熱を下げたり痛みを抑える目的で使われるアセトアミノフェンについて気になる点をまとめました。
主な内容は以下の通りです。
今回のポイント
・効果持続目安時間は4時間弱
・解熱効果は最大で1~2℃程度の熱を数時間抑える
・副作用の心配は少ないが過剰はNG
・空腹時でも問題なさそう
少々長めの内容になりますので、気になるところだけでも見ていってください。
アセトアミノフェンの効くまでの時間と効果持続時間
アセトアミノフェンは熱や痛みを抑える薬ですが、「どれぐらいで効果が出るのか」、「どれぐらい効果が続くのか」は一番多く聞かれる質問です。
アセトアミノフェンの治療上有効な血中濃度ははっきりしませんが、アンヒバ坐薬に記載のある「2.4~6.4μg/mL」を基準として考えます。
血中濃度がこの範囲であれば、効果が出ていると考えることが出来ます。
アンヒバ坐薬の場合、投与後1時間程度で2.4μg/mLを超え、4時間経つ前に2.4μg/mLを下回っています。
カロナールシロップ・20%細粒・錠剤の場合、投与後30分以内には2.4μg/mLを超えて、2.4μg/mLを下回るのは4時間になる前です。
※それぞれの医薬品インタビューフォームのデータを参照
以上より、アセトアミノフェンが効き始めるまでにかかる時間は30分弱~1時間、効果持続時間は4時間弱が一つの目安と考えることが出来るでしょう。
参考として、最高血中濃度到達時間は、アンヒバ坐薬が1.6時間に対し、カロナールシロップは0.59時間、20%細粒が0.39時間、カロナール錠は0.46時間です。
それぞれ同一条件で行っているわけではありませんが、アセトアミノフェンの坐薬は同一成分の飲み薬よりも効き始めは遅い可能性があります。
とはいえ、実感できるほど効果発現までの時間差はないような気がします。
アセトアミノフェンは何度ぐらい熱を下げるのか
「解熱剤が効かない」というのは、保護者からの問い合わせが多い内容の一つです。
残念ながら、アセトアミノフェンの解熱効果は限定的です。
以下の報告を参考にすると、1時間後及び3時間後の解熱効果は1~2℃と考えることが出来ます。
参考:Comparison of antipyretic effectiveness of equal doses of rectal and oral acetaminophen in children.
また、小児科診療ガイドラインには「1.2~1.4℃」とあります。
つまりアセトアミノフェンの解熱効果は、「最大で1~2℃程度の熱を数時間抑える」程度です。
39度の熱を平熱にするような効果はありませんし、「一時的に体温の上昇が解熱剤の効果を上回り、解熱剤を使ったのに熱が上がった」なんてことも起こりえます。
なお、平熱時に使用しても基本的に熱は下がらないと考えられています。
低体温の報告もわずかにありますが、海外でも問題視されておらず、過度な心配は不要です。
痛み止めとして使用される場合には、熱のことは気にしなくてよさそうです。
アセトアミノフェンの副作用【高用量で腹痛・下痢】
アセトアミノフェンの副作用頻度は高くありません。
アンヒバ坐剤の副作用報告を見ると、副作用は6090例中14例(0.23%)の15件で、内訳は皮疹4件、食欲不振3件、下痢・軟便・便意・嘔吐が各2件です。
重篤な副作用が起こる可能性がないとは言えませんが、他の多くの医薬品より頻度が高いとは言えません。
また、アセトアミノフェン(パラセタモール)と、プラセボ、物理的冷却方法(スポンジ、扇風機)を比較したコクランレビューがあります。
こちらの報告では、十分なデータ数ではないとしながらも、重篤な副作用報告はなく、軽度な副作用頻度も優位な差は出ていません。
参考:Paracetamol versus placebo or physical methods for treating fever in children
適正量のアセトアミノフェンは過度に副作用の心配をする必要はないと考えます。
当然ながら、適正に使わなかった場合は問題になることがあります。
熱が下がらなかったとしても指示を超えてアセトアミノフェンを使わないようにしてください。
アセトアミノフェンの過量投与は、肝障害などを引き起こすことがあります。
また、高用量投与で腹痛や下痢の副作用が出ることがありますが、それが副作用なのか、風邪に伴う症状なのかは区別は難しいと思われます。
