下痢型過敏性腸症候群(IBS)治療薬のイリボーは性別によって飲む量が変わる点に特徴があります。
添付文書上は成人(15歳以上)への使用を原則としていますが、他の治療薬で効果が見られない場合などに例外的に小児に使われるケースもあります。
私も中学生への処方例を知っており、そのケースでは問題なく継続出来ていましたが、事前に色々試した結果としての例外的な処方でした。
イリボーの基本的注意事項と子どもへの使用について考えます。
イリボーの基本と男女で量が異なる理由
イリボー(一般名:ラモセトロン塩酸塩)は選択的セロトニン5-HT3受容体に拮抗することで、下痢型の過敏性腸症候群(IBS)に使用されます。
食事・生活指導で改善が得られない下痢型IBSのみに使用し、便秘型には使いません。
下痢型IBSの場合、冷水を飲むことが症状悪化の原因になることがあります。
そのため、イリボーのように水無しでも飲みやすいOD錠があることは、飲みやすさという点においてはメリットが大きいと考えます。
- イリボー錠2.5μg
- イリボー錠5μg
- イリボーOD錠2.5μg
- イリボーOD錠5μg
イリボーの発売当初は男性にしか使用できませんでした。
女性に使えなかった理由としては以下のような理由があります。
- 効果に有意差が見られなかった
- 副作用が出やすい傾向があった
- 血中濃度が高い傾向があった
しかし、その後再度試験をして男性よりも少ない量で有効性・安全性が確認され、女性にも使えるようになっていますが、通常量が男女で異なる点にも注意が必要です。
- 男性:1回5μgを1日1回(最大量10μg)g
- 女性:1回2.5μgを1日1回(最大量5μg)
なお、イリボーは食事による吸収の影響は受けないため、食前・食後などの決まりはありません。
仮に1日2回服用しても蓄積性はなく、効果時間は限定的です。
健康成人に空腹時単回投与で、血中濃度が最大になるのが1~3時間後、半減期が5~7時間程度。
基本的には短期間で効果が出てくる薬ではありますが、効果が見られなかったとしても同量で1か月程度は様子をみるようにしてください。
イリボーの副作用・相互作用【便秘・硬便には注意が必要】
イリボーは下痢型のIBSのみに使用され、便秘型などののIBSには使用されません。
イリボーの主な副作用は、便秘(2.2%)、硬便(0.9%)と報告されており、普段から便秘の人に使用すると悪化させる可能性があります。
※便秘や硬便の発現頻度は女性のほうが高いと報告されています。
また、腹痛・血便・便秘・硬便などは、重大な副作用(虚血性大腸炎:0.1%未満、重篤な便秘など)の前触れの可能性があります。
滅多に起こることではありませんが、注意をしておくことも重要だと考えます。
イリボーはCYP1A2で代謝すると考えられており、CYP1A2阻害作用を有するフルボキサミンと併用することで、イリボーの血中濃度上昇や効果時間延長などの報告があります。
その他にも、便秘や硬便の原因になるような薬も併用注意薬として記載があります。
そのため、添付文書には以下の医薬品が併用注意薬として挙げられています。
- フルボキサミン
- 抗コリン作用を有する薬剤( 抗コリン剤、 三環系抗うつ剤、 フェノチアジン系薬剤、 モノアミン酸化酵素阻害剤)
- 止しゃ剤( ロペラミド塩酸塩等)
- アヘンアルカロイド系麻薬( アヘンチンキ)
中でもフルボキサミン(商品名デプロメール・ルボックスなど)は、併用に注意すべき薬が多いです。
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イリボーの子どもへの使用例はあるが限定的
イリボーは原則として15歳以上に使用される薬で、小児量は設定されていません。
子どもへの使用は多いわけではありませんが、実際に使用される例はあります。
そもそもイリボーが発売されているのが日本・韓国・タイの3か国であり、さらに子どものデータとなると、今後も集まりにくいでしょう。
子どもに使用される場合も大人と同様に、男女差・便秘などの副作用・併用薬などに注意が必要だと考えられます。
なお、成人へのメタ分析では男女ともに良い効果が出ています。
参考:Ramosetron for the treatment of irritable bowel syndrome with diarrhea: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
同成分で量の異なる「ナゼアOD錠0.1mg」はシスプラチン等の投与に伴う吐き気などの症状を緩和するために使用されます。
こちらも日本・韓国・タイ・フィリピン・インドネシアと一部の国でのみ使用されています。
子どもの下痢型IBSに薬を使う場合、イリボーよりもポリフル・コロネル(ポリカルボフィルカルシウム)が優先されると考えられます。
イリボー同様に原則として大人に使用する薬ではありませんが、海外での使用状況を考えるとポリカルボフィルカルシウムのほうが使いやすいと言えそうです。
こちらはイリボーと異なり、体内に吸収されないので、全身性の副作用リスクは比較的少ないと言えます。
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子どもの下痢や便秘などの相談は薬局でも少なくありません。
IBSを疑うようであれば、まずは受診をしたほうが良いでしょう。
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