薬の適切な保管方法と使用期限の目安【分包された粉薬やシロップは短め】

薬の適切な保管方法と使用期限の目安【分包された粉薬やシロップは短め】

「どれぐらいの期間なら薬を保管しておける?」と質問されることは少なくありません。

しかし、残念ながら明確な決まりはありません。

 

もちろん薬には使用期限がありますが、それは適切な管理が出来ていた場合の品質等が保証される期間です。

不適切な管理だと、見た目は問題なくても、薬の成分が変質していることもあり得ます。

 

基本的な薬の保管方法と、使用期限の目安についてまとめていきます。

薬の適切な保管方法【温度・光・湿度】

適切な薬の保管においては、【温度・光・湿度】の3点が重要になります。

生鮮食品は適切な保管をしなければ、腐ったりカビが生えたりと、見た目でもわかりやすく判断ができることが多いです。

 

しかし、医薬品の場合は、保管が不適切でも外見上の変化が起こりにくいです。

そのため、普段から適切な管理をすることが重要になります。

薬の保管温度【室温と冷所】

医薬品の保管温度で多いのは、室温保存(1~30℃)冷所保存(1~15℃)の2つです。

特に指導がなかった場合は、室温保存で良いことが多いでしょう。

もちろん例外も多数ありまして、開封前のインスリンは2~8℃で管理します。

 

室温保存の薬は、基本的に40℃で6ヶ月以上安定していることが確認されています。

そのため、室温保存の薬に関しては、少しの時間30℃~40℃の範囲になったぐらいなら、今後半年は大丈夫と言えるでしょう。

ただし、長期間保管する薬であれば、温度はきっちりと守っておくことをお勧めします。

 

もちろん医療機関においては薬の保管は厳密に行うために、夏場や冬場には休日でもエアコンを使用します。

エコではありませんが、これは薬の品質を落とさないようにするためには必要なことです。

個人宅でここまでする必要は基本的にはありませんが、少なくとも直射日光のあたる場所は避けるなど、気を付けていただきたいと思います。

 

なお、特別に指示されていないものを冷蔵庫に保管することは個人的にはおすすめしていません。

冷蔵庫では保管場所次第では1℃を下回ることがありますし、冷蔵庫内と室内を出し入れしていると温度差で湿気を帯びやすくなります。

薬は遮光保存が重要(特に紫外線に注意)

光(その中でも紫外線)によって分解される薬は多いので、薬の保管は直接光に触れない場所で保管しましょう。

錠剤などの比較的安定していそうなものでも、光に不安定なものもあります。

 

特に光に弱い薬については、遮光袋などに入れられて薬をもらうこともあると思います。

遮光袋がついていたものは特に注意するようにしてください。

湿度(湿度が高くならないように注意)

湿度も薬の性質に影響を与えます。

湿度が高いと、成分が不安定になったり、色が変わったり、形がくずれてくることも考えられます。

錠剤が割れたりすることも起こります。

 

粉薬は特に湿度の影響を受けやすく、袋の中で固まったり、変色することも多々あります。

薬をもらった時と明らかに違う見た目になっている場合、使用は控えてください。

多く水を使うキッチンなどでは保管しないほうが良いでしょう。

温度・光・湿度を考慮した、理想的な薬の保管方法

室温で保管する薬の場合

温度があまり変わらない場所で、乾燥剤を入れて蓋をした缶の中で保管できれば、温度・光・湿度ともまず問題なく管理が出来ます。

短期間の使用であればここまでしなくても良いと思いますし、私もしていません。

しかし、長期間保管する予定があるならば、これぐらいしておいたほうが、実際に使う時に安心できます。

 

そして、薬箱の場所を決めておくことは、いざ使う時に探さなくても良くなるというメリットもあります。

掃除のタイミングで、数年前の薬が発掘されたこと、ありませんか?

冷所(1~15℃)で保存する薬の場合

シンプルに冷蔵庫で保管するのが一番楽でしょう。

ただし、冷気の吹き出し口近くは温度が下がりやすいので保管には向いていません。

また、霜が出来ている場合は、霜の近くで保管しないようにしましょう。

薬の使用期限の目安【分包された粉薬は短め】

ここまでで説明した保管方法を守っている前提で考えます。

というのも、在宅医療に関わっていると、いつもらったのかわからない薬が様々な場所に保管されている光景を何度も見かけます。

また、真夏の車内に数時間放置しただけでも大幅に品質が劣化することもありますので、そういう場合は当然除外します。

 

まず大原則として、薬は処方された日数で飲みきるものとして処方されています。

そのため、自己判断での長期間保管は推奨されていません。

ただし、熱性けいれんの薬や解熱鎮痛薬などの「必要時」に使う薬については、長期間保管しておくこともありますよね。

 

では、適切に管理できていれば、どれぐらいの期間使用可能なのでしょうか?

決まったルールはありませんが、私が患者さんにお伝えしているのは、以下の期間です。

薬の剤形や特徴保存可能期間(期限)
錠剤・カプセル剤、
粉薬(再分包されていないもの)
1年
一包化された薬、
薬局で分包された粉薬など
6ヶ月
シロップ剤原液ならば3ヶ月
水を加えたりしているなら最大7日
坐薬1年
目薬開封後は1ヶ月
開封前は1年
塗り薬開封後3ヶ月
開封前は1年

この期間に明確な根拠があるわけではありませんし、当然ながら薬の種類によっても変わってきます。

しかしながら、しっかりと医薬品の保管ができており、なおかつ医薬品の使用期限内であれば、この程度は保管できることが多いのではないかと考えています。

 

上の表について追記します。

薬局内で分包などしていない未開封の医薬品なら1年程度は安定していると思います。

一方で、一度開封して再分包したものは、湿気に弱く遮光性も失われるため、期限を短く設定しています。

 

シロップ剤は雑菌に触れる回数が多いので、他の飲み薬よりも短めの3ヶ月に設定しています。

シロップの調整時に水を加えた場合などは、より雑菌が繁殖しやすい環境になるのであまりあまり長持ちはしないでしょう。

また、「自宅で使用するスポイトが汚れていた」なども、保管期間を短くする原因になります。

 

目薬もとても汚れやすいので、開封後は1ヶ月で処分することをおすすめします。

 

塗り薬に関しては、あまり気にせず使っている方が多い気がしますが、汚れた手で触れば同然雑菌などが繁殖します。

目には見えないですけど軟膏チューブの口部分や、軟膏ツボの中は意外と雑菌が繁殖していると言われています。

毎回石鹸で手洗いした直後に使っていればもっと長持ちすると思いますが、そこまで清潔に使えている人はあまりいない気がします。

医薬品の長期保管は適切な管理が前提です

結局のところ、適切に保管出来ているか、きれいにつかえているかがポイントになります。

どこにも明確に薬の保管可能期間が書かれていないのはそのせいでしょう。

 

適切に管理していれば長持ちするのは多くの物事に共通します。

食べ物でも、車でも、時計でも、人間関係もそうでしょう。

 

人間関係を長持ちさせる方法はわかりませんが、薬を長持ちさせる方法はこの記事である程度わかってもらえたと思います。

 

薬は適切に保管するようにしましょう。

いつもらったかわからない薬は間違って使う前に処分することをおすすめします。

 

子どもの薬の使い方全般についてはこちらの記事でまとめています。