「1歳になるまではちみつを与えないように」
子育てをするにあたり、何度か耳にしたことがあるのではないでしょうか。
1歳未満にはちみつをあげないようにする理由は「乳児ボツリヌス症」を予防するためです。
ただ、「乳児ボツリヌス症」について、詳しく知らない方は多いと思います。
乳児ボツリヌス症の原因ははちみつだけではありません。
乳児ボツリヌス症や注意すべき内容についてまとめます。
1歳未満に加熱後のはちみつも禁止【乳児ボツリヌス症】
乳児ボツリヌス症はボツリヌス毒素が原因で起こります。
外から直接ボツリヌス毒素を摂取したことが原因ではなく、ボツリヌス芽胞を摂取したことが原因です。
ボツリヌス毒素は加熱で対策も出来ますが、ボツリヌス芽胞は熱に強いです。
ボツリヌス芽胞:100℃・長時間でも滅菌できないこともある
加熱をしてもボツリヌス芽胞を完全に滅菌するのは現実的ではありません。
はちみつ自体を摂取しないように注意しましょう。
日本で1歳未満へのはちみつ禁止と注意がされるようになったのは1987年なので、育児経験者でも知らない方もおられると思います。
一緒に育児をする可能性がある人には念の為伝えたほうが良いかもしれません。
乳児ボツリヌス症は頻度が高いとは言えません。
日本では1986年~2012年の間で31例と、年に2人も報告がありません。
しかし、2017年3月に日本において、はちみつ摂取が原因の乳児ボツリヌス症による死亡が報告されており、軽視すべきことではないことは明らかです。
海外では報告数が多く、例えばアメリカでは1976年~2006年の間で2419例が報告されており、死亡例も20例ほどあります。
なぜ子どもだけボツリヌス症に注意すべきなのか?
なぜ子どものみボツリヌス症に注意すべきかというと、子どもはまだ腸内細菌叢が未成熟なのが一つの要因だと言われています。
ボツリヌス芽胞が腸内に生着することでボツリヌス毒素を出します。
大人は腸内細菌叢が出来上がっているので、ボツリヌス芽胞が生着することはまずないとされています。
以下は個人的な意見です。
1歳未満ははちみつ禁止と言われることが多いですが、「1歳になった途端に大丈夫になる」と言い切れる理由がはっきりとしません。
生後6か月未満に多いという報告もありますが、我が家の場合は1歳半ごろまではちみつを避けています。
1歳からなら大丈夫と言われることも多いので、基本的に大丈夫だろうとは思っていますが、念のため。
はちみつ以外には井戸水や洗い不十分な野菜にも注意
はちみつには多くのボツリヌス芽胞が含まれていると言われています。
ボツリヌス芽胞は熱にも強く、完全に取り除くことは困難なので、1歳未満のはちみつは禁止しましょう。
また、はちみつ入りの食品は意外とありまして、気づかないまま与えてしまうこともあるかもしれません。
我が家でついあげそうになってしまったのは、イチゴジャムです。
パンやジュースなどにも入っていることがあるので注意しましょう。
しかし、はちみつにだけ気をつけておけば大丈夫とも言えません。
ボツリヌス芽胞は、自然環境中(土、川、海など)にもあります。
はちみつを食べたことが原因と特定されている乳児ボツリヌス症の症例数は多くありません。
アメリカにおいては、乳児ボツリヌス症になった子どもの16%がはちみつを食べていたと報告されています。
Risk factors for infant botulism in the United States.
日本においては、2017年3月の死亡例1件のみがはちみつが原因と特定されています。
このように、乳児ボツリヌス症には、はちみつ以外が原因とされているものも多いです。
ボツリヌス症ファクトシートには以下のように記載があります。
乳児ボツリヌス症については、以前は蜂蜜だけが原因食品として考えられていましたが、自家製野菜スープが原因と推定された事例や井戸水が感染源と推定された事例も報告されています。
その他ベビーフード、コーンシロップ、缶詰、ハウスダストなどが可能性のある媒介物としてあげられています。
対策しやすいものとしては、井戸水や、水洗いが不十分な野菜などにも注意しましょう。
乳児ボツリヌス症の症状【便秘から始まる】
乳児ボツリヌス症は、死亡に至る可能性もありますが、初期症状での判別は困難で、診断も大変なようです。
乳児ボツリヌス症の症状は便秘から始まり、次第に元気が無くなったり哺乳量が減ります。
その後、筋肉の緊張が緩まり、よだれが増えたり、首のすわりも悪くなっていき、呼吸も弱まっていきます。
始めは便秘から始まるようですが、この時点で乳児ボツリヌス症と診断されることはまずないでしょう。
「1歳未満+はちみつを最近食べた+便秘」の3つが揃っていたとしても、乳児ボツリヌス症と診断されることは少ないではないかと思います。
乳児ボツリヌス症の可能性があったとしても、病院内で簡単に検査が出来るわけではありません。
やはり、可能な範囲で予防をすることが大切ではないかと考えます。
乳児ボツリヌス症のまとめ
乳児ボツリヌス症は死亡に至ることもあり、初期に診断するのも困難。
食品の加熱では対策ができないので、1歳未満は原因となるボツリヌス芽胞を摂取しないように注意。
ボツリヌス芽胞は自然環境中にもあり、特定の食品に注意するだけでは不十分だが、対策しやすい「はちみつ」は禁止。
乳児ボツリヌス症を100%防ぐための方法はありませんが、最低限はちみつには気をつけてください。