ソリタ(経口補水液)の飲み方や注意点・簡易的な作り方【軽症胃腸炎なら薄めたりんごジュースも選択肢】

ソリタ(経口補水液)の飲み方や注意点・簡易的な作り方【軽症胃腸炎なら薄めたりんごジュースも選択肢】

子どもは水分の割合が高いので外気温の影響を受けやすい上に、体温調節機能が未熟なので脱水になりやすいです。

体内の水分の2%が失われると喉の渇きを感じ、5%で頭痛、8%以上でけいれんなどが起こり、10%以上になると失神などにつながり、20%に近づくと死に至ることもあります。

脱水は夏に起こるイメージがあると思いますが、冬は風邪・インフルエンザ・胃腸炎などの病気が流行るので、熱・嘔吐・下痢による脱水が増えたりします。

 

脱水を改善するために、口から効率的に水分を補給するための「経口補水液」が利用されることがあります。

テレビCMでも見かけることのある「OS-1」が最も有名な製品だと思います。

 

医療用医薬品にも、水に溶かして経口補水液を作る【ソリタ-T配合顆粒】というものがあります。

ソリタは1袋を100mLの水か白湯に溶かすと、経口補水液になる粉薬ですが、そこまで味が良くないため、「水で溶かしたら味を嫌がるので、ジュースに溶かして良いですか?」と相談されることがあります。

 

経口補水液の知識や簡易的なものの作り方、ソリタを溶かす場合の注意点などを説明します。

ソリタやOS-1などの経口補水液(ORS)についての基礎知識

経口補水液(Oral Rehydration Solution,ORS)は、そもそもコレラ患者へのものとして考案されました。

脱水時には点滴でも水分補給が出来ますが、点滴は痛みを伴います。

経口補水液なら痛みも傷もなく、自宅でも水分補給が出来るのが大きなメリットです。

 

アメリカの小児科学会やヨーロッパでは、コレラ以外の下痢に絞ったナトリウム濃度などが低い組成を推奨していますし、日本の経口補水液の組成もWHOの推奨濃度よりも低くなっています。

WHOが推奨している組成であるWHO-ORS(2002)と、経口補水液や一般的な飲料の組成は以下のようになっています(クリックで開きます)
Na
(mEq/L)
 K
(mEq/L)
ブドウ糖濃度
(mmol/L)
浸透圧
(mOsm/L)
WHO-ORS
(2002)
752075245
ソリタT配合顆粒2号602098249
ソリタT配合顆粒3号352096200
OS-15020100270
アクア
ライト

ORS
3520100200
ポカリ
スエット
215 324
りんご
ジュース
0.444 730
番茶05  

参考:日生気詩52(4):151-164,2015 、一部改変

 

表のとおり、経口補水液の組成はスポートドリンクやジュースなどとは大きく異なります。

組成によってどのように水分や電解質の吸収が変わってくるのかは、OS-1のホームページの動画がわかりやすいので参考にしてみてください。

脱水の改善には適切な組成の経口補水液を選ぶことが大切になります。

 

なお、経口補水液は基本的に美味しくありません。

経口補水液は「脱水の改善」を最優先の目的にしており、効率的に水分を補給するためには電解質のバランスが重要です。

つまり、経口補水液を飲みやすくするために甘みや塩分を調整しようとすると、今度は脱水対策としての効果が十分ではなくなってしまいます。

 

対して、よく見かけるスポーツドリンクなどは「飲みやすさ」を優先しているため、脱水対策としては不十分と言えます。

深刻な脱水でなければ、例えば夏場の運動後の水分補給にはスポーツドリンクでもいいと思います。

なお、スポーツドリンクは糖分の摂りすぎに、経口補水液は塩分の摂りすぎに注意が必要です。

経口補水液の飲ませ方と簡易な作り方

気持ちが悪い時に無理に水分を飲ませると嘔吐の原因になりかねません。

そういうときにはスプーン一杯ぐらいの少量から始め、大丈夫そうなら何度か繰り返して飲ませてみましょう。

追加で飲みたがるようなら、少し量を増やしても問題ありません。

 

