当ブログは1年半近く続けていますが、本業と比べると時間効率が桁違いに低にも関わらず続けられている理由を改めて考えてみました。
その結果、主に2つの理由が思い浮かびました。
- 薬が飲めない子どものサポートをしたい
- 保護者に適切な医療知識をつけてもらいたい
そもそも私が子どもの薬に本格的に興味を持ったのは、私に子どもが出来てからです。
それまではむしろ「調剤にも説明にも手間がかかる上、薬の種類が少なく興味が引かれない分野」という認識すらありました。
しかし、実際に子どもに薬を飲ませてみると、服薬支援の大切さが身にしみてわかるようになりました。
また、適切に受診が出来ていないケースもあり、それが結果として服薬を難しくしているような印象もあります。
子どもの服薬と受診の判断について、自分のモットーと意見を書いています。
子どもの服薬は時にその後の日常に関わる
上記はクラリスロマイシンドライシロップの「味」についてのみの説明です。
クラリスロマイシン錠なら「水で飲んでください。」で終われる内容ですね。
※もちろんこれ以外にも、用法・副作用・相互作用などの話もしています。
小さな子は錠剤が飲み込めない以上、どうしても粉やシロップなどの味を感じやすい剤形を使用することになります。
そして、原薬が苦い場合、苦味を隠しきるも難しいです。
※バラシクロビル顆粒のようなコーティングをすれば苦味は出なくなりますが、水に溶けない、コップの底に沈んで飲みにくいなどのデメリットも出てきます。
そのため、育児中の悩みの一つに「薬をうまく飲んでくれない」ことがあります。
悩みの一つである「病気」を治すための「薬」から新たな悩みが産まれています。
「薬を飲んでくれない」一番の原因は、小さな子どもに薬の必要性を理解してもらうことが難しいことにあると思います。
病気を治したい一心で無理やり薬を飲ませる→次からもっと嫌がるというループが出来ていきます。
それをきっかけに全ての薬を飲みたがらなくなる子もいます。
みなさんも、「得体のしれない苦いナニカ」を無理やり飲まされたら、次は抵抗しますよね。
小さな子どもにとっては、薬もそういうものに見えていると思います。
子どもの薬の飲み方の工夫を教えてあげることは、家での服薬の手助けになるのはもちろん、今後の薬に対する忌避感を避けるためにとても大切なことだと考えています。
もしかしたら「嫌いなものを無理やり飲ませる嫌な親」という印象を与え、親子関係にも関わってくるかもしれません。
また、安易に薬を食事に混ぜた結果、食事はまずいものという認識が出来て、食事を嫌がるようになった例もあります。
その後は普通に食事を取れるようになるまで時間がかかったそうです。
このように、「薬をどのように飲ませるか」ということは、薬が処方されている数日間の問題ではなく、今後の日常に影響を及ぼすこともあります。
そのため、どうしても薬を飲めないお子さんや、その保護者のために、薬の飲み方・使い方を提案していきたいと考えています。
薬局では、今の離乳食の進み具合や飲食させたことがあるものを聞き取りながら、子ども一人一人に対して、いくつかの具体的な提案をするようにしています。
しかし、どうしても広く情報を公開するブログでは、大まかな飲ませ方の情報しか紹介できないこと、ご了承いただければと思います。
受診の判断は難しいが「大丈夫そうなら…」という気持ちも大切
薬を飲むという行為は、基本的に病院に受診した後のことです。
小さい子の場合、市販薬の使用はあまり推奨できません。
子どもに薬を飲ませる時に苦労しやすい薬として抗生物質やステロイドがあります。
どちらも必要性が高いので病院で処方される最後までの飲み切ることが大切な薬です。
しかし、時に「念のために」それらの薬が処方されることもあります。
日本では抗生物質の不適切使用(必要ないのに処方されている)が問題になっています。
実際、ほとんどの医師は風邪に抗生物質が不要なことは理解しているでしょう(してもらっていなければ困ります)。
それでも抗生物質が処方され続けている理由の一つに、患者さんの要望があると思います。
「明日には会社に行かなければいけないから今日中に治したい」、「絶対に治りますか」などを患者さんに言われることも多いようです。
