適切な医療を受けるために、過度な要求はしないよう注意しましょう

薬剤師として働いていると、患者さんの薬を見て、過剰な(だと自分が感じる)薬が出ているなと感じることは少なくありません。

受診時に医師としっかり話し合った上で出ている薬だと思うので、極端な例を除き、多少過剰だと感じたとしても口を挟むことはありませんが、少しもやもやしながら投薬していることもあります。

 

過剰な薬などについて考えていきたいと思います。

こどもに薬を飲ませすぎと感じることもありますが、一概に過剰とは言えません。

「〇〇という薬は過剰な薬です。」というような言い方は基本的にはできません。
あくまで、この人のこの症状でこの薬(治療)が過剰かどうか。という視点で考えなければいけないでしょう。

 

私が見ている範囲でも、少し薬の種類が多いのではないかと感じることはあります。
しかし、薬剤師には診断が出来ません。
咳が出ているという事実はわかっても、ぜんそくかどうか、気管支炎かどうかは(私には)わかりません。
そのため、抗生物質や吸入ステロイドが本当に必要なのか、言い切れない部分があります。

もちろん、処方ミスと思われるもの、明らかに過剰/不足、相互作用に大きな問題があるもの(影響が出ないような小さな問題は日常的にあります)などがある場合には、責任を持って確認しています。

 

仮に、「絶対に幼稚園を休ませたくないので、明日までに絶対に熱を下げて欲しい」と医師に伝えた結果として本来必要ない抗生物質などの過剰な薬が出たとします。
適切な医療ではないかもしれませんが、見方によっては患者さんの希望に寄り添った医療と捉えることも出来ると思います。
私は、これを「過剰な薬だ!けしからん!」というつもりはありません(もやもやはします。)

 

共働きでどうしても仕事を休めないなどの事情も理解出来ます。
ただ、事情を考慮した上でも、果たしてそれが良いことなのか、もう少し考えていければと考えています。

 

どれぐらいの症状で受診したら良いのか判断するのも難しいですよね。
ちょっとした症状で受診する方も、本来受診すべき状況でも受診されない方もいます。
心配だったら受診すれば良いと考えています。

これぐらいなら大丈夫。という自己判断も結構怖いものです。
咳が続いているけどなかなか受診しなかった人が、肺炎で緊急入院になることもありました。

 

【心配で受診】の際に気をつけたいことは、その時に【過度な要求】をしないことだと思います。
「なんとか咳・鼻水をできる止めてください」、「すぐに良くして下さい」という要求が、過剰な医療につながる可能性があります。

「辛くて受診したのに薬が出なかった。」と思ったことはありませんか?
気持ちはわかりますが、薬が必要ないと判断されたということです。
薬が出なくて良かったと考えれると、過剰な医療を防げるかもしれません。

 

熱・咳・鼻水・嘔吐・下痢などは、無理に止めないほうが良いこともあります。
これらは全て、身体にとっての異物を排除するためのものでもあります。
軽い症状なら治療の必要が無いことも多いでしょう。

Choosing Wiselyをご存知ですか?小児版もあります。

【Choosing Wisely】をご存知ですか?
過剰な医療の抑制や、その適正化を目的として提示されているものです。
アメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics)もChoosing Wiselyを10項目挙げています。

アメリカ小児科学会のあげる10項目のうち2つほど例を挙げます。
私なりの意訳ですので、原文(英文です)を確認していただきたいと思います。

ウイルス性呼吸器疾患に抗生物質を使用すべきではありません。

大部分はウイルスによって引き起こされ、子どもの呼吸器疾患に対する抗生物質処方の50%は不要であると推定されている。
ウィルス性呼吸器疾患に対する抗生物質の使用は、医療費の高額化、有害な事象の原因、抗生物質耐性につながる可能性もある。

咳止めや風邪薬は、幼児の呼吸器疾患に対して処方、推奨、または使用すべきではありません。

研究によって、これらが子どもにほとんど有益ではなく、潜在的に深刻な副作用を有する可能性があることを示されている。
子ども用の咳止めや風邪薬には複数の成分が含まれているものもあり、別の薬と組み合わせることで過剰になる可能性がある。

 

私としては、どちらの納得できる内容です。

そして、風邪の時に抗生剤・咳止め・風邪薬を希望されることは珍しくありません。

希望する理由の一つに、【正しい知識を知らないから】があるならば、是非知識をつけていただきたいと思います。

私もその手助けができれば良いと考えています。

 

検査をするかどうか、薬を出すかどうかは医師が決めることではありますが、【Choosing Wisely】は一般の方にも広がってほしいものだと考えています。

医師や薬剤師はあまり薬を使わない?→適切に使っている印象があります。

私の個人的な印象でしかありませんが、医師や薬剤師は、ちょっとした症状での受診が少ないように感じます。
誤解しないでいただきたいのは、医師や薬剤師が薬を使わないと言っているわけではありません。

必要な時だけ、適切に薬を使っている人が多い印象です。

 

医師・薬剤師は薬を飲まないというような記事を目にすることもありますが、それはとても極端な意見です。

風邪の際には抗生物質が不要でも、例えば溶連菌感染症の場合、合併症予防のために抗生剤を5~10日程度続けた方が良いです。

私も常備薬を持っていますし、辛ければ受診します。
当然、子どもにも受診が必要だと判断すれば受診しますし、薬も飲ませます。

 

過度な要求をなくしていければ、適切な医療が増えると信じています。
大切なことは、患者さんも適切な医療を受けるために適切な知識を持つことではないでしょうか。