外用の抗生物質は怪我や処置をした時、ニキビの治療などで使われることがあります。
外用抗生物質の使用は「必要な部位だけ、指示された期間塗る」ことが重要です。
それぞれの特徴をまとめつつ、よく相談される質問に回答しています。
外用抗生物質の種類と特徴
外用抗生物質の特徴比較表
外用の抗生物質(一部は抗菌薬が正しい表記です)の種類と特徴を簡易的に図にまとめています。
年齢の目安は添付文書の情報を基に作成しています。
各製品の気になる点を抜き出すと以下の通り。
- 低年齢にも使いやすいのはゲンタシン
- アクアチムは剤形毎に適応が違う
- ダラシンは皮膚の刺激感やかゆみが出やすいかもしれない
- ゼビアックスは1日1回で良い
ゲンタシンは低年齢にも使いやすい
ゲンタシンの成分は、アミノグリコシド系抗生物質のゲンタマイシン硫酸塩です。
ゲンタシンには以下の種類があります。
- ゲンタシン軟膏0.1%
- ゲンタシンクリーム0.1%
適応症は、表在性皮膚感染症、慢性膿皮症、びらん・潰瘍の二次感染です。
1日1~数回患部に塗布します。
添付文書には、子どもの年齢などによる制限はありません。
そのため、子どもに最も使われている外用抗生物質なのではないかと思います。
使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施されていませんが、限られた範囲に使うのであれば、問題になることは少ないでしょう。
アクアチムは剤形毎に適応が違う点に注意
アクアチムの成分は、ニューキノロン系抗生物質のナジフロキサシンです。
アクアチムには以下の種類があります。
- アクアチムクリーム1%
- アクアチム軟膏1%
- アクアチムローション1%
アクアチムは剤形毎に適応症が異なります。
- アクアチムクリーム:表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)
- アクアチム軟膏:表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症
- アクアチムローション:ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)
アクアチムクリームが最も幅広く使えます。
使用方法は1日2回患部に塗布します。
なお、ざ瘡に使用する場合は洗顔後に塗布してください。
添付文書上では、「低出生体重児、新生児、乳児、幼児に対する安全性は確立していない」と記載があります。
添付文書遵守であれば、6歳未満には基本的に使えませんが、実際には結構使われている印象があります。
なお、アクアチムクリームは「使用経験が少ない」、アクアチム軟膏とローションは「使用経験がない」と添付文書には記載されています。
そのため、6歳未満には、アクアチムクリームが使用されることが多いのかもしれません。
皮膚のかゆみや赤みなどの副作用の報告がありますが、頻度はそこまで高くありません。
ダラシンTは刺激感やかゆみが出やすいかも
ダラシンTの成分は、リンコマイシン系抗生物質のクリンダマイシンリン酸エステルです。
ダラシンTには以下の種類があります。
- ダラシンTゲル1%
- ダラシンTローション1%
化膿性炎症を伴うざ瘡(ニキビ) のみに適応があります。
使用方法は1日2回患部に洗顔後に塗布します。
添付文書上では「小児等に対する安全性は確立していない(低出生体重児、新生児、乳児、幼児に対する使用経験がない。小児に対する使用経験が少ない)。 」と記載があります。
添付文書遵守であれば、15歳未満には使いにくいですが、小学校高学年ぐらいからは使われている印象があります。
ダラシンTは、皮膚の刺激感やかゆみは少々出やすいかもしれません。
承認時までの調査によると、ダラシンTゲルでは瘙痒(かゆみやチクチクする感じ)が18 件(5.84%)、ダラシンTローションでは刺激感が13件(11.4%)報告されています。
ゼビアックスローションは1日1回で13歳から
ゼビアックスローションの成分は、ニューキノロン系の抗生物質オゼノキサシンです。
ローション以外の種類はありません。
適応症は、表在性皮膚感染症と、化膿性炎症を伴うざ瘡(ニキビ)です。
ゼビアックスの使用方法は1日1回患部に塗布します。
他の外用抗生物質は1日複数回塗るのが基本なので、塗る回数はゼビアックスが一番少なく済みます。
いつもの時間に塗り忘れた場合は気がついた時に塗っても良いですが、1日1回は守るようにしてください。
ざ瘡(ニキビ)に使用する場合は、洗顔後に塗るようにしましょう。
添付文書上では「低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は13歳未満の小児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)。 」と記載があります。
13歳からの使用が原則となります。
皮膚のかゆみや赤みなどの副作用の報告がありますが、頻度はそこまで高くありません。
ゼビアックスローションの副作用としては、適用部位そう痒感8例(1.1%)、適用部位乾燥8例(1.1%)、適用部位刺激感7例(0.9%)などが報告されています。
外用抗生物質のよくある質問【塗る範囲は?続けて良い?】
基本的に傷口やニキビ以外の部分に塗るメリットはありません。
それどころか、耐性菌を生み出して今の薬が効かなくなるリスクがあります。
そうなると、薬を変更する必要が出てきますし、なかなか治らなくなることもあります。
必要部位にだけ塗るようにしてください。
長期間の使用も耐性菌を生み出す原因になります。
改善したら中止、もしくは一定期間使用しても効果がなければ中止、という対応が多いです。
特にニキビ治療で使用する場合、「少しでもニキビが出ないように」と過剰に使用されていることもあります。
過剰使用は短期的に改善することがあったとしても、長期的な視点では推奨しかねます。