水ぼうそうやヘルペスの治療に使うことのある、アシクロビルの飲ませ方や副作用などについての説明と、海外での使用状況について書いていきます。
バラシクロビルの内容と重複する内容に関しては簡潔にまとめています。
ゾビラックスは水ぼうそう・ヘルペスなどの治療薬【何時間空ける?】
アシクロビル(商品名ゾビラックス・アストリックドライシロップなど)は、水ぼうそうやヘルペスなどに使われる抗ウイルス薬です。
こどもには粉薬が使われることが多く、商品としてはゾビラックス顆粒40%や、アシクロビル(アストリック)ドライシロップ80%などがあります。
味や飲む量(嵩)の観点から、アストリックドライシロップ80%をおすすめすることが多いです。
こどもに使う場合1回20mg/kgを1日4回飲むのが基本です(最大量は病気によって異なります)。
1日4回はできるだけ等間隔で飲むのが好ましいとされますが、保育園などに行っているとなかなか時間調節が困難なことが多いです。
朝7時から夜の7時まで起きていると仮定すると、一日で起きている時間は12時間しかありません。
朝起きてから早めの時間と寝る前の2回は確定として、残りの2回は11時と15時ぐらいが目安になります。
年齢によって起きている時間も変わりますが、このように4時間程度は空けることが可能と言えます(現実的には困難ですが…)。
このようにアシクロビルを1日4回飲むのは大変です。
類似のバラシクロビルは1日2~3回服用で済むので、バラシクロビルのほうが保護者の方からは好まれる印象があります。
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薬を飲む期間も病気により異なります。
こどもに使う場合、まず以下の日数使用して、効果の判定を行います。
帯状疱疹:7日間
病気になってから早めに薬を飲んだほうが効果的で、帯状疱疹なら発疹が出てから5日以内、水ぼうそうなら発疹が出てから3日以内が望ましいとされています。
アシクロビル(ゾビラックス・アストリック)の飲ませ方
アシクロビルの原薬には苦味があり、顆粒もしくはドライシロップにすることで、その苦味を誤魔化しています。
ゾビラックスなどの顆粒タイプを飲む場合は、噛まずに飲み込んで、苦味が出ないようにしましょう。
アイスなどに混ぜて口に入れ、すぐに飲み物で流し込むなどの飲ませ方だと苦味をほぼ感じません。
飲み物に加えると底に溜まりやすいので、あまりおすすめ出来ません。
アストリックなどのドライシロップは、苦味をほぼ感じないように作られており、粉のままでも飲みやすい部類の薬だと思います。
さらに、顆粒が40%製剤でドライシロップが80%製剤なので、ドライシロップのほうが一回に飲む量も少なく済みます。
そのため、個人的にはジェネリックのアストリックドライシロップをおすすめすることが多いです。
ゾビラックスの副作用や注意点、過量投与
アシクロビルの副作用頻度は高くありません。
頻度は低いですが、脱水と意識障害の2点には注意をしておきましょう。
アシクロビル服用中の脱水は腎障害のリスクになるので、高熱や下痢がある場合などは意識的に多めの水分を飲むようにしましょう。
また、とても少ないですが意識障害の報告があり、自動車の運転等には注意するように説明することとされています。
過量投与により、腎不全や意識低下を含む精神神経症状、嘔吐などがおこる可能性があります。
一回に飲む量を間違えないように注意をお願いします。
ゾビラックスと他の薬の相互作用
アシクロビルと併用注意の薬には、シメチジン、プロベネシド、ミコフェノール酸モフェチル、テオフィリンがあります。
テオフィリンは小児ぜんそくにも使われるので、併用される可能性は一番高そうです。
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数日間しか飲まないとしても、併用薬を確認してもらうことはとても重要です。
薬剤師を活用してください。
水ぼうそうに抗ウイルス薬を使う意義
「病気だから、治療するのは当然」という考えもありますが、病気と患者さんの状態などを考慮して「あえて治療をしない」という選択をされることは珍しくありません。
薬を飲んでも特に変わらないのだとしたら、あえて飲む必要はないですよね。
いたずらに副作用リスクを増やすだけです。
今回、あえてこのような話をするのには理由がありまして、健康なこどもの水ぼうそうに対して抗ウイルス薬を使うかどうかは色々な意見があるからです。
米国小児科学会は12歳以下の健康なこどもの水ぼうそうに対しての抗ヘルペスウイルス薬を日常的に使うことは推奨していません。
参考:American Academy of Pediatrics Committee on Infectious Diseases: The use of oral acyclovir in otherwise healthy children with varicella.
また、信頼性の高いコクランによると、プラセボ(偽薬)群と比較して、アシクロビルを使用した群は1.1日早く解熱し、発疹の最大数が76病変ほど減少するが、合併症の発症には効果がなさそうだと報告されています。
参考:Acyclovir for treating varicella in otherwise healthy children and adolescents.
そのため、子どもの水ぼうそうは、あえて治療する必要性はないという意見もあります。
ただし、日本とアメリカでは医療制度の違いなどを中心に、金銭面や容易に病院に受診できるかなどの環境が大きく異なります。
個人的にはこどもの水ぼうそうに抗ヘルペスウイルス薬を使う価値はあると考えています。
私がそう考えるのは、日本の学校保健法では、水ぼうそうになった場合にはすべての発疹がかさぶたになるまでは出席停止とされていることです(アメリカとは基準が違います)。
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先程紹介したコクランの報告でも、発疹の最大数が減少すると言えますし、別の報告でも皮膚の治癒に関してはアシクロビルを服用したほうが早いという結論になっています。
出席停止期間を短くするという観点からは、ヘルペスウイルス薬を使う価値はあると考えています。
また、熱が早く下がる可能性があることは保護者の安心に繋がりますよね。
ただし、これらは発疹が出てから早めにアシクロビルを服用出来た場合に限ります。
そのため、早期に受診して治療が可能なのであれば、アシクロビルの価値は十分にあると考えています。
※あくまで健康な子どもに対しての話であり、重症化リスクの高い方については、速やかに治療することが大切です。
対して、風邪に抗生物質を使うことは推奨しかねます。
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水ぼうそうは感染力が高く、家族間の感染リスクもあります。
完全に防ぐのは難しいですが、少なくとも水ぶくれを潰さないようにしたり、タオルを共有しないようにしましょう。