そして、その気持ちは時に医師にも影響を与えます。
「じゃあ念のために…」というケースもあるかもしれません。
- 「咳が1週間も続いている」
- 「軟便が3日続いているので心配」
- 「昨日一度吐いたので受診しました」
これらはインフルエンザが流行り学級閉鎖も所々で起きている時期に薬局で聞き取った、子どもを受診させた理由です。
心配だから受診することは非難されるようなことではありません。
しかし一方で、「これぐらいなら受診しなくても大丈夫そう」という判断も少しづつで良いので出来るようになってもらいたいと思います。
「受診しなくても大丈夫な状況で受診した結果、念のために抗生物質が出て、それを飲むのに苦労する」という事すら現実には起こっています。
軽度で受診するリスク、悪化しても受診しないリスク
先程挙げた、「乳児が一回嘔吐した」というケースは、全く珍しいことではありません。
嘔吐が頻回続いている、食事が全く取れない、脱水が疑われる、嘔吐物がおかしい、などの場合には受診という判断も大切だと思います。
しかし、「一度の嘔吐したがケロッとしておりいつもと様子も変わらない」のに、インフルエンザ溢れる小児科に行くのは、ベネフィット(親の安心と万が一のケース)とリスク(インフルエンザなどの感染など)のバランスが取れていないと感じます。
そのようなケースでは薬は処方されないか、処方されても上記は整腸剤だけでしょうから、薬をもらえるというメリットも特にありません。
このケースで吐き気止めが処方された場合、吐き気を抑えるベネフィットよりも、副作用のリスクのほうが大きくなると思います。
もちろん、頻回の嘔吐・下痢で食事も摂れず…のようなケースは別です。
1日何回までの嘔吐なら大丈夫などの明確なラインはないため、受診も様子見も自己判断になってしまいます。
それでも、受診することによるリスクも検討すべきだと感じます。
一方で、明らかに受診すべき状況なのに受診せず、即入院などの大事になるケースもあります。
医療や薬に不信感を感じていなかったケースや、親の仕事が忙しくて受診させれなかったというケースもありました。
このように受診判断が遅すぎる場合も、多くの薬を飲まないといけなくなることがあります。
結果として、本来必要なかった薬を飲むことになり、やはり薬を飲むことが大変になることがあります。
医療に関する情報は玉石混交だが、適切な知識は付けて欲しい
過度に受診してしまうケースも、反対に必要なのに受診しないケースも、根底にあるのは「病気や薬に対する知識不足」があると考えています。
知識不足には、誤った知識を得ている場合も含みます。
新聞・本・雑誌・テレビ・ネット…どの情報も、玉石混交で、間違っていることは珍しくありません。
少なくとも、一つの媒体だけの情報で適切な情報の全容は掴めないでしょう。
明らかに適切でない情報を広めている医療関係者もいますので、「医師」の肩書すら確実とは言えません。
医師がテレビ・雑誌・自著などで、明らかに適切でない情報を発信していることもあります。
処方内容を見て、受診したくないと感じる病院も稀にあります。
何を信じて良いのかわからなくなることもありますが、医療に関する情報は断言が難しいものがほとんどです。
薬に関して言えば、「薬=良いもの」でも、「薬=悪いもの」でもありません。
症状・年齢・体の機能・既往歴・性別…他にもいろいろなものを考慮した上で、役に立つ薬として存在できているわけです。
このブログも適切な情報の一つになるように注意は払っています。
しかし、「事実」をどのように解釈するのかは人それぞれであり、このブログでは私の意見を含んだフィルターを通しての説明になります。
あなたに今読んでもらっているこの記事も含め、誰かのフィルターを通した情報への盲信は危険です。
これは著名人でも、一般の人でも、あなたお世話になっている医療関係者でも同じです。
しかし、あなたが普段お世話になっている医療関係者にしかわからないことは多いです。
まずはその方々を信頼するようにしましょう。
そして、あなたの医療に関する知識の担い手の一つとして、このブログを加えてもらえると嬉しいです。
今後も子どもの服薬支援と保護者が適切な医療知識を得るサポートに努めていきたいと思います。