夜中にお子さんがいつもとは明らかに違う「クオックオッ」のように聞こえる、いつもと違う咳をしている場合、【クループ】になっている可能性があります。
クループ症候群の特徴や、外来で処方されることの多い【デカドロン】の飲ませ方などを説明します。
クループ症候群について【子どもの夜中の変な咳】
クループ症候群はパラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスなどのウイルス感染による喉の周囲の気道が腫れが起こります。
子どもの気道は大人と比べて狭いため、少しの腫れで気道が狭くなり、犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)という犬の遠吠えのような特徴的な咳が出ることがあります。
ただ、実際には犬の吠える声(ワンワン、ケンケン)などよりも、「クオッ」や「ヴオッ」に聞こえることが多く、オットセイのような鳴き声とも言われます。
薬剤師である私でも咳を聞けば、「クループかな?」と予想できる程度には特徴的な咳です。
クループは夜間に悪化しやすいですが、その時間はかかりつけの小児科は営業していない事がほとんどでしょう。
救急に行くかどうか迷ったら、「こどもの救急」や「小児救急電話相談 #8000」などを活用しましょう。
前者はネット、後者は電話で深夜でもある程度判断してくれます。
私なら、呼吸困難により顔色が悪くなっている場合や、首の付け根や肋骨の間などが呼吸のたびにへこんだりする場合などは救急に連れて行くと思います。
クループ症候群の治療薬
クループ症候群の治療には以下のような薬を使います。
- ボスミン(アドレナリン)吸入
- デカドロン(デキサメタゾン)内服
- その他症状に応じた薬
気道の腫れを抑える目的で、病院でボスミン(アドレナリン)の吸入をすることがあります。
ボスミンは病院内で吸入しますので、問題なく治療出来ると思います。
症状に応じた薬については解熱剤や痰の薬などの比較的使用頻度が高い薬が多く、使用にあたって困ることは少ないと思います。
一方、ステロイドのデカドロン(デキサメタゾン)の内服は少し大変かもしれません。
クループ治療の場合、デキサメタゾン0.1~0.15mg/kg(体重が10kgならデキサメタゾン1~1.5mg)を単回投与が基本です。
薬を飲むのが一回で済むので一見簡単そうではありますが、一回ということは「上手く飲めなければ代わりがない」ということでもあります。
そもそもの問題として、子どもは薬を上手く飲めなくて嘔吐してしまうことも少なくありません。
さらに、デカドロンには錠剤とエリキシル剤がありますが、どちらも飲みやすいとは言えない薬なので、なおさら嘔吐などに注意が必要です。
デカドロンを含めたステロイドの飲み薬は、一般的に子どもが苦手とする多くの抗生物質よりも苦いです。
強烈な苦味により嘔吐してしまうことがあるので、飲み方について説明します。
デカドロン錠・粉・エリキシルを飲みやすくする方法
デカドロン錠やそれを粉砕した粉薬
デカドロンには粉薬状の製品がないので、粉薬で渡された場合は錠剤を粉砕しているはずです。
先ほども書きましたが、デカドロンは苦く、大人でも苦くて飲みたくないと思うほどです。
ただし、錠剤で飲める年齢のお子さんなら丸のみしてしまえば問題ありません(それでも苦みは残りますが)。
デカドロンは比較的小型な錠剤ですが、クループ治療では一回で数錠飲むこともあり(20㎏なら0.5㎎錠を6錠など)なかなか大変です。
ちなみに、5歳ぐらいになると錠剤が飲める子が増えてきます。
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特に大変になるのは、粉薬しか飲めない年齢のお子さんで、強烈に苦い粉をたくさん飲まなければいけません。
過去に飲ませたことのある「かぜ薬」のような感覚で飲ませたら、嘔吐されると考えておくぐらいがちょうどよいでしょう。
そのため、デカドロンの粉を飲む場合、対策をすることが重要です!
※稀に対策なしで飲める子がいますが、クループ治療の場合は一回分しか薬が出ないので、失敗しないようにすることが重要です。
単シロップなどの甘いシロップを混ぜることもありますが、少量の単シロップでは誤魔化せないという意見を多く聞きます。
おすすめとしては、「にがいのにがいのとんでいけ」や「お薬飲めたね」などを使う場合、粉が表面に出てこないように上手く混ぜてあげれると苦味を感じにくいです。
より低年齢であれば、きなこやあんこと混ぜて(必要に応じて少量の水を加え)だんご状にしたものを口の側面に張り付けてお茶などで流し込む、なども良いかもしれません。
仕方なく何か食材に混ぜる場合には、一度離乳食で試したことのあるものから選びましょう。
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デカドロンエリキシルを飲みやすくする方法
デカドロンには錠剤以外にも、「デカドロンエリキシル」という液体の薬もあります。
デカドロン錠に比べるとダイレクトな苦さは少なく、甘みもあります。
苦みを比較するのであればデカドロンエリキシルのほうがまだ飲みやすいと感じるでしょう。
ただし、デカドロンエリキシルにはアルコールが含まれており、アルコール度数はおよそ5%あります。
子どものかぜに処方されるようなシロップとは味も風味も大きく異なるので、嫌がられることも少なくありません。
※クループの治療でデカドロンエリキシルを飲んだことによる、急性アルコール中毒の報告は、私が調べた範囲ではありません。
また、デカドロンエリキシルは一回で飲む量も多いです。
体重10kgの場合、デカドロンエリキシル換算では15mLほど飲む必要があります(デカドロン錠の粉砕なら0.3g程度なので見た目の量には大きく異なります)。
つまり、デカドロンエリキシルは独特の風味(苦みあり)に加えて、一回で飲む量が多いことが飲みにくさの原因です。
デカドロンエリキシルの独特の風味を消すには、大量の飲み物などに混ぜる必要があり、今度は全部飲ませ切るのが大変になってしまいます。
そのため、デカドロンエリキシルを単独で飲んでもらった後に味の濃い飲み物など(例えばオレンジジュースなど)でお口直しをするほうが良いでしょう。
なお、ステロイドを飲むことで、副作用を心配されるケースもあります。
しかし、クループ治療のにステロイドは1回のみですし、副作用が問題になることはまずないでしょう。
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