ガスモチン(成分名:モサプリドクエン酸塩)は、大人の慢性胃炎などに使われることが多い薬ですが、子どもの便秘に使われるケースもあります。
ガスモチン散は味も悪くないので子どもが嫌がることは少ないですが、添付文書遵守だと子どもの便秘には少々使いにくいという面もあります。
ガスモチンの使い方や注意点、子どもの便秘へのエビデンスなどについて考えていきます。
ガスモチンの使い方と注意点【味は悪くないです】
ガスモチンは選択的セロトニン5-HT4 受容体アゴニストであり、消化管運動の促進作用があります。
そもそも便秘の適応はありませんが、消化器症状もある便秘などに使われることはあります。
便秘薬の多くは腸を刺激する刺激性下剤、もしくは便に水分を与えて柔らかくする浸透圧性下剤などを用いますが、ガスモチンはどちらとも異なります。
他の便秘薬のような直接的な効果は少ないですが、便秘の原因次第では効果が期待出来るでしょう。
子どもに使われることは多いとは言えませんが、その場合にはガスモチン散が使われることもあります。
ちなみにガスモチンには以下の種類があります。
- ガスモチン錠5mg
- ガスモチン錠2.5mg
- ガスモチン散1%
ガスモチン散は白色の粉薬で、特に匂いはなくわずかな甘みがあります。
口に入れたらすぐに溶け、ザラザラ感も苦味も気にならなかったので、子どもでも飲みやすいと思います。
ガスモチンは慢性胃炎に伴う消化器症状に使われることが多いです。
また、小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインの幼児期便秘のその他の項目にも記載があるように、ガスモチンが小児便秘に使われることがあります。
しかし、ガスモチンは小児等を対象とした臨床試験は実施されておらず、小児量についても曖昧です。
成人の慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)には、1日15mgを3回に分けて食前または食後に服用します。
空腹時と比較して、食後に服用すると最高血中濃度到達時間は少々遅くなりますが、吸収量などに影響はありません。
食事による影響は少ないですが、併用薬には少し注意が必要です。
ガスモチンはCYP3A4で代謝され、エリスロマイシンと併用することで最高血中濃度が1.5倍程度に上昇するという報告があります。
また、アトロピンやブチルスコポラミンなどの抗コリン作用を有する薬剤との併用にも注意が必要です。
ガスモチンの副作用で報告されているものとしては、胃腸障害1.46%(内訳:下痢0.6%、腹痛0.3%、軟便0.17%など)や、口渇(口のかわき)0.27%などが挙げられます。
参考:使用成績調査・特別調査データ
重大な副作用として、劇症肝炎、肝機能障害、黄疸などの記載がありますが、いずれも頻度はかなり少なく、私は見かけたことはありません(今後もないでしょう)。
ガスモチンと同じ成分や類似の成分の市販薬は日本では発売されていません。
小児便秘へのエビデンス
日本においてガスモチンが子どもの便秘に使われることがありますが、添付文書上では以下の2点に問題があります。
- 小児の適応がない
- 便秘の適応がない
そもそもガスモチンの主成分である「モサプリド」は、アジア圏でしか使われていません。
そのため、便秘への使用や子どもへの使用のデータが少ないです。
便秘への使用ではなく、モサプリドを胃食道逆流症(GERD)の乳児に使用したデータなどは見つけることが出来ましたが、便秘の子どもに使用したデータはPubmedでは見つけることが出来ませんでした。
欧米ではモサプリドではなく、類似薬の選択的5-HT4受容体アゴニストのプルカロプリドなどが慢性便秘に使われることがあり、成人の慢性便秘には効果的というメタ分析があります。
しかし、子どもの機能性便秘に対するプルカロプリドの効果については、効果的という報告とそうでもないという報告の両方あり、判断が分かれるところだと考えます。
プルカロプリドは日本では使用できませんし、モサプリドとは結果が異なる可能性があります。
しかし、モサプリドを小児便秘へ使用した報告はPubmedでは見つからないため、1つの参考にしても良いのではないかと考えます。
単独での報告ではありませんが、プロバイオティクス+モサプリドが成人の便秘に効果的というメタ分析はあります。
このように、ガイドラインには記載がありますが、十分なエビデンスがあるとは言えないという側面もあります。
小児適応があれば使用されるケースも増え、データも揃ってくるのではないかと考えます。
子どもの慢性便秘と医療用の便秘薬については以下の記事でまとめています。
子どもは便秘になりやすいと言われますが、慢性便秘になるとなかなか大変です。うちの子も慢性便秘なので、大変さはとても良くわかります。まったく便秘にならない子もいるそうですが、便秘持ちの子を持つ私としては親としては羨ましい限りで[…]