コレクチム軟膏はアトピー治療の新しい選択肢となるか【処方日数制限|子どもの臨床試験実施中】

コレクチム軟膏はアトピー治療の新しい選択肢となるか【処方日数制限|子どもの臨床試験実施中】

アトピーの治療は長期間に及ぶことも多く、アトピー性皮膚炎の治療に悩まされている方は少なくありません。

現在のアトピー治療の基本は「外用ステロイド」と「プロトピック」です。

 

しかし外用ステロイドは皮膚萎縮などが、プロトピックは刺激感などが問題になることがあります。

アトピー治療に新たな選択肢として「コレクチム軟膏」が発売されています。

コレクチム軟膏の特徴【20年ぶりの新成分】

コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)はヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害することで、アトピー性皮膚炎を改善します。

外用のアトピー治療薬としては約20年ぶりとなる新しい成分です。

 

日本で初承認の薬であり、個人的には大変期待していますが、だからこそ適切な使用が望まれます。

使い所を間違えたことで、評価を落としてしまう医薬品もあります。

まずは、既存の治療で十分な効果を得られず、困っている方から使用していくことが望まれます。

 

なお、外用ステロイドとの効果の比較試験は行われていません。

外用ステロイドで問題なくコントロール出来ているケースに積極的に使う理由は乏しいように感じます。

コレクチム軟膏の使い方【1回5g(1本)まで】

コレクチム軟膏は、5gのチューブ入り製品として発売される予定です。

通常1日2回適量を患部に塗りますが、上限量として「1回あたりの使用量は5gまで」とされています。

 

コレクチム軟膏のチューブはは1FTUが0.5gになるように設計されています。

そのため、5gで塗れる範囲は10FTUとなり、大人の手のひら(指の部分も含む)20枚分の面積が目安となります。

成人であれば、10FTUは胸+腹+片腕ぐらいをカバーできる量と考えられています。

 

年齢・部位別のFTUは以下を目安にしましょう。

年齢・部位別FTUの目安

 

 

また、以下の2点も注意事項に挙げられています。

  1. 4週以内に改善がみられなければ中止
  2. 改善後は継続の必要性を検討し、漫然と使わない。

また、通常のステロイド外用剤と比較すると薬価が高く、費用負担は多めになります。

 

プロトピック軟膏同様に、粘膜、潰瘍、明らかに局面を形成しているびらん等への塗布は避けるようにしましょう。

コレクチム軟膏の副作用

コレクチム軟膏の副作用については、添付文書に以下のように記載があります。

第 III 相長期試験(QBA4-2 試験)において,副作用は 19.6%(69/352 例)に認められた。主な副作用は,適用部位毛包炎 3.1%(11/352 例)及び適用部位ざ瘡 2.8%(10/352 例)であった。なお,適用部位刺激感は 2.6%(9/352 例)に認められ,皮膚萎縮及び血管拡張は認められなかった。

現時点では副作用頻度も重篤な副作用リスクも高くなさそうです。

 

皮膚の萎縮や血管の拡張は見られていないようなので、ステロイドの副作用に抵抗がある人には使いやすいかもしれません。

また、刺激感についてもプロトピック軟膏よりは少なそうです(※数字だけでの単純比較が良いとは言えません)。

今のところ、外用ステロイドやプロトピックよりも副作用は少ない印象です。

 

しかし、日本が世界で初めて使う薬です。

頻度がとても低い副作用や、年単位で継続した場合の副作用、不適切使用に関連する副作用などのデータは十分ではありません。

 

また、内服のJAK阻害薬の場合、重篤な感染症の発現に注意が必要ですが、一般的に外用薬では全身性の副作用は少ないとされます。

ただし、大量に使った場合や、粘膜や潰瘍などに塗る場合は、その限りではありません。

適切に使用していくことが大切です。

 

以下の3点は必ず守りましょう。

  1. 現在は15歳以上が適応
  2. 上限量は1回5gまで
  3. 粘膜部やびらん部などには使わない

 

後半に現時点での私が聞き取れた範囲での使用感をまとめています。

コレクチム軟膏処方における注意【小児適応|処方日数制限】

最後に現状での処方に関する注意をしておきます。

処方日数制限期間中は14日分までの処方

コレクチム軟膏は新規の医薬品なので、発売後約1年間は14日分までしか処方が出来ません。

1日の最大量は10g(1回5gで1日2回使用)なので、14日分の140gが最大という計算になります。
※保険で切られないことを保証するものではありません。

 

使い方しだいではありますが、続ける場合は2週間毎に受診出来る人でなければ使えないとも言えます。

処方日数制限解除日は分かり次第追記します。

子どもにも使えるように臨床試験中

現在のところ、コレクチム軟膏は小児への使用は認められていません。

しかし、2歳~15歳への臨床試験が実施中なので、結果を待ちたいところです。

→臨床試験の結果が出ましたので次の項目で説明します。

低濃度のコレクチム軟膏も発売予定

新たに低濃度の「コレクチム軟膏0.25%」が発売される予定になりました。

現時点でのざっとした使い分けとしては、2歳以上の小児には0.25%(症状により0.5%)、成人には0.5%となります。

また、現在6か月以上2歳未満の乳幼児アトピー患者に対する臨床試験を実施中です。

ステロイド外用薬の代替として使用されることのあるプロトピック軟膏は2歳~しか使えないため、仮にコレクチム軟膏が6か月から使えるようになれば、需要は大きいかもしれません。

 

コレクチムの使用感(私の関わってきた範囲のみ)

コレクチム軟膏0.5%が発売されて以来、私が関わってきた範囲での印象です。

使用歴のある成人の方から聞き取りをしたところ、ストロングからミディアムランクのステロイドからコレクチム軟膏0.5%への切り替えで、いまいち十分な効果の実感を得られていないような印象があります。

また、コレクチム軟膏に変更すると薬代が上がるため、そこに不満があり、元に戻るケースもありました。
※5gチューブ一本700円(3割負担なら210円ほど)

 

それでも、ステロイドの長期大量使用を減らすための選択肢としては価値があります。

必要としている方に上手に使われるようになっていくのではないかと思っています。
特に子どものアトピー治療薬は大人に比べて選択肢が少ないです。

例えば、デュピクセン(デュピルマブ)も子どもへの安全性は確立していません。

コレクチム軟膏が子どもにも使える新たな選択肢になることを期待しています。

 

そのためには、臨床試験の結果はもちろんですが、適切に薬を使っていくことが大切です。

適切な治療が出来るように、医師薬剤師は適切に指導すること、そして患者さんがそれを守ることが求められます。

ぜひ、ご協力をお願いします。

 

最も比較されそうなプロトピック軟膏については以下の記事にまとめています。

刺激感などが出やすいため、使用初期は困ることもありますが、正常な皮膚からは吸収されないことはメリットと言えます。

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アトピー治療には外用ステロイドが最も使用されていると思います。

長期続けることによる副作用がないわけではありませんが、漠然とした「ステロイドは怖い」というイメージが強すぎるようにも感じます。

ステロイドに関する適切な知識を付けてもらいたいと思います。

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