アセトアミノフェンは空腹時を避けたほうが良いのか
アセトアミノフェンの添付文書には「空腹時の投与は避けさせることが望ましい。」と記載があります。
基本的には食前・食間・食後などの用法の指示を守ることは重要です。
しかし、個人的には、アセトアミノフェンの空腹時投与についてはあまり気にしなくても良いと考えています。
アセトアミノフェンの効果は食事による影響を受けるのか
薬と食事のタイミングで最初に気になるのは、「食事により薬の吸収などに影響が出る」ことです。
アセトアミノフェンの錠剤である、カロナール錠のインタビューフォームには以下の記載があります。
食事・併用薬の影響
糖分の多い餡、クラッカー、ゼリーや炭水化物を多く含む食事とともに服用すると、炭水化物と複合体を形成してアセトアミノフェンの初期吸収速度が減少する。
吸収量は変わらないが、急速な効果を望むときはこれらとともに服用しない方がよい。
糖質(炭水化物含む)が多い食事と同時に服用することで、吸収速度は落ちるようですが、吸収量は変わらないということですので、食事の影響はあまり考えなくても良さそうです。
以下の報告でもパラセタモール(アセトアミノフェンのことです)の効果は、食事の影響はそれほど受けないとの結論です。
参考:Effects of food on pharmacokinetics of immediate release oral formulations of aspirin, dipyrone, paracetamol and NSAIDs – a systematic review.
アセトアミノフェンは胃腸障害の原因になるのか?
大人の痛み止めとしてよく使われるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、プロスタグランジン類の合成を抑制して胃腸障害につながることがあるので空腹時に飲むことが推奨されています。
しかし、アセトアミノフェンはNSAIDsよりもプロスタグランジン類の合成を抑制する効果は弱いとされていますが、胃腸障害の原因になることがあるのでしょうか?
ケトプロフェン、アセトアミノフェン、プラセボを7日間服用した前後に胃粘膜の状態を確認した報告では、アセトアミノフェンはプラセボと比較して胃粘膜損傷を増やすことはなさそうです。
参考:An endoscopic comparison of gastroduodenal injury with over-the-counter doses of ketoprofen and acetaminophen.
別の報告では、イブプロフェンによる胃粘膜損傷に対して、アセトアミノフェンは胃の保護効果が示唆されています。
参考:Protective effects of acetaminophen on ibuprofen-induced gastric mucosal damage in rats with associated suppression of matrix metalloproteinase.
これらの報告により、アセトアミノフェンによる胃腸障害については、あまり気にしなくても良いのではないかと考えています。
空腹時を避ける必要性は高くないように感じる
- 空腹時に服用しても効果への影響は最小限
- 胃腸障害を起こす懸念も少ない
以上の理由から、個人的にはアセトアミノフェンを空腹時を避けて服用する必要性は高くないと考えています。
なお、アセトアミノフェンの市販薬である「タイレノールA」も、空腹時の服用も認められています。
もちろん、食後に飲むことを否定するわけではありません。
しかし、熱や痛みで辛い時に「空腹時を避けること」が重荷になるようではいけないと考えます。
アセトアミノフェンのまとめ
改めて今回のまとめです。
・効き始めるまでの目安時間は30分弱~1時間
・効果持続目安時間は4時間弱
・解熱効果は最大で1~2℃程度の熱を数時間抑える
・副作用の心配は少ないが過剰はNG
・空腹時でも効果に影響は少なく、胃腸障害リスクも少ない
アセトアミノフェンは子どもの解熱鎮痛剤として使用頻度が高く、3か月以上の子どもへの使用経験も多いです。
インフルエンザの時の解熱剤としても、安全性が最も高いと考えられています。
効果を出来るだけ理解した上で、適切に使用して、不安を少しでも減らしていきましょう。