嘔吐したから水分をしっかり補給しようと無理に大量に水分を飲むことは逆効果になる可能性すらあります。

乳児には母乳やミルクを少しづつ何回かに分けてあげましょう。

食事は食べたがるようになってからでも大丈夫です。

 

OS-1やソリタのような厳密な経口補水液とは異なりますが、簡易的な経口補水液なら家にあるものでも自作出来ます。

 

  1. 水1L
  2. 砂糖40g
  3. 塩3g

この3種類を混ぜるだけです。

少量のレモン果汁を加えると少し飲みやすくなります。

これはあくまで簡易的なものであり、目が落ち窪むなどの脱水を強く疑う症状があれば必ず受診するようにしてください。

ソリタT配合顆粒3号・2号の注意点

水分を効率的に吸収するためには経口補水液の組成が重要なのは理解してもらえたと思います。

では、最初に紹介した「ソリタ-T配合顆粒をジュースに溶かして良いのか?」について考えていきます。

 

ソリタ-T配合顆粒は水または白湯に溶かすことを想定して作られていますので、他のものに溶かしたら組成が変わり、期待される効果が出なくなる可能性があります。

そのため、基本的には【100mLの水または白湯に溶かして下さい。】との回答が妥当でしょう。

 

ミネラルウォーターやお茶に溶かすぐらいなら、そこまで影響はないかも知れません。

しかし、ジュースなどに混ぜたらカリウムや浸透圧が大きく変わりそうですので、基本的におすすめはしないというのが一般的でしょう。

 

ちなみに、添付文書には以下のように記載があります。

ミルク、フルーツジュース等の電解質を含む他の液と混合又は同時に投与する場合には、電解質量を十分に考慮すること。
引用:ソリタ-T配合顆粒3号添付文書

 

できるだけ正確に100mLの水に溶かすことも大切です。

水の量によって組成も大きく変わるため、ジュースで溶かすよりもさらにかけ離れた組成になることも考えられます。

ただし、胃腸炎の程度によっては、そこまで気にしなくても良いのかもしれません。

軽症の胃腸炎の場合は薄めたりんごジュースで良いかも

経口補水液は組成が大切なのは間違いありません。

しかし、軽度の胃腸炎の場合には、必ずしも経口補水液ではなくても良さそうです。

軽症の胃腸炎の場合には、2倍に薄めたりんごジュースのほうが治療失敗が少なかったという報告があります。
参考:Effect of Dilute Apple Juice and Preferred Fluids vs Electrolyte Maintenance Solution on Treatment Failure Among Children With Mild Gastroenteritis: A Randomized Clinical Trial.

※治療失敗については、入院・症状が続く・3%以上の体重減少などを対象にしています。

 

この報告では3回以上下痢嘔吐があった軽症の胃腸炎を対象にしています。

つまり、そもそも対象患者には経口補水液が必要ではなかった可能性も否定できません。

経口補水液が必要でない状態であれば、飲みやすい味のジュースのほうが水分補給しやすいのはわかりやすいと思います。

 

ソリタを処方してもらうよりも簡単なので、軽度の胃腸炎に対しての水分補給は2倍に薄めたりんごジュースでも良いのではないかと思います。

 

経口補水液と2倍に薄めたりんごジュースを比較しているので、ソリタ-T配合顆粒をりんごジュースで薄めることとは別の話として捉える必要がありますが、軽度の場合はまあ良いのかな。という気がしますね。

「飲めたら飲んで」ぐらいの説明で処方されている前提ならば、ソリタをジュースなどで溶かしても良いのかもしれません。

※おすすめするつもりはありません。

 

脱水の可能性が高いほど、経口補水液の重要性は上がります。

水分を飲んでも吐いてしまうという子に対しては、「水」で適切に薄めたソリタ-T配合顆粒をスプーン一杯から始めてください。

水分が取れるようになってきたら、2倍に薄めたりんごジュースに切り替えても良いかも知れません。

誰だって美味しい方が良いですからね。

 

しかし、多くの場合、ソリタは必要性が高いために処方されていると思います。

まずは100mLの水で溶かしてから使い始めるようにお願いします。