小さいお子さんは目にしたものや手にしたものに強い関心があるので、色々なものを口に入れます。
口に入れたもののサイズによっては、そのまま飲み込むこともあります。
そのように、本来飲み込まないほうが良いものを誤って飲み込んでしまうことを「誤飲」と言います。
誤飲についての内容をまとめます。
緊急時には119番などで相談することをおすすめします。
また、飲み込んだものが食道ではなく、気道に入り込んでしまうことを「誤嚥」と言い、窒息の原因になることがあります。
誤嚥に関しては以下の記事をご覧ください。
小さい子どもは好奇心がいっぱいで、何でも口に入れてしまいます。誤って飲み込んでしまう「誤飲」にも注意が必要ですが、飲み込んだものが気道に入り込んでしまうことを「誤嚥(ごえん)」にも注意が必要です。誤嚥について説明します。[…]
子どもでもトイレットペーパーの芯に入るものは誤飲の可能性
トイレットペーパーの芯に入るものであれば、子どもは飲み込めると言われています。
まだ寝返りもできない頃であれば、手に届く範囲だけ気をつけておけば良いですが、寝返りを始め、はいはいをするようになると注意すべき範囲は急激に広がります。
誤飲に関しては、はいはいを始めてから3歳ぐらいの間は特に注意が必要になります。
誤飲の可能性があるものはしまっておくことを推奨しますし、万が一飲んでしまったら、、と思うものは確実にしまっておきましょう。
誤飲に気づいた場合の対応も、何を誤飲したかで大きく異なります。
何を飲んだかわからない状態で、無理やり吐かせたり、水や牛乳を大量に飲ませたりすると、もっと状況が悪くなってしまうこともありえます。
誤飲したものが中毒を起こしうるものなのか、そうでないものなのかで大きく分けて説明していきます。
子どもの誤飲①:中毒【タバコや医薬品など】
子どもが誤飲して中毒症状を起こすものとして、タバコ、医薬品や化粧品、洗剤類などがあります。
子どもの薬物中毒は半数以上が家庭内にあったものが原因とされています。
タバコの誤飲
子どもが誤飲するものの中で、最も多いとされるのがタバコです。
タバコを吸った場合のニコチン量は少なくても、タバコ本体には一本でも子どもの致死量を超えるニコチンが含まれている場合があります。
胃内pHの高さなどを考慮すると、誤飲した時にニコチン全量が吸収されることは考えにくいですが、それでもかなり危険なものだと認識しておく必要があります。
タバコのニコチンは、水に浸けておくと1時間もかからず全てが溶け出すので、タバコを水に浸けた液体はタバコそのものよりも危険です。
子どもにとっては、ぜんそくのリスクを上げる要因にもなります。タバコを吸うことは個人の自由ですが、「誰にも副流煙を吸わせない」つもりで吸っていただきたいと思います。
薬剤師の立場としては、電子タバコも含めたタバコ全般を推奨しません。
子どもがたばこを誤飲した場合は、刺激やニコチンの嘔吐作用により自然と吐き出すことが多いようですが、体内にどれだけ残っているのかはわかりません。
ある程度吐き出したからと安心せずに、受診をおすすめします。
医薬品【注意すべき成分は成分は倍増している】
こちらの報告によると、2004年と比較して、子どもが誤飲すると致命的となりうる医薬品は倍増しているようです。
この期間に様々な新薬が生まれ医療は進歩していますが、それに伴い子どもにとってリスクの高い薬が家庭で管理されるケースも増えているはずです。
また、平均寿命が伸びていることも一つの要因でしょうが、認知症も増えており、自宅での適切な薬の管理が出来ていないというケースも増えているのではないでしょうか。
核家族化は進みつつも共働きも増えるという環境から、祖父母の家でたまに面倒を見てもらうという家庭も多くなっていると思います。
普段子どもがいない家庭では、子どもの手の届くところで薬が管理されていることも珍しくありません。
私が在宅医療で関わったお宅のほとんどがそのような薬の管理になっています(同居の家族がいる場合も同様)。
日本の家庭で問題になりやすそうなのは、一部精神系の薬、心臓の薬、血圧の薬、てんかんの薬、麻薬(トラマドール含む)、血液に関する薬(抗血小板・抗凝固薬)、テオフィリンなど。
この中には量は異なるとはいえ、子どもに使う薬もあります。
祖父母の薬の管理には口を出しにくいとは思いますが、危険性があることは伝えておくと、万が一は防げるかもしれません。
化粧品・洗剤・殺虫剤
どの家庭にもあるもので、子どもが誤飲して中毒になる可能性があるものとして、化粧品・洗剤類などがあります。
液体などの口に入りやすい形状は容易に飲み込めてしまいます。
中毒という視点で特に注意が必要なのは、漂白剤や殺虫剤などの毒性が高いものです。
中毒の可能性があるものを誤飲した場合には、すぐに吐かせたほうが良いものもあります。
しかし、何を・いつ・どれぐらい飲んだかで対応が大きく異なります。
まずは病院や小児救急電話相談などに電話して対応を確認しましょう。
してはいけない対応例
以下にやってはいけないことを一部だけ挙げますが、あくまで一例です。
吐かせるべきではない場合
- 「酸性」や「アルカリ性」と書かれている洗剤類、石油製品(灯油、除光液、殺虫剤、マニキュア)などを誤飲
- 心疾患がある場合や、けいれんなどが起きている場合
- 生後6か月未満の子ども
これらの場合に無理に吐かせると、窒息や肺炎の原因になったり、食道や胃をさらに損傷させてしまう原因になります。
何も飲ませないほうが良い場合
水や牛乳を飲んだほうが良い場合もありますが、何も飲まないほうが良い場合もあるので注意が必要です。
何も飲ませないものがよい場合として、石油製品(灯油、除光液、殺虫剤、マニキュア)やたばこを誤飲などが挙げられます。
牛乳を飲むことで、かえって体内に吸収されやすくなるものもあります。
子どもの誤飲②:中毒以外【おもちゃ、ボタン電池など】
おもちゃや針、ボタン電池などは、窒息の原因になったり、消化器を傷つける原因などになります。
おもちゃなどの誤飲
おもちゃなどの誤飲の場合は、大きさや形状などにより対応が変わります。
小さいビー玉などの安易に飲み込めるサイズのものは、3日程度で便と一緒に出てくることが多いです。
誤飲したものの大きさによっては、のどや食道に引っかかったりすることもありますし、窒息につながることもあります。
5cm程度の大きいものは、胃に残ることもあるようです。
また、鋭利なもの(針などを含む)を飲み込んだ場合、消化器を傷つける可能性があります。
ボタン電池の誤飲
ボタン電池は子どものおもちゃにも使われることがあり、サイズも小さいので誤飲につながることがあります。
ボタン電池にはリチウムイオン式のものが多く、アルカリ電池よりも短時間で消化管を傷つけます。
ボタン電池を誤嚥した場合は、どこにあるのか、どの大きさのボタン電池を誤飲したのか、何歳なのか、などで処置の方法も変わります。
食道や胃の粘膜が傷付いたり、ひどい場合は臓器に穴を空けてしまうこともあります。
特に食道にある場合は薄く穴が空きやすいので、マグネットカテーテルなどを用いて、早く取り出す必要があります。
胃を通り過ぎ、十二指腸まで届けば特に症状もなく排泄されることが多いようです。
アメリカの中毒センター(National Capital Poison Center)によると、12歳以上の子が12mm以下の電池を誤飲した場合は、一部条件が満たされていれば、経過観察で大丈夫と記載があります。
参考:National Capital Poison Center Button Battery Ingestion Triage and Treatment Guideline
また、上記の資料には、1歳以上の子どもが過去12時間以内にリチウムイオン電池を誤飲した場合は、救急に行くまでにハチミツ10mLを10分ごとに飲ませるように記載されています。
ハチミツにはリチウムイオン電池の損傷を遅らせる効果があるようです。
中毒の心配がない固形物を誤飲した場合の対応
無理に吐かせないほうが良いことが多いです。
症状がまったく無さそうであれば、慌てずに病院や小児救急電話相談などに相談しましょう。
嘔吐が続いたり痛みがあるなどの症状があれば、飲み込んだものと同じものを持って(同じものがあれば対応の判断材料になります)すぐに病院に受診してください。
誤飲時の対応は何を誤飲したのかでバラバラです。
いざ誤飲してしまった場合は、緊急性が高い可能性もありますので、ネット(当記事含む)で調べて判断するのではなく、病院にすぐ行くように行動することをお薦めします。