メラトベル顆粒について【子どもの睡眠障害の薬|海外の使用状況は?】

メラトベル顆粒について【子どもの睡眠障害の薬|海外の使用状況は?】

小児医療に関わっていると、ルールの範囲内で子どもに使える薬の少なさを実感することがあり、その1つに「睡眠障害の薬」があります。

睡眠障害というと高齢の方のイメージが強いかもしれませんが、小さい子どもでも問題になることがあります。

 

これまでは成人用の錠剤を粉砕したりして対応せざるを得ませんでしたが、新たに小児用の薬「メラトベル顆粒小児用0.2%」が発売される予定です。

発売前の時点ですが、事前に調べてみましたので紹介します。

メラトニンは海外でも子どもの睡眠障害に使われている

メラトベル顆粒小児用0.2%の有効成分「メラトニン」は、体内時計に関わるホルモンです。

メラトニンは睡眠や覚醒に関わっており、日中は分泌量が減り活動的に、また夜は分泌量が増え体を休ませるように調整しています。

このメラトニンの分泌が不十分だと、夜になっても眠くならなかったりすることがあります。

 

メラトニンは海外(EU)でも2歳以上の子ども用に「Slenyto」という錠剤が発売されていますが、日本で使える薬はありませんでした。

小児(メラトベルは6~15歳)の睡眠障害に使える薬が日本でも発売になり、安全な治療の選択肢が増えることを期待しています。

 

ただし、メラトベル顆粒の適応は「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善」のみで、6歳以上なら誰にでも使えるというわけではありません。

神経発達症にはADHDや自閉スペクトラム症などが含まれており、睡眠障害の合併率が高いとされています。

具体的な投与対象となる睡眠障害の分類はDSM-5における「不眠障害の入眠困難」及び「概日リズム睡眠‒覚醒障害群の睡眠相後退型」、 または、ICSD-3における「不眠症の慢性不眠障害における入眠困難」及び「概日リズム睡眠・覚醒障害群の睡眠・覚醒相後退障害」のようです。

 

「睡眠障害が神経発達症の特性を強め、それがさらなる睡眠障害につながる」という悪循環も指摘されてるため、神経発達症における睡眠障害の治療はとても重要です。

睡眠においては「朝日を浴びる、運動をする、夜は暗くして寝る」なども重要と言われます。

 

メラトニンに関連する薬として、ロゼレム(ラメルテオン)もあります。

添付文書上は小児への使用は推奨されていませんが、半錠や粉砕して小児の睡眠障害に使われているという報告は少なくありませんでした。

メラトベル顆粒の発売により、切り替えが進むと思います。

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メラトベル顆粒の飲み方・特徴【6~15歳】

メーカー情報によると、メラトベル顆粒は「白色~明るい灰黄色の結晶性の粉末」です。

添加剤は D-マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸の3種のみ。

味はまだ未確認ですが、サンプルをもらえるようならまた追記します。

光に不安定なため、家庭での保管時は光を避けて保管してください。

 

通常量は1日1回就寝前にメラトベル0.5g(メラトニンとして1mg)で、最大量は2g(メラトニンとして4mg)です。

増量する場合は、1週間以上の間隔を空けながらになります。

添付文書上の使用可能年齢は6歳以上15歳未満です。

 

メラトベルが血中濃度が最大になるのは服用から約30分後で、それから血中濃度が半分になるまで1.5~4時間程度です。

効果が最大になる時までに速やかに入眠できる状態(暗い部屋で布団に入って、スマホなどもかまっていないなど)にしないと、十分な効果は出ない可能性があります。

 

また、メラトベルは食後に服用すると、空腹時服用よりも最大濃度低下や効果時間延長などの恐れがあります。

※健康成人データ:Cmax:15.4%低下、AUC0-10h:18.7%増加、t1/2:11.9%増加

 

そのため、メラトベルの効果を十分に出すためには、食後時間を空けて、かつ就寝の直前に服用することが大切と考えられます。

※メラトベル顆粒は入眠潜時(布団に入ってから寝るまでの時間)の短縮に有効という結果が出ています。

また、無いとは思いますが、寝た後に一時的に起きて作業をする場合などには飲まないようにしてください。

 

投与量の調整や有効性の確認に3か月程度時間がかかることがあります。

もし効かないと思っても、急に中止することで神経発達症や睡眠障害の悪化の可能性もあります。

自己判断での中止は避けましょう。

メラトベル顆粒の安全性と副作用・禁忌などの注意点

メラトベル顆粒の副作用については、新薬であるためにまだ十分な情報があるとは言えません。

インタビューフォームを読む限り、眠気やめまい頭痛などに特に注意したほうが良さそうに感じます。

 

飲んだ直後の眠気はこの薬の効果ですが、翌朝以降に薬による眠気が出れば副作用です。

危険を伴うような機械操作をする可能性があれば、メラトベルの使用に適していません。
※成人の注意力テストで、正常範囲ながらも影響が認められています。

 

また、頻度は低そうですが、インタビューフォームには、収縮期血圧の低下、体重の増加、プロラクチンの増加なども記載があります。

しかし、日本では使用例がまだまだ少ないです。

 

副作用情報の補足として、海外での使用データなどを集めたシステマティックレビューを2つ紹介します。

1つ目の報告では重篤な有害事象は報告されておらず、子どもの睡眠を改善するのに安全で効果的という結論です。

総睡眠時間や入眠潜時の改善は見られましたが、夜間覚醒の頻度は認められていません。

参考:Melatonin for the management of sleep problems in children with neurodevelopmental disorders: a systematic review and meta-analysis.

 

2つ目の報告でも、有害事象は稀で、エスゾピクロンやゾルピデム(異なる作用機序の睡眠薬)はプラセボよりも有害事象が多かったと報告されています。

参考:Pharmacologic Treatments for Sleep Disorders in Children: A Systematic Review.

 

これらの内容から、メラトベルの安全性は代替薬よりも高そうに感じます。

もちろん、飲み方を間違えたり、併用禁忌・注意の薬と併用した場合などは別です。

 

確実に注意しなければいけない併用薬はフルボキサミンマレイン酸(商品名デプロメールなど)があります。

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服用時間を数時間空けたとしてもメラトベルの血中濃度が10倍以上になる可能性があるため、併用禁忌とされています。

また、キノロン系抗菌薬(シプロフロキサシン等)も、同じ薬物代謝酵素(CYP1A2)を阻害するため、同様に注意が必要と考えられます。

 

メラトベルはCYP1A1・CYP1B1・CYP2C19も代謝に関与すると報告されていますが、影響の大きさについての記述はありません。

現時点では大きな影響はないと思われますので、まずはCYP1A2への注意で良さそうです。

 

その他にはカフェインと喫煙にも注意が必要です(※もちろん子どもの喫煙はダメですが)。

カフェイン200mg服用1時間後にメラトニン6mg服用し、その1時間後及び3時間後にカフェイン200mg服用で、メラトニンの血中濃度が2倍以上になると報告されています。
※就寝1時間前はともかく、就寝後にカフェイン摂取はレアケースだと思います。

 

カフェイン200mgというのは、エナジードリンクに入れることが出来るカフェイン量の上限量です。

エナジードリンク自体子どもにはあまり推奨出来ませんが、多く飲む場合は注意をしておきましょう。

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また、喫煙により血中濃度は低下するとの報告があります。

メラトベル顆粒の使用例が増えないとわからないこともある

メラトベル顆粒の成分である「メラトニン」は実際に海外で子どもに使われており、報告を見ても基本的には安全性が高いと考えています。

しかし、実際に使ってみないとわからないことも当然あります。

 

実際使うことになった場合、安全性はもちろん「どのぐらい効果が実感できるのか」も重要です。

子ども用の睡眠改善の薬は、以前から求められていました。

だからこそ、慌てず急がず、ゆっくりと効果を見ていけると良いのではないかと思います。