【ピボキシル基】抗菌薬が原因の低血糖について【低カルニチン血症|食事が取れないときには特に注意】

小さいお子さんでも低血糖を起こす可能性があることはご存知ですか?

低血糖は糖尿病の人だけしか関係ないと思われている方もおられるかも知れませんが、健康な方でも食生活の乱れなどが原因で起こりえます。

 

食事が不規則、バランスの悪い食事、下痢や嘔吐が続いて食事が取れない時などには注意が必要です。

これもとても大切なことですので、しっかり意識はするようにしましょう。

 

しかし、今回お伝えしたいことはそこではありません。

タイトルにある通り、【抗菌薬】が原因で起こる低血糖があります。

何かあったときに知っているかどうかで対応が変わることもあると思います。

そして、どんな抗菌薬でも起こるというわけではありません。

 

めったに起こることではありませんが、どういう条件下で起きやすいか、どの抗生剤を飲んでいたら注意が必要かをまとめていきます。

【ピボキシル基が原因】抗菌薬が子どもに低血糖を起こす原因【低カルニチン血症】

【ピボキシル基】を有している抗菌薬が低血糖の原因になり得ます。

なぜ低血糖の原因となってしまうか、詳しく知りたい方はこちらをクリックしてください。
低カルニチン血症、低血糖に至る機序1)2)
ピボキシル基を有する抗菌薬は、消化管吸収を促進する目的で、活性成分本体にピバリン酸がエステル結合されています。これらの薬は吸収後、代謝を受けてピバリン酸と活性本体になります。ピバリン酸はカルニチン抱合をうけピバロイルカルニチンとなり、尿中へ排泄されます。この結果、血清カルニチンが低下することが知られています。
カルニチンは、食物からの摂取のほか、アミノ酸からの生合成により体内に供給されます。また、ミトコンドリア内での脂肪酸β酸化に必須な因子です。空腹、飢餓状態では通常、脂肪酸β酸化によって必要なエネルギーを確保し、糖新生を行います。しかし、カルニチン欠乏状態だと脂肪酸β酸化ができず、糖新生が行えないため、低血糖を来たします。1): Melegh B,et al. Biochem Pharmacol. 1987; 36: 3405-3409.
2): Holme E, et al. Lancet. 1989; 2(8661): 469-473.
参照:ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について

簡単にまとめてしまうと、ピボキシル基を有した抗菌薬を飲んでいると、血清カルニチンが低下します。

その結果、空腹状態になったときに身体の中でエネルギーが作りにくくなる可能性があり、結果として低血糖になってしまうかもしれないということです。

※実際には少し言葉足らずです。

 

もちろん必ず低血糖になるわけではありません。

食事が取れない状態が続くときは注意をしておいたほうが良いでしょう。

 

※2019年8月追記

日本小児科学会も「ピボキシル基含有抗菌薬の服用に関連した低カルニチン血症に係る注意喚起」を出しています。

絶対に使ってはいけないという薬ではありませんが、あえてピボキシル基を含む抗菌薬を選ばなければいけない理由があることは、そこまで多くはないと考えています。

【ピボキシル基】を有している抗菌薬は具体的に何がある?

そんなに多くはありません。

成分で言えば以下の4種類のみです。

  1. セフジトレンピボキシル(メイアクト)
  2. セフカペンピボキシル(フロモックス)
  3. セフテラムピボキシル(トミロン)
  4. テビペネムピボキシル(オラペネム)

成分名(先発品名)で記載してあります。

 

繰り返しになりますが、これらの薬で必ず低血糖になるわけではありません。

適切に使うようにするべきだと言うことと、食事が取れなくならないような注意をしましょうということです。

【ピボキシル基】を有している抗菌薬を飲んだことが原因の低血糖はどのように見分けがつきますか?

明確に見分けがつくわけではありません。

該当する抗菌薬を服用中に、意識がはっきりしない、けいれんがおきたなどの症状があれば可能性があるかも知れません。

ただ、そのような場合はどのような原因であろうと受診することが多いでしょうし、迷わず受診しましょう。

カルニチン欠乏時の症状について詳しく知りたい方はこちらをクリックしてください。
カルニチン欠乏症が疑われる臨床症状・臨床徴候がある、あるいは過去にあり、その他の明確な原因が否定される場合。疑われる臨床症状としては、意識障害、けいれん、筋緊張低下・筋力低下・重度のこむら返り・重度の倦怠感、横紋筋融解症、脳症、空腹・感染で誘発される嘔吐、頻回嘔吐、精神・運動発達の遅延、体重増加不良、呼吸の異常、心肥大・心筋症・心機能低下および突然死(あるいはその家族歴)、反復性 Reye 様症候群などである。
参照:日本小児科学会『カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2016』

その他の低血糖に注意したほうが良い場合【バルプロ酸ナトリウムなど】

【てんかんの薬】バルプロ酸ナトリウム(デパケン)を使用している場合

子どもにも使う可能性のあるてんかんの薬の、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)を服用することで、ピボキシル基を有した

抗菌薬と同じように血清カルニチンが低下することが知られています。

胃ろうなどで栄養剤を使用している場合

何かしらの理由で食べ物を食べることが上手く出来ず、栄養剤を使用しているお子さんの場合には、栄養剤の種類によってはカルニチンが足りなくなる恐れがあります。

医薬品の場合、エネーボ™配合経腸用液などはカルニチンの含有量が比較的多いので、他と比較すると問題にはなりにくいでしょう。

血糖値を下げる薬などを誤飲した場合

子どもが薬を誤飲する事故は後を絶ちません。

大人の薬は、絶対に小さい子どもの手の届かないところに保管するようにしましょう。

 

過渡の心配は要らないでしょうが、知っておけば対応出来ることもあると思います。

食事が取れていない場合は、必ず受診時に医師に伝えるようにしましょう。

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