「プラセボ」は以前よりも目や耳にすることが増えてきた気がします。
プラセボとは有効成分が入っていない偽物の薬のことです。
有効成分が入っていないので、効果はないはずですよね?
しかし、プラセボを使用すると、入っていないはずの有効成分のような効果が出ることがわかっています。
それだけでなく、副作用まで出やすくなると報告されています。
「病は気から」などのことわざ通り、思い込みは体に影響を及ぼすわけです。
この記事では以下について記載しています。
- プラセボとは何か
- プラセボ効果
- ノセボ効果(プラセボの副作用)のデータ
- プラセボはAmazonでも買えます。
なんだか不思議な「プラセボ」について、まとめていきます。
プラセボ(偽薬)は思い込みや自然治癒が影響?
本物の薬と同様の外見、味、重さをしているが、有効成分は入っていない偽物の薬。医薬品の有効性は二重盲検対照試験で、有効成分を含む実薬群と有効成分を含まないプラセボ群の効果の差から判断するのが良いとされている。成分としては、少量ではヒトに対してほとんど薬理的影響のないブドウ糖や乳糖が使われる事が多い。Placeboはラテン語で、「私は喜ばせる」の意。
臨床においても、薬理活性成分の含まれないプラセボを投与して、症状が回復する場合がある。特に痛みや下痢、不眠などの症状に対しては、偽薬にもかなりの効果があると考えられており、これには暗示のような心理的効果、自然治癒などが影響しているとされている。逆に偽薬によって、望まない副作用(有害作用)が現われることを、ノセボ効果 (ノシーボ効果、反偽薬効果、nocebo effect) と呼んでいる。
偽薬を処方する事に対する倫理的な批判もある。
引用:日本薬学会
プラセボとは偽物の薬のことです。
不思議なことに、プラセボを使うことで効果が出たり(プラセボ効果)、副作用が出ること(ノセボ効果)があります。
解説にもあるとおり、思い込みのような心理的な影響(薬を飲んだから良くなる/薬のせいで副作用が出る)や、時間経過による自然治癒が影響を与えることが考えられています。
一度整理します。
- プラセボ:有効成分のない偽の薬
- プラセボ効果:プラセボによる症状の改善
- ノセボ効果:プラセボによる副作用などの有害事象
プラセボ効果の例 クリックで開きます
- 例えば、「かぜ」の時に抗菌薬を使って早く良くなったという印象を持たれているなら、それはプラセボ効果による影響も考えられます。
いわゆる「かぜ」はウイルスが原因なので、抗菌薬(細菌を退治するくすりでウイルスには効かない)を飲んでも、風邪が早く良くなることはないでしょう。
正確に言うと、抗菌薬は「偽薬」ではなく「風邪に効かない薬」です。
「2次感染予防に抗菌薬」に関しては全く無意味とは思いませんが、一般的に風邪の時に抗菌薬を使う場合はメリットよりもデメリットが多いとされています。
- ほとんどの数はウイルスなので意味がない
- 副作用で下痢や嘔吐の原因になりえる
- 約5%の子どもが薬にアレルギーを持っており、アレルギーの原因になりうる。
- 耐性菌の原因になる
- 無駄にお金がかかる
プラセボは薬の効果判定などに使用されています。
新薬はプラセボと比較して効果があるかどうかを判断することが多いです。
一度承認されても、再度プラセボと比較してみたら効果が実証できずに発売中止になった薬もあります。
例えば、消炎薬として40年以上使われていた「ダーゼン」や「ノイチーム」は再評価された時に、プラセボとの有効性の差が確認出来ず販売中止になっています。
プラセボはそのように薬の効果の判定に使われます。
ノセボ効果について(プラセボの逆:デメリットの部分です)
ノセボ効果(プラセボによる副作用など)に関しても以下のような報告があります。
We identified 20 systematic reviews. These included 1271 randomized trials and 250,726 placebo-treated patients. The median prevalence of AEs in trial placebo groups was 49.1% (IQR 25.7-64.4%). The median rate of dropouts due to AEs was 5% (IQR 2.28-8.4%).
引用:Rapid overview of systematic reviews of nocebo effects reported by patients taking placebos in clinical trials.
プラセボ投与群の有害事象(ノセボ効果)の発生率の中央値は49.1%との報告です。
正直に申し上げますと、ここまでの数値が出るとは思っていませんでした。
薬をお渡しする時に副作用を伝えることは、ノセボ効果を増やす原因になるかもしれないと改めて感じています。
それを踏まえても、起こりうる副作用などを伝えないのは薬剤師倫理に反します。
第25条の2 薬剤師は調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
どこまで副作用を伝えることが適切なのかは、未だに悩むことがあります。
しかし、起こりうる重篤な副作用の初期症状については気づけるような注意喚起は忘れずにしていきたいと考えます。
このように、プラセボ(偽薬)によって、効果も副作用も出ることがあります。
プラセボ効果は薬がないと不安になる方に活用できないか
倫理的な問題も指摘されていますが、「実際には必要なさそうであるが薬を飲まないと不安な人」にプラセボを活用することで不要な副作用を回避できる可能性もあります。
「もう薬がなくても大丈夫」と医師に言われても、「なくなると心配だから出して下さい」とお願いした患者さんを何人も知っています。
また、どうしても眠れないから1日1回までと言われている眠剤を何錠も飲んでしまう患者さんもいます。
本来1錠までしか飲んではいけない薬を何錠も飲むと、当然副作用のリスクは上がっていきます。
プラセボをうまく活用出来れば、副作用リスクを上げないようにしつつ、患者さんの「薬を飲みたい」という行動欲求を満たすことが可能です。
もちろん、患者さんを「騙す」ことになるので、倫理的な問題もあります。
そのため、あまり積極的には提案されない印象はあります。
ただし、薬の過服用は至るところで起きています。
倫理的な問題も考慮する必要はありますが、現実にも向き合わねばなりません。
私の家族が高齢になった時に上記のような問題が起きたら、私はプラセボを利用したいと考えています。
もちろんそうならないことを願っていますが、誰にでも起こりうる可能性があることです。
プラセボは市販されていて、Amazonなども購入できます。
プラセボは、特別なものである必要はありません。
飲む人にとって「薬」だと信じて貰えればそれで十分です。
極端な話、ラムネみたいなものでも代用出来るかもしれません。
最近は美味しい薬も多いですので、違和感は少ないかもしれません。
よりリアリティを求めるのであれば、プラセボ製薬さんがプラセボの錠剤を作っています。
こちらの成分はほとんどが麦芽糖なので、安心して使えます。
どうしても困っている方は検討してみても良いかもしれません。
プラセボの使用を推奨しているわけではありませんが、うまく使うことで不利益を減らすことが出来るのであれば、検討してみても良いのではないかと思います。