかり膨張し始めると、詰まってしまう可能性があります。

海外では喉に詰まらせて死亡した例が1件報告されています(日本のポリフル・コロネルよりも大きい製品です)。

 

喉や食道に詰まらないようにするために、十分量の水(コップ1杯程度)でしっかりと胃まで流し込むことが重要です。

 

なお、ポリフル細粒は甘いようです(私は試せたことがありません)。

わずかに吸湿性がありますが、インタビューフォームを確認する限りでは、短期間・正しく保管されていれば、問題になることはないでしょう。

副作用・併用注意・禁忌・慎重投与

ポリフル・コロネルは体内に吸収されないために、全身性の副作用は起こりにくく、吐き気や下痢・便秘などの胃腸症状が中心です。

過敏症や発疹、検査値異常なども起こりえます。

 

併用禁忌の薬はありませんが、併用注意の薬は以下のようにいくつかあります。

活性型ビタミンD製剤(アルファカルシドール、カルシトリオール等)
カルシウム剤(L-アスパラギン酸カルシウム、乳酸カルシウム等)
強心配糖体(ジゴキシン等)
テトラサイクリン系抗生物質(テトラサイクリン、ミノサイクリン等)
ニューキノロン系抗菌剤(ノルフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、トスフロキサシントシル酸塩水和物等)
プロトンポンプ阻害剤(オメプラゾール、 ランソプラゾール等)
H2受容体拮抗剤(ファモチジン、ラニチジン等)
制酸剤(水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル等)

 

禁忌や慎重投与に該当する事項はいくつかありますが、治療を受ける立場としては、併用薬と病歴をしっかり伝えていれば問題になることはまずないでしょう。

禁忌・慎重投与を確認したい方はここをクリック
禁忌(次の患者には投与しないこと)
(1) 急性腹部疾患(虫垂炎,腸出血,潰瘍性結腸炎等)の患者〔症状を悪化させるおそれがある.〕
(2) 術後イレウス等の胃腸閉塞を引き起こすおそれのある患者〔症状を悪化させるおそれがある.〕
(3) 高カルシウム血症の患者〔高カルシウム血症を助長するおそれがある.〕
(4) 腎結石のある患者〔腎結石を助長するおそれがある.〕
(5) 腎不全(軽度及び透析中を除く)のある患者〔組織への石灰沈着を助長するおそれがある.〕
(6) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者慎重投与 (次の患者には慎重に投与すること)
(1)活性型ビタミンD製剤を服用中の患者〔高カルシウム血症があらわれやすい.〕
(2)強心配糖体の投与を受けている患者〔強心配糖体の作用を増強するおそれがある.〕
(3)高カルシウム血症があらわれやすい患者〔高カルシウム血症を起こすおそれがある.〕
(4)無酸症・低酸症が推定される患者及び胃全切除術の既往のある患者〔本剤の薬効が十分に発揮されない可能性がある.〕
(5)透析中の患者及び軽度の腎不全のある患者〔組織への石灰沈着を助長するおそれがある.〕

海外では子どもに市販薬として使用できる国もある

ポリフル・コロネルの主成分であるポリカルボフィルカルシウムは、アメリカなどでは市販薬として発売されています。

さらには、以下のように日本の医療用医薬品よりも使用出来る範囲が広いです。

  • 下痢にも適応がある(日本は過敏性腸症候群のみ)
  • 2歳から使える(日本は原則成人)
  • 1日6gまで使える(日本は3g)

日本の成人に使われる量(1.5g~)よりも、海外で6~12歳に使われる量(~2g)のほうが多くなることもあります。

 

アメリカで使ってるから日本でもOKとはなりませんが、日本でも子どもに必要とされるケースもあります。

子どもにも使用しやすくなり、選択肢として挙げやすくなればと思います。

子どもの慢性便秘と医療用の便秘薬については以下の記事でまとめています。

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