ドンペリドン(ナウゼリン)はこどもから大人まで、吐き気止めとして使われることのある薬です。
特にこどもの吐き気止めは使える薬が少ないので、胃腸炎などの時に使われることもあります。
しかし、ドンペリドンは海外ではあまり使われていない薬ですし、吐き気止めとして効果的というデータも多くありません。
滅多に出ませんが、少し気になる副作用もあります。
医師によっては、処方しないという選択をすることがありますが、薬局では患者さんが処方されないことに納得されていない場合もあります。
なぜ医師がそのように判断したのかも含め、ドンペリドンについてまとめていきます。
ナウゼリンの量や剤形について【坐薬・ドライシロップ・錠】
ナウゼリン(ドンペリドン)は上部消化管や中枢に作用し、抗ドパミン作用により薬効を発現するとされています。
ナウゼリンには坐剤、ドライシロップ、錠剤などの剤形があります。
こどもは通常、ドンペリドンとして1日1.0〜2.0mg/kgを1日3回食前投与。
ただし、1日投与量はドンペリドンとして30mgを超えないこと。
成人は1回10mgを1日3回食前投与
坐剤については、年齢で投与量が変わり、以下の量を1日2~3回使います。
ナウゼリン坐剤10mg | 3歳未満 |
---|---|
ナウゼリン坐剤30mg | 3歳以上 |
ナウゼリン坐剤60mg | 成人 |
飲み薬は効果が出るのに30分弱かかることから、食前(食事の30分前)服用が推奨されています。
ちなみに、坐薬よりも飲み薬の方が、データ上は効果が早く出るとされていますが、そこまでの差を実感出来るかはなんとも言えません。
>>>坐薬の使い方と注意点【使う順番に注意】
ナウゼリンが嘔吐を改善するのかははっきりしていない
まずは、コクランの小児および青年急性胃腸炎の嘔吐を軽減する報告から見てみます。
参考:Antiemetics for reducing vomiting related to acute gastroenteritis in children and adolescents.
無料部分しか読めませんが、そもそもドンペリドンにについて言及されていません。
それほどデータが少ないということなのではないかと思います。
ちなみに、この報告では、以下のように結論付けられています。
- 経口オンダンセトロン(ゾフラン:日本では適応外)が嘔吐を減らしたり、点滴や入院を減らす
- オンダンセトロンとメトクロプラミドの静脈内投与で嘔吐と入院を減らす
- ジメンヒドリナートの坐薬(日本には無い)が嘔吐の期間を短縮する
また、「いくつかの昔からある薬は、許容できない副作用の懸念がある」と書かれています。
経口オンダンセトロンは、原則として抗ガン剤などに使用に伴う嘔吐などにしか使えず、ジメンヒドリナートは飲み薬(ドラマミン)しかありません。
日本においてはメトクロプラミドの静脈注射しか選択肢がないと言えそうです。
続いて、次のランダム化試験は、オンダンセトロンとドンペリドン、プラセボの単回経口投与が、胃腸炎の小児を改善させるかを調べています。
こちらの報告では、以下のように結論されています。
- 緊急治療の状況下では、胃腸炎による嘔吐があり、重度の脱水症状がない、1〜6歳の10人のこどものうち6人は、経口補水剤単独の投与で効果的に管理することができる
- 経口補水剤を飲めなかったこどもでは、オンダンセトロンの単回投与で、嘔吐する割合をへらすことができ、それにより経口補水を可能にする
- ドンペリドンは急性胃腸炎の嘔吐には効果がなかった
次のメタ分析では、2つの研究が、ドンペリドンがプラセボと比較して悪心および嘔吐の症状を減少させることを示したとされています。
参考:Use of antiemetic agents in acute gastroenteritis: a systematic review and meta-analysis.
しかしドンペリドンはサンプル数も少なく、結論としては胃腸炎のこどもにオンダンセトロンを推奨しています。
このように、ナウゼリン(ドンペリドン)が嘔吐などを改善するかどうかはあまりはっきりとしていません。
ナウゼリンの副作用について【ごくまれに錐体外路障害もある】
<小児>(主としてドライシロップによる)
承認時及び使用成績調査において、3,502 例中、副作用の発現例は 19 例(発現率0.5%)で、24 件であった。
主な副作用は下痢 9 件(0.3%)、錐体外路障害、眠気、発疹各 2 件(0.06%)等であった。
引用:ナウゼリンドライシロップ添付文書
上記のように、副作用頻度は基本的に高くは無いです。
一番多い下痢でも0.3%とされています。
気になるのは錐体外路障害で、添付文書では0.06%とされています。
※錐体外路障害は、自分の意志とは関係なく、体の一部(手足など)が動いてしまうなどの症状が現れます。
錐体外路障害は、特に1歳以下には注意するように添付文書にも記載があります。
小児において錐体外路症状、意識障害、痙攣が発現することがあるため、特に1才以下の乳児には用量に注意し、3才以下の乳幼児には7日以上の連用を避けること。
また、脱水状態、発熱時等では特に投与後の患者の状態に注意すること。
引用:ナウゼリンドライシロップ添付文書
ドンペリドンはメトクロプラミドと比較すると、血液脳関門を通りにくく、錐体外路障害を起こしにくいとされています。
頻度が高い副作用では無いですが、使用時には注意も必要だと考えます。
ちなみに、私の知っている範囲では起きたことはありませんし、私も飲んだことがあります。
ナウゼリン(ドンペリドン)の子どもへ使用について
- 嘔吐に効果があるのかははっきりしない
- 頻度はとても低いが、錐体外路障害への心配がある(特に子ども)
薬の使用に関しては、効果と関連有害事象の両面を検討する必要があります。
胃腸炎の嘔吐の場合、重度の脱水症状でなければ6割は経口補水剤単独の投与で効果的に管理することができると、紹介した報告にも記載がありました。
私個人としては、軽度の嘔吐には経口補水液で対処したいと考えています。
積極的に吐き気止めを希望しなくても良いのではないでしょうか。
漢方の五苓散がこどもの嘔吐に効果的な印象があります。
ドンペリドンと同じく効果についてのエビデンスは不十分ですが、錐体外路障害リスクをなくせるのはメリットとなりえます。
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