インフルエンザ治療薬の「イナビル」は幅広く使われており、子どもにも使われることがあります。
添付文書上は特に何歳から使えるのかは書いてありませんが、吸入する力が弱いと上手く吸えないかもしれません。
何歳ぐらいから使えるのか、メーカーからの情報などから考えてみたいと思います。
結論としては、子どもにはあまり推奨しにくいと考えています。
イナビルは何歳から使える?
イナビルは年齢制限を設けていませんが、臨床試験では3歳の子どもが含まれていました。
しかし、イナビルを3歳から適切に使うのは難しいでしょう。
少なくともうちの子ども達が3歳のころイナビルが処方されたとして、上手に吸わせる自信はありません。
吸入口に息を吹きかけて失敗が多そうな気がします。
イナビルを吸入の練習をせずに使った場合、10歳未満は63.6%、10歳以上も10%以上が適切に吸入できない可能性が指摘されています。
参考:ラニナミビルを投与前に行う吸入力確認及び吸入練習の有効性について
また、イナビルを十分に吸入するためには90L/minの吸気速度が必要という報告もあります。
参考:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/flu/topics/201208/526517.html
イナビルは適切に吸入出来なければ、期待した効果が出ません。
粉を飲んでも効果がないので、適切に吸入が出来るようになってからの使用するべきだと考えています。
イナビルには専用の吸入練習用デバイスがあるので、子どもや高齢の方は実際に使う前に練習したほうが良いでしょう。
10歳ぐらいまでは、イナビルを適切に吸うのは難しいのではないでしょうか。
イナビルの使い方
イナビルの使い方ですが、すぐに治療が終わることが特徴です。
- 10歳未満は1容器を計4吸入、時間を空けずに吸い切ります。
- 10歳以上は2容器を計8吸入、同様に吸い切ります。
いつも説明の仕方を迷ってるのですが、「この場で治療を終えることが出来るので、私の説明を聞きながら薬局で吸いませんか?」と伝えることが多いです。
「8回吸入します」とだけ伝えると、ぜんそくの吸入薬のように「1日1回で8日間」や、「1日2回朝晩で4日吸入」などと勘違いされることがあります。
複数回の吸入を時間を空けずに、吸いきってもらうことを念押しで伝えています。
インフルエンザの予防に使われる場合も基本的には同様ですが、10歳以上の場合、2日間に分けて1容器ずつ吸入するように指示されることもあります。
イナビルの吸入は、薬局などで薬剤師に手伝ってもらいながら吸入するほうがミスが無くて良いと考えています。
自宅でやる場合は、イナビル指導箋をしっかり読みこんでからか、イナビルの吸入方法(動画)を確認してからやるようにしましょう。
指導線は投薬時にもらえるはずです。
以前はイナビルがきちんと吸えているかどうかが全くわかりませんでしたが、今では一部透明に改良されており、吸い残しが多少わかるようになりました。
子どもや高齢者では薬がそれなりに残っていることも少なくないですので、「きちんと吸える力があるか」を使用前に調べることはとても大切です。
吸う力があるかは、病院か薬局で調べてもらえると思います。
イナビルの副作用
イナビルの添付文書で、0.5%以上の副作用として記載されているのは「下痢とALT上昇」の2つだけです。
イナビルはインフルエンザウイルスが感染・増殖する気道などの部位に長時間・直接効果を発揮します。
血液中に全く移行しないわけではありませんが、飲み薬や点滴のインフルエンザ治療薬と比較すると、副作用は少なくなりそうです。
ただし、以下の2つの内容には注意をしておきましょう。
- イナビルは乳製品アレルギーの原因になることがあります。
- 気管支けいれんのリスクがあるため、気管支ぜんそく等の呼吸器疾患がある方の使用は推奨されていません。
重度の乳製品アレルギーがある方や気管支ぜんそくなどがある方には向いていません。
イナビルの効果については疑問が残る
イナビルのインフルエンザへの効果については、疑問を感じています。
こちらでは詳細は割愛しますが、イナビルは日本以外では承認されていません。
ネブライザーを用いて吸入するイナビル吸入懸濁用についての記事内、「イナビルは日本でしか使われていない薬です」の項目で触れています。
イナビル吸入懸濁用160mgセットにの既存のイナビル吸入粉末剤との違いや、多剤と比較した時のメリット・デメリットについて考えています。まだ実際に使用されている例が少ないため、推測しか出来ていない内容もあることはご了承ください。[…]
イナビルに全く意味がないと考えているわけではありません。
処方された場合は適切に使うようにしましょう。
いくつか選択肢があるならば、あえてイナビルを使う理由としては「痛み無く治療がすぐに終わること」ぐらいではないかと考えています。
その観点で考えると、ゾフルーザがより理想的ではありますが、耐性などの観点から、少なくとも子どもへの使用に関してはまだ慎重になるべきだと考えています。
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