エスクレ坐剤の特徴・使い方・注意点など【乳幼児の検査時の鎮静など】

エスクレ坐剤の特徴・使い方・注意点など【乳幼児の検査時の鎮静など】

私もあまり調剤することはありませんが、エスクレ坐剤という小児の薬があります。

エスクレ坐剤は「抱水クロラール」を成分とし、主に乳幼児の検査用の鎮静剤として使われます。

乳幼児にじっとしていないといけない検査(CT・MRIなど)を行うときなどに、緊張を抑え眠たくさせる目的で使われることが多いです。

エスクレ坐剤の特徴や注意点についてまとめます。

エスクレ坐剤の特徴・使い方・保管方法

検査用の鎮静剤として使われる薬は他にもありますが、エスクレ坐剤は早く効き、短時間で効果が消えます。
※インタビューフォームによると、崩壊時間は10分以内、使用後10~30分で入眠し、40~70分程度で覚醒する。

また、治療に使用する量では、呼吸や血圧に与える影響は自然睡眠とほぼ変わらないとされています。

 

使いやすいようにも感じますが、使用されるのは主に乳幼児です。

その理由として、エスクレ坐剤の必要量が挙げられます。

エスクレ坐剤の添付文章上の通常使用量は「30~50mg/kg」で、エスクレ坐剤の規格は「250(mg)」と「500(mg)」の2種類です。

 

体重10kgの場合の目安量は300~500mgで、「500」を1回1個程度。

つまり体重20kgの場合なら「500」を2個、30kgなら「500」を3個というふうに、体重が増えると必要な坐薬の個数が増えていきます。
※上限量は1.5g(エスクレ坐剤500なら3個)です。

そのため、多くの場合は未就学児に使用されます。

 

また成分の「抱水クロラール」は不快な匂いに加えて刺激性や苦味などがあるため、飲み薬としては使いにくいとされます。

エスクレ坐剤ならその点も問題なく、かつ経口投与や注腸と同等の効果が得られます。

 

このような理由から、坐薬として乳幼児の検査用の鎮静剤として使われることが多いです。

検査以外にも、けいれんに使われることもあります。

保険適応外ですが、小さい子の入眠障害に使われるケースもあるようです。

 

エスクレ坐剤は広く用いられるその他の坐薬とは異なるレクタルカプセル剤なので、見た目にも違和感があるかもしれません。

抱水クロラール坐剤入れる向き
間違えそうですが、画像左側の太いほうから肛門に挿入します。

 

坐剤の表面もしくは肛門にベビーオイルなどを塗るなどすると入れやすくなります。

なお、エスクレ坐剤の表面を水で濡らすと変形の原因になり、入れにくくなるのでご注意下さい。

 

室温で長期間、もしくは高温で短期間の状況で、溶けるまでの時間が延長されることが報告されています。

あまり自宅で保管することはないかもしれませんが、「湿気をさけて冷暗所」で保存してください。

注意点【禁忌・副作用・併用注意】

エスクレ坐剤の表面にはゼラチンが使用されているため、ゼラチンアレルギーの人には禁忌とされます。

その他にも、エスクレ坐剤と同じように体内でトリクロロエタノールに代謝される「トリクロホスナトリウム」の過敏症、そして「急性間けつ性ポルフィリン症」は禁忌の対象です。

 

肝臓・腎臓・心臓の疾患、呼吸機能が低下している、そして虚弱者も慎重投与の対象です。

子どもへの使用も慎重に判断する必要があります。

また、連用により耐性・依存性などを生じることもあり、急激に量を減らす/中止すると離脱症状のおそれがあります。

 

併用注意薬は、中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等、モノアミン酸化酵素阻害剤)、アルコール、ワルファリン等が報告されています。

 

副作用としては下痢(0.33%)、食欲不振、徐脈・呼吸緩徐も1件報告があります。

重大な副作用として、無呼吸、呼吸抑制、ショック、依存性(いずれも頻度不明)があらわれることがあります。

 

過量投与により呼吸抑制・徐脈・血圧低下が認められることがあるため、医師の指示を超えて使用はしないように。

挿入後10分以内に排泄された場合、形状が保たれていたとしても一部吸収されている可能性があるので、再投与には注意が必要です。

 

このように注意点は少なくないですが、事前に使用に問題ないことを確認さえしていれば、実際にはほぼ問題なく使えるのではないかと考えます。

エスクレ坐剤は小学生以上には十分な量使いにくい薬です。

同じように使われる飲み薬として「トリクロリールシロップ」がありますが、効くまでの時間や効果時間などの違いに注意が必